2018年度 本学教員が推薦する図書等を紹介します。(並びは推薦順)
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タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇 渡辺一夫著 大江健三郎・清水徹編 岩波書店 1993 田中 琢真
フランスの配色 城一夫著 パイインターナショナル 2011 御崎 加代子

①『渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇』 渡辺一夫著・大江健三郎・清水徹編

田中 琢真(データサイエンス学部)

本書は、編者(ノーベル文学賞作家と仏文学者)を含む知識人を教えた東大仏文科教授の評論集だ。
まずは気軽な読み物を勧めたい。著者の訳した物語『ガルガンチュワとパンタグリュエル』に関する愉快な考察や、王侯の遺骨やミイラをめぐる考証は、文藝と歴史の世界へ導いてくれる。どれも短くすぐ読めて、暇つぶしにもよい。
表題作「狂気について」などの深刻な評論は、最初は読まなくてもよい。何年、何十年放置してもかまわない。いずれ、立ち戻って読むべき時が来る。
表題作と「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」は敗戦と東西陣営の対立という状況を受けて書かれた。しかし、具体的な状況への言及はほとんどない。古典と歴史に照らして「いかにあるべきか」が語られる。それゆえ(逆説的に)、著者の直面する問題は現代の私たちにも切実な問題としてよみがえる。
寛容な人々が寛容さゆえに不寛容な人々を迫害し、不寛容な人々をより不寛容に走らせる――著者の念頭にあったのとは全く違う状況で、著者の危惧はいま現実となっている。寛容は強制されるべきか、私たちは正気に飽きて狂気を求めてはいないか――著者は問いかける。
扱う問題は深刻だが、著者の語り口はあくまで優しい。具体的な状況から一歩引いて考えることは、若い皆さんにはまだ難しいかもしれない。しかし、良書は読者の成熟を待ってくれる。現代社会が著者が見たのとは違う状況の中で同じ問題に直面しているように、将来皆さんはまた違う状況の中で同じ問題に直面するだろう。人生の節目ごとに本書を繙いてもらいたい。

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 081||I 95||B188-2 093004827
教育文庫新書 081||I 1||188-2 193003986

②『フランスの配色』 城一夫著

御崎 加代子(経済学部)

皆さんは「フランス」という国にどのような印象をもっていますか? フランスは美しい、おしゃれ、エレガント、センスがいい・・・などと答える人が多いのではないでしょうか。かくいう私もフランスの美に魅せられた一人です。私はフランスの経済学を研究しているため、フランスに滞在する機会が多く、現地での生活経験もあります。フランスにいる間は、美しいものに囲まれ、とても幸せな気分になります。しかしその心地よさの正体は何なのか、長い間どうしても答えがみつからなかったのです。
本書は、フランスの生活、ファッション、デザイン、絵画、工芸などに表現された優れた配色を、写真付きで解説した本です。著者が指摘するように、私たちがみている「色」は単独では存在せず、複数の色の組み合わせを見て、私たちは「美しい」とか「汚い」とか言ったりしているのです。本書に取り上げられているのは、フランスの有名な絵画や歴史的建築だけではありません。町でよく見かける看板やスーパーでおなじみの食品のパッケージなども登場します。フランスに行ったことがある人は、薬局や郵便局を示す色が何だったか覚えていますか? フランスの芸術は、日本にいても展覧会や画集などで触れることができますが、日常生活にかかわる配色は現地でしか体験できません。フランスに生活しているときに感じる美的な幸福感の正体はこれだったのです。
また本書の冒頭で解説されている西洋の配色観は大変興味深いものです。配色がよいというのは、色彩が調和しているということですが、この「調和(ラテン語のハルモニア・英語のハーモニー)」が、西洋文化の中でどのような意味をもっているのか歴史的背景とともに説明されています。西洋における「ハルモニア」は、「全く異質な範疇や性格のものが組み合わさって生まれ、それによってはじめて調和がなりたつという考え方を表している」のです。これは日本人の考える「和」とは違います。このことは、グローバル社会での活躍を目指す皆さんにとって、興味深いヒントになるのではないでしょうか。

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 757.3||J 56 018001996