2020年度滋賀大学データサイエンス学部新入生の皆さん、改めて、滋賀大学へのご入学おめでとう。そして、この新型コロナウイルス感染症との闘いの下での1年間、よく頑張って来られました。今日この1年後の入学式を開くことができ、皆さんのみならず、皆さんをこれまで支えてきてくださった保護者や関係者の方々も、喜びひとしおのことと思います。滋賀大学に入学したにもかかわらず、特に前半は大学に足を踏み入れることすらできず、新しい友だちを作ることさえ難しい状況で、みなさんが入学前に思い描いていた滋賀大キャンパスでの自由な学生生活を謳歌することは叶わなかったと思います。皆さんが、苦しく悩み多い中で、しかしそれぞれが知恵と勇気をもってこの1年間を過ごしてこられたことに、学長として深い敬意を表します。いろいろな意味で、この1年間の最後の日を迎えられたこと、本当におめでとうございます。

 皆さんは、「新型コロナ世代」です。それは、従来のような大学の教室での対面授業が普通にできず、オンライン授業により滋賀大学生としての1年目が始まった世代です。しかしそれは、新型コロナに対して手も足も出ずに負けてしまった世代ではありません。人間にとって未知のこのウイルスと果敢に戦い、勝利を勝ち取る世代です。今やある程度治療法も明らかになりつつあり、ワクチンで免疫の強化を図ることができるようになってきました。それゆえ、この新型コロナ戦争に人類が勝利を収める日も近いのです。

 この1年間で、皆さんは、高校までの勉強と大学での勉強の違いをよく理解されたことでしょう。大学に入ってから皆さんが出遭ったのは、正解のある問題を解くことではなく、正解のない問題を考えること、いくつも解がある問題の中で自分で最も合理的と考える解にたどり着くこと、さらには問題そのものを自分で見つけなければならないことだったでしょう。そうした新しい知的環境の中で、みなさんは自分の成長をかみしめていることと思います。1年前、私から皆さんに送ったメッセージを覚えておられるでしょうか。私は、大学が夢を育むところであって、皆さんが新型コロナという新しい教育環境の中で、思う存分自分の知的好奇心と思考能力を磨き、新しい道を切り開きつつ、自分の夢を築き上げてほしいと申しました。もう一度それを思い起こしてください。

 皆さんのデータサイエンス学部及び大学院データサイエンス研究科は、Society5.0といわれる現代社会を牽引するデータサイエンティストを育成する学部です。scoiety5.0とは、よく 超スマート社会とか、知識集約型社会といわれます。それはこれまでの社会と在り様が異なっていることを意味しています。Society1.0の狩猟社会、2.0の農耕社会、そして3.0の工業社会へという発展を経ていく中で、20世紀までは物の生産が最大のテーマでした。しかし20世紀後半に入って、情報が社会の重要な要素となり、GAFAに象徴されるように、情報を制する者は世界を制するとまで言われるようになりました。Society4.0情報社会です。社会での生活そのものが情報として把握され直します。アナログ社会からデジタル社会への移行です。数字や文字だけではなく、画像や動画、さらに立体や生物、行動までもが情報としてとらえられることになりました。その情報を処理するためのコンピューターも急速に発達していきました。人間を遺伝情報として理解することもできるようになりました。そしてSociety5.0では、今や日常生活のあらゆるところであらゆる種類の情報が大量に生まれ蓄積されるようになり、情報自体が様々な形でかつ膨大な量で展開しています。そこで、そうしたビッグデータを収集、処理、管理し、分析して、意味づけすることが飛躍的に重要な価値を創り出すことになります。さらにそのデータ相互のやり取りによる新しいデータの生成と、そこからさらに新しい価値の創造が、機械の手で展開されるようになります。AIやロボットが人間にとって代わるような時代になっているのです。

 皆さんは、2年目に入って、いよいよ本格的にデータサイエンティストへの道に踏み出しました。またデータサイエンスのより高度なスキルを磨き、研究を進めようとしています。この分野で遅れていたわが国において、フロントランナーとしてのみなさんの力に対する期待は大変大きいものがあります。ビッグデータを活用した、だれ一人取り残さない幸福な未来社会を構築することを自らの役割と自覚して、これからの道を歩んでください。

 最後にもう一つ付け加えたいことがあります。それはさまざまな出遭いと失敗を積み重ねてほしい、ということです。新しい時代を生きようとする皆さんは、まずこれまでになかったようないろいろな人との出遭いを経験してほしいのです。出遭いとは、自分とは異なる人やものとの遭遇であり、相手の理解であり、コミュニケーションです。出遭いによって、自分のそれまでの価値観や人生観、考え方などが変化し、成長します。コロナ禍の下では出遭いも容易ではありませんでしたが、それもオンラインによってリアルな対面での出遭いと異なる出遭いの仕方ができるようになりました。大いにいろいろな出遭いを経験してください。

 同時に、いろいろな失敗を重ねていってください。ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中伸弥教授は、「研究生活は一割バッターでも大成功。9回失敗しないと1回の成功はやってこない」「失敗すればするほど幸運は来る。若い間にいっぱい失敗して、挫折してください。」といわれています。コロナとの出遭いは、みなさんにとって、そして大学にとっても、挫折だったと思います。しかし今日このように、皆さんは挫折を乗り越えて、一段と成長しています。失敗と挫折を乗り越えることが、皆さん一人ひとりを強く大きくしていきます。その強さ、大きさこそがこれからの皆さんの最大の魅力になるのです。

 ここに、あらためて皆さんのご入学をお祝いし、また1年間の辛抱強い闘いをほめたたえるとともに、みなさんのさらなる成長に大いに期待しています。

 

2021年4月6日

滋賀大学長 位田隆一

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