みなさま、
 新年明けましておめでとうございます。
 昨年末の大雪で、難儀された方々も少なくないと思います。
 大学も樹木の枝が折れ、駐車場が事実上使用不能になっていました。

 皆さんには、コロナ禍の生活で不便や困難を感じていた矢先の記録的大雪で、追い打ちをかけられた気持ちを持たれたことでしょう。皆さんのご家庭に被害や事故のなかったことを祈ります。新年になってからは、まだ積雪は残っておりますが、幸い、元の生活に戻ることができていると思います。

 今年は、コロナ戦争にも打ち勝って、コロナ禍での様々な新しい試みとそれによるプラスを。滋賀大学のニュー・ノーマルな大学生活にしていきましょう。

 われわれは、2022年の年頭に当たって、まず3つの戦いの中にいることを意識しておきたいと思います。そのそれぞれで、滋賀大学が、そして滋賀大学の構成員が関わるべきことです。一つは言うまでもなく、コロナとの戦いです。初めて新型コロナウイルス感染症の患者が日本で発見されてから、まる2年が経とうとしています。Covid-19との戦いは、今年も続くことが予想されます。昨年私は、このコロナ禍によって、われわれの生活の基盤そのものが脅かされている、と述べました。しかし、幸いわれわれ人類の知恵がコロナに打ち勝つ日は近いことを感じます。有効なワクチンが登場し、わが国では今や国民のほぼ8割が2回の接種を完了し、さらに3回目のブースター接種も始まっています。また治療薬も飲み薬が登場するのももうすぐです。この状況の中で、力の限りを尽くしてくださっている医療従事者の皆さまには、これまで、そしてなおこれからも、改めて感謝申し上げたいと思います。

 このコロナとの戦いは、さまざまな行動が制限される中で、現代生活の武器ともいうべきICTの活用により、新しい生活様式の創造にもつながりました。ニュー・ノーマル・ライフは、リアルな世界とバーチャルな世界の融合の上に成り立つといってもよいでしょう。そして大学にとって、特に滋賀大学にとって、コロナ戦争は、オンライン授業という新しい教育方法を普及させ、その中で個々人に適した質の高い学習も実現できるようになったのです。伝統的な大教室の半ば一方的な講義から、バーチャルながらインタラクティヴな授業の展開も可能にしました。2キャンパス間の距離も解消しました。この新しい方法は、教員から学生への知識の伝達と考察の要請のみではなく、大学における学びの中核である「考える」ことの可能性を、創造性豊かに広げることになります。研究の場においても、移動の必要性が解除されたことで、時と場所を世界中どこにいても共有でき、したがって研究者間の交流が一層積極的かつ広範になりました。また何よりも滋賀大学にとって強みであるデータサイエンスを活用して、コロナ禍をデータサイエンスで切り裂き、効果的な予測や対応を可能にしています。

 第2の戦いは、われわれの住む地球を守る戦い、つまり地球温暖化や気候変動と呼ばれる現象との戦いです。この戦いの敵はわれわれ人間なのです。われわれ人間が地球を攻め、傷つけているものです。それをどのように止めるか、の戦いです。それは同時に将来の世代のための戦いです。これ以上温暖化が進めば、海面が上昇し、水の下に隠れてしまう国さえあります。人間は、直下の危険や目に見える恐怖には迅速に反応しますが、10年、20年という単位で生じる変化には、理論的に明らかであっても、自分たちのこととして捉えにくく、効果的な対応が遅いのです。実は新型コロナウイルスのようなこれまで知られていなかった病原体もおそらくは人間の生活活動が広がっていくにしたがって、食料となる生き物が増え、そこに生存していた病原体が姿を現してきたからだといわれています。シベリア大陸のツンドラが溶けてくれば、これまで凍土の中に閉じ込められていた様々な微生物が登場し、その中には未知の病原体もあり得るのです。われわれが求められているのは、そうした状態の生じないように生活形態そのものをこれまでのような自然のバランスの中で律していくことに他なりません。

 その一つの対応が化石燃料の使用削減、カーボンニュートラルです。また、SDGsを進めることも方策の重要な柱です。いうまでもなく、滋賀大学としてもこのカーボンニュートラルの推進に参画し、またサステイナブルな未来をい切り開く取り組みとしてSDGsを積極的に進めています。今一度HPのShiga University×SDGsをクリックして、自分のできる活動に参加してください。

 そして3つ目は、自由、人権と民主主義のための闘いです。人は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利において平等である、と謳ったのは、第2次世界大戦直後の世界人権宣言ですが、現在のいくつかの国や地域を見ていると、われわれは人種差別や大規模な人権侵害、そして民族虐殺を伴った世界戦争と同じ体験をしていることに気が付きます。それはわずか70~80年前の出来事、われわれの父や母、祖父母が実際に経験し、すべての人間が心から反省したことだったはずです。この流れが、新たな世界戦争に導かなければよいのですが。

