2024/4/26
お知らせ 全対象

滋賀大学における生成AIの利活用に対する基本的な考え方

学 長

竹村 彰通

 昨今、ChatGPTをはじめとして、文章や画像等を生成する高度な技術を持つAI(生成AI)が急速に普及しています。生成AIを活用することは、利便性や生産性を向上させ、これからの時代の暮らしや社会の変容を導く可能性を秘めています。

 様々な活用の可能性が示される一方、同時に生成AIを利用する際の懸念やリスク等も示されています。日本初のデータサイエンス学部・研究科を設置した本学に求められる役割は、我が国のデータサイエンス・AI教育研究の中核を担い、これら新技術の利用を促進するとともに、懸念やリスクも考慮しつつ新たな知見や価値を生み出し、さらなる発展のために貢献していくことだと考えます。

 以下、本学教職員が教育、研究、業務の各領域において特に留意すべき事柄について、現時点における考え方を示します。

◆1 本学の考え方の基本

 本学では、生成AIの使用について一律に禁止することはしません。

 生成AIを活用するリテラシーを学生・教職員全員が身に付け、教育・研究・業務の諸活動に生成AIを積極的に取り入れることを目指します。生成AIの出力内容を批判的に分析し、上手に使いこなすことができれば、諸活動を飛躍的に向上させることも考えられます。

 本学の構成員に対しては、AIの扱い方や活用法、問題点について、自分自身で考えて行動することを求めます。

◆2 全体に係る注意点

生成AIを利用する際は、以下の各項目に留意してください。

  • 機密情報や個人情報について入力してはなりません。生成AIに入力した内容は学習され、意図せず外部に公開される恐れがあります。情報の流出・漏洩等のリスクがあるため、機密性が高い内容やプライバシーを侵害する内容の入力を禁じます。入力を禁止する内容には、例えば、会議資料などの機密情報、学生、教職員の個人情報、未公開の論文、入学試験問題の草稿、本学の信用を失墜させるおそれのある情報などが該当します。また、これら機密情報、個人情報等を含まない場合であっても、生成AIへの入力の際は十分注意する必要があります。ただし、利用する生成AI サービス等が入力内容の学習をせず(オプトアウトできる)、セキュリティが確保されたサービス提供形態である場合はこの限りではありません。その場合、利用する情報の機密性に応じた取り扱いとしてください。
  • 生成AIは、他者の著作物に類似した文章、他者の研究成果を侵害する内容等を出力する場合があります。このような生成物を公開することで、著作権者等の利益を侵害する可能性があります。著作権をはじめとする各種権利関係を侵害していないか、他者のアイデアを奪う内容となっていないかを確認して利用しなくてはなりません。
  • 生成AIが出力する内容には不正確な情報や矛盾する情報が含まれます。内容を鵜呑みにせず、正確な情報か否か、他の情報源を根拠として裏付けをすることが不可欠です。
  • 生成AIを利用する場合は、学内規程や各種学内指針等に則って利用するとともに、利用するAIツールの規約等を確認し、機密情報の扱いに問題がないかを必ず確認してください。なお、学内規程等については、生成AIに関する文部科学省等からの各種指針・動向をふまえ、適宜改訂していきます。

◆3 教育の観点

教育分野における生成AIの利用について、以下の各項目に留意してください。

  • 本学における教育活動において、生成 AIの使用を一律に禁止することはしません。生成AIが今後普及していくことを考えると、禁止することは現実的ではありません。生成AIを上手に活用することにより、学生は論点整理や、情報収集などに活用し、個々人の学びを深めることが可能です。また、教員にとっても、討論のテーマ作成に利用するなど生成AIを適切に活⽤した教育を進めていくことで、教育効果を高める可能性もあります。生成AIを禁止するのではなく、むしろ大胆に生成AIを活用していくことを期待します。
  • 授業の特性によっては、生成AIの使用を制限したほうがよい場合もあります。各教員は、生成AIについて十分に知識をもった上で、授業の特性上必要な場合は使用を禁止・一部制限する、もしくは注意喚起する等の指示をしてください。
  • 生成AIの出力内容には不正確な内容や矛盾する内容も含まれるため、正しい内容なのか、誤った内容なのか、学生自身にしっかりと確認させることが重要です。学生に対しては、レポートや課題、学位論文等を作成する際に、生成AIの出力内容を書き写したことが確認された場合は、各学部・研究科の取り決めに従い、厳格な対応を行うことを周知していますので、ご留意ください。
  • レポートや課題、学位論文等の作成に関しては、引用元や参考とした資料など、根拠とした出典を明記する必要があります。各教員は、課題・論文等に生成AIを利用した場合、その旨を明記するよう指示してください。
  • 今後、翻訳や要約、単に知識を確認するような課題は意味をなさなくなることが予想されます。教員が課題設定をする際は、授業中の小テストの実施、口述試験等との組み合わせ、批判的分析を必要とする課題への変更など、課題の設計や試験実施方法の工夫を行い、適切に学修成果を評価する必要があります。
  • FDの実施や各種機会を通じて、学内の取組や他大学等の動向についての情報共有を進めていきます。生成AIを活用した教育に関する好事例の全学的な浸透を図りますので、こうした活動へも積極的に参加してください。