 この3つ目の戦いは、地球上のあらゆる場所で、いついかなる時でも、性別を問わず、一人一人の存在と価値を最大限に尊重することを実現する戦いです。中には日本に留学していた人たちが、帰国後に大きな困難や恐怖に陥っている場合もあることをわれわれは知っています。しかし、それは海外のどこか、だけではありません。国や自治体の政策において、職場や大学・学校において、また日々の人間関係のうえで、常に配慮を必要とすることです。LGBTQや障がい者への差別はわが国でも起きています。コロナ禍でも、感染者や濃厚接触者に対する差別が発生したのは、われわれの足元になお自由と人権、民主主義の基盤をしっかりと築く余地があることを示しています。ここでも、SDGsの推進は極めて重要です。その基本が「だれ一人取り残さない」世界の実現だからです。一人一人の人が、健康で、自由で、豊かな生活、日々幸福を感じる生活を送ること、これこそわれわれが目指す世界です。これを実現する役割が、自由な学びの場にいるわれわれ大学にいる者たちであることを忘れてはなりません。

 こうした3つの戦いを経験しつつ、来る4月から始まる第4中期を前にして、滋賀大学の一年を見通してみたいと思います。

 現在、国立大学は大きな変革期に来ています。法人化してから18年がたち、それぞれの国立大学が個性を生かした発展を遂げようとしています。その基盤となる運営費交付金に関しては予断を許さない状況が続いており、本来の自由な個性ある発展は十分に遂げることが難しい状況が続いています。その一方で、国立大学も改革に次ぐ改革を迫られ、学びの拠点として全力を挙げてこれに対応しようとしてきました。第3中期に実現した滋賀大学のデータサイエンスを軸とする文理融合型大学への転換は、全国的にも目を見張る成功例として誇れるところです。

 今年は、その第3中期の最終年度であり、同時に第4中期の初年度です。第3中期についてはすでに4年が終了した時点での各大学の目標・計画達成度について暫定評価が出されています。われわれがこれから目指すのは、第4中期に滋賀大学として何を遂行していくかです。その方向はすでに第4中期の目標・計画(案)に明らかにしています。第4中期は、第3中期と違い、毎年の評価は行われず、中期全体の最終成果で評価することとされています。われわれはもはや年度ごとの達成度に振り回されることなく、計画的に目標を達成すればよいことになり、各国立大学の個性を生かして取り組みが可能になるのであり、大学の柔軟性を増すことができるということです。しかし、これからの6年間が、この3月に認定される中期目標・中期計画でとどまり続けるとすれば、滋賀大学に未来はありません。第4中期期間中、常に目標・計画の一歩先を歩みながら、常に新しい滋賀大学を目指していくことが不可欠です。

 しかしながら、それは、第4中期の6年間とその先の第5期、第6期を明確に見通す姿勢、言い換えれば「戦略」が必要となります。われわれは、文部科学省及び国全体のこれからの社会であるSciety5.0に向けての教育・研究の方向をしっかりと見定めて、戦略を立てる必要があります。次に述べるように、一昨年9月に私が公表した「未来創生大学『滋賀大学』構想」は、そうした戦略の基となる考え方を示したものです。

 それでは、いま滋賀大学は具体的に、どこまで来て、どう進もうとしているのか。

 まずいえることは、「オンラインでこそ得られる深い学び」を経験した以上、大学の授業は対面のみではなく、ハイブリッドやハイフレックスといわれる形態が増えてきます。またオンライン授業は、大津と彦根のあいだの物理的距離をゼロにしました。しかし、人間関係を作る場にもなる対面授業の重要性も改めて浮き彫りになりました。今後は、対面とオンラインの最適な組み合せを見出して、これまでよりも質の高い教育を構築していくことになります。滋賀大学の教育の問い直しの作業が必要ということです。

 次に明らかなことは、すでに述べたように、滋賀大学も含めた国立大学がそれぞれの個性を生かした知の拠点としてのさらなる改革と発展を求められていることです。これまでとは国立大学法人の基盤となる運営費交付金の算定方法も変わる予定です。また成果を中心とする実績状況に基づく配分に係る重点支援のグループわけの方法も変更になります。その詳細は明らかになっていませんが、いずれにせよ、改革の進捗度と目標・計画の達成度の評価が重要であることは変わりません。また、運営費交付金と入学金・授業料のみでは十分な教育研究活動は不可能であることは変わりなく、外部資金の獲得がこれまで以上に求められることになります。

 滋賀大学の運営費交付金は31億円強で、財政規模は小さく、特に人件費比率は85大学中ワースト6位あたりです。滋賀大学としてはそれに甘んじることなく、未来を創る大学として、常に新しいものへの意欲と挑戦を続けなければなりません。幸い外部資金比率は全国一位です。

 滋賀大学は、これまで私の示した「イノベーション構想-きらきら輝く滋賀大学へ」に沿ってこれまでさまざまな施策をとり、新しい滋賀大学に脱皮しようとしてきました。今や滋賀大学がきらきら輝いていることはだれの目にも明らかです。しかしその輝きをさらに大きくするには、もう一歩先んじた改革が不可欠です。私が一昨年9月に提示した「未来創生大学『滋賀大学』構想」は、第4中期とその先を見据えて、滋賀大学の教育研究全体を新しい方向に進めようとするものです。その柱は、まず第1に、データサイエンスを軸としつつ、経済学部・研究科にはビジネス・サイエンス、教育学部・研究科には多様性のある未来世代を教える未来教師を提唱しています。そして第2に、従来の教養教育を新時代に対応した、STEAM教育とDSリテラシーを組み込んだリベラルアーツ・滋賀大モデルの推進です。いまや社会では専門知・専門能力を持つだけでは十分ではなく、未来の社会を創造するには、それぞれの専門知により獲得した論理的思考力に加え、現代科学技術と人文・社会科学、芸術を包含したリベラルアーツの習得による課題発見・解決力、規範的判断力、未来社会の構想・設計力が不可欠です。昨年末には、全学共通教育科目を所掌する教育・学生支援機構によって滋賀大学リベラルアーツ構想が明らかにされました。こうして、滋賀大学は、伝統ある教育、経済両学部と先端を行くデータサイエンス学部の3つが鼎の脚となって、滋賀大学全体の発展を進めるべく、第4中期目標・計画が作成されています。

 次に、現代の世界が、ビッグ・データ、AI、ロボット、Iotをを軸とするScoiety5.0超スマート社会であり、滋賀大学がこの社会をけん引するデータサイエンス・AIの日本の中核的な拠点であることです。しかしこれはすでに周知のことです。第4中期の目標および計画は、このデータサイエンスの教育・研究のさらなる推進とそれを通じた社会への貢献を大きな柱の一つにしています。これまでDS学部・研究科は、わが国にこれまで欠けていたデータサイエンティストの育成を中心目標にしてきました。しかし、大学としては、単にデータサイエンティストを育てるのみでは不十分です。大学における教育は、その基盤に高度な研究力があってこそ可能です。来年度以降に向けた概算要求の組織整備分として「データサイエンス・AI領域を核とした先進的教育研究拠点の形成」文科省に提出しており、それに対しては好意的な反応があります。これは、現在のDS教育研究センターをデータサイエンス・AIイノベーション研究推進センターに改称し、新しく「社会DX研究推進部門」を設け、数理・DS・AI研究力強化を図ることとしています。

 おりしも竹村彰通DS学部長が4月より学長に就任されることになっており、滋賀大学はわが国データサイエンスのフロントランナーとして、さらに強みを生かした大学に発展することが期待されます。

 第3に、経済学部では現在の5学科を1学科に統合し、経済、経営、社会システムの3専攻を設けるとともに、グローバルな人材とデータサイエンスを習得したエコノミストの育成も視野に入れます。また研究科では社会人リカレントとしてビジネスデータサイエンス専攻の一年生修士課程を設けます。これにより、経済学部・研究科も新しい方向に向かおうとしています。来年2023年は彦根高商創立100周年にあたり、伝統の上に新機軸を立てて、さらに発展しようとしています。

 社会ではいまリカレント教育のニーズが高まっており、経済とDSはそれぞれが社会人リカレントプログラムを展開することになります。

 また教育学部・研究科では、教育学研究科の教職大学院への統合拡充で、従来の学校経営力開発コースと教育実践力開発コースに加えて、授業実践力開発コースとダイバーシティ教育力開発コースを加えて4コース体制で高度な専門性を備え、地域の期待に応えることのできる教員を育てていきます。学部卒業生の正規教員採用率が全国の国立教員養成大学・学部ではトップクラスを維持しており、第4中期にはさらに能力の高い教員を輩出できるよう、努めて行くことになります。

 さて、2022年は、第4中期に踏み出す年です。それは未来創生大学「滋賀大学」の幕開けです。全学を挙げて、新しい滋賀大学の形を作っていきましょう。

 以上をもって年頭のご挨拶とします。

メッセージ

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