◆4 研究の観点

研究分野における生成AIの利用について、以下の各項目に留意してください。

  • 各教員の創造的活動を支援し、研究に対するアイデアを生み出すことを支援するツールとしての活用が想定されます。研究に対し生成AIをどのように使うことができるかについては、まだまだ発展途上です。効果的な活用策について情報共有を図り、研究活動を加速させるような利活用の在り方についても前向きに検討していきますので、知見の共有に協力願います。
  • 研究活動において生成AIを利用する際は、「2 全体に係る注意点」の諸事項を遵守した上で、所属学会の各種規則や、論文投稿先の投稿規則にも従ってください。
  • 研究公正の観点から「ねつ造」、「改ざん」、「盗用」といったリスクに留意し、研究不正の生じないよう留意してください。生成AIを活用する際は、他者の論文等の剽窃となっていないかについて、十分確認してください。

◆5 業務の観点

大学業務運営における生成AIの利用について、以下の各項目に留意してください。

  • 本学としては、全学DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の一環として、既存業務を効率化し、かつ業務の質を高めるため、試行的な導入を進めていきます。活用例としては、新たな施策の企画・立案の補助、定型的なフォーマットの作成、文章のたたき台の作成、要約等が想定されます。ただし、考える主体は教職員自身であり、生成AIを使ってあらゆる文章を作成するなど、やみくもな活用はせず、あくまでも業務を補助するために活用してください。
  • 大学業務において生成AIを利用する際は、「2 全体に係る注意点」の諸事項を遵守してください。特に業務においては、機密情報や個人情報といったセキュリティの面に十分留意し、例えば、未公表の事項を生成AIに入力する、会議内容を生成AIにそのまま入力して議事録作成に用いる、といった安易な使用はしないように心がけてください。
  • 生成AIを効果的に活用するためには、質問・作業指示の方法が重要です。どういった使い方が望ましいかについて、今後知見の共有を図るため、生成AIを用いた業務効率化の好事例収集に協力願います。
  • 本学は、各種研修等の実施や他大学等の好事例についての情報共有を進め、業務効率化の観点からどのように活用できるか、どのような課題があるかを検討し、各教職員が創意工夫を行うことができるようになることを目指します。教職員が日々生成AI等について関心を高め、活用するスキルを持ち、リテラシーを持って行動することを求めます。

◆6 今後について

 データサイエンス学部・研究科を擁する本学は、「滋賀大学数理・データサイエンス・AI教育プログラム」の全学的実施などを通じ、学生に対し生成AIの原理に関する理解や技術の限界に関する最新の知見を提供し、生成AIがさらに普及した未来において、それらを適切に活用しつつ新たな価値の創造を担う人材を養成していくことが求められています。

 また、データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターが持つ国内最先端のAIに関する知見をもとに、この分野をリードする立場として、生成 AIに関する新たな知見を生み出すための研究を推進し、生成AIが抱える各種課題解決をはじめとした AI 技術の発展に寄与することも期待されているところです。生成AIを未知のものとして切り捨てることなく、生成AIを大学の諸活動において「使いたおす」、そして新たな知見を「創り出す」という意識を醸成していきたいと考えています。

 なお、生成AIに関しては今後も急速な技術の進歩が続くことが想定されます。生成AIに関する実態の把握に努めつつ、技術の進展や各種方針等の動向をふまえ、上記の方針は適宜見直していきます。

学生向けの方針については、こちらを参照してください。

(令和5年7月14日公表文を一部改訂)

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