2020年度滋賀大学経済学部及び大学院経済学研究科部新入生の皆さん、改めて、滋賀大学へのご入学、ご進学おめでとうございます。そして、この新型コロナウイルス感染症との闘いの下での1年間、よく頑張って来られました。今日この1年後の入学式を開くことができ、皆さんのみならず、皆さんをこれまで支えてきてくださった保護者や関係者の方々も、喜びひとしおのことと思います。滋賀大学に入学したにもかかわらず、特に前半は大学に足を踏み入れることすらできず、新しい友だちを作ることさえ難しい状況で、みなさんが入学前に思い描いていた滋賀大キャンパスでの自由な学生生活を謳歌することは叶わなかったと思います。それぞれが、苦しく悩み多い中で、知恵と勇気をもってこの1年間を過ごしてこられたことに、学長として深い敬意を表します。いろいろな意味で、この1年間の最後の日を迎えられたこと、本当におめでとうございます。

 皆さんは、「新型コロナ世代」です。従来のような大学の教室での対面授業が普通にできず、オンライン授業により滋賀大学生としての1年目が始まった世代です。しかしそれは、新型コロナに対して手も足も出ずに負けてしまった世代ではありません。人間にとって未知のこのウイルスと果敢に戦い、勝利を勝ち取る世代です。今や治療法も明らかになりつつあり、ワクチンで免疫の強化を図ることができるようになってきました。それゆえ、この新型コロナ戦争に人類が勝利を収める日も近いのです。

 この1年間で、学部2回生の皆さんは、高校までの勉強と大学での勉強の違いをよく理解されたことでしょう。大学に入ってから皆さんが出遭ったのは、正解のある問題を解くことではなく、正解のない問題を考えること、いくつも解がある問題の中で自分で最も合理的と考える解にたどり着くこと、さらには問題そのものを自分で見つけなければならないことだったでしょう。そうした新しい知的環境の中で、みなさんは自分の成長をかみしめていることと思います。1年前、私から皆さんに送ったメッセージを覚えているでしょうか。私は、大学が夢を育むところであって、皆さんが新型コロナという新しい教育環境の中で、思う存分自分の知的好奇心と思考能力を磨き、新しい道を切り開きつつ、自分の夢を築き上げてほしいと申しました。もう一度それを思い起こしてください。

 経済学部は、1924年に開設された彦根高商をルーツとし、戦後の復興の中で、全国で国民に新しい高等教育を普及するために、1876年に設置されていた滋賀師範学校とともに、1949年に経済学部、教育学部として出発した、新制国立大学に始まり、すでに70年を超える歴史と伝統を持ち、かつ国立大学最大規模の経済学部です。中世から近代にかけて日本のみならず海外でも活躍し、当時としての物流革命を引き起こした近江商人の伝統を、「三方よし」の思想とともに受け継ぎ、さらに新しい経済学、経営学から、社会の様々な事象を多角的にとらえる社会システム学に展開する、全国でも珍しい経済学部です。そこでは、「経済」とは、社会生活のすべての礎であるとの考えから、皆さんには、どの学科に所属しようとも、他の学科の科目の習得を可能にする、学科と学習類型の掛け合わせにより、幅広い能力を習得する機会を開いて、実践的能力を持った専門職業人「グローバル・スペシャリスト」として育つことを企図しています。さらに、データサイエンス学部とも連携して、全員が「データサイエンスへの招待」という科目を習得し、データサイエンス・リテラシーを身に着けるのです。加えて、Soceity5.0を牽引するデータサイエンスをも副専攻として学ぶこともできます。経済・経営に社会システムを加え、さらに最先端のデータサイエンスの基礎力も併せ持つ、幅広い人材となるのです。

 学部生の皆さんは、2年目に入って、いよいよ本格的に専門の道に踏み出しました。皆さんに対する期待は大変大きいものがあります。国連のSDGs持続可能な発展目標の示すように、だれ一人取り残さない幸福な未来社会を構築することを自らの役割と自覚して、これからの3年間を歩んでください。

 また、大学院経済学研究科に進学された方々は、いま2年目の今、論文の構想や執筆に入られていると思います。コロナ禍の下で、指導教授からの十分な指導も難しく、また図書館も変則的にしか使えず、研究に支障を来たしたことと思います。これからの1年を集中して研究に取り組み、素晴らしい研究成果をあげられるよう、期待しています。

 私は、昨年、コロナ戦争が始まって以来、ウイズ・コロナ、アフター・コロナ時代の新しい滋賀大学を思い描き、9月に滋賀大学の未来を描く「未来創生滋賀大学構想」を発表し、その中でリベラルアーツ教育、STEAM人材育成を一つの軸に据えました。これはホームページの学長メッセージにも掲載しています。

 なぜ今、リベラルアーツ、STEAMなのか。それは、専門知のみでは、激動の現代社会を乗り切れないからです。自分の道を切り開くことが難しいからです。そこでは、リベラルアーツとは、もはや高校教育と大学の専門教育の橋渡し的な知識力や理解力としての一般教養ではありません。現代社会の中軸となる科学・技術の基本的理解の上に、人文・社会科学や芸術などを幅広く会得し、時にはその一つの分野を副専門的に深めることにより得られる、社会の規範的判断力や未来社会の構想力なのです。専門知で培った論理力や問題発見・解決能力に加えて、そうした規範的判断力と未来社会構想力を併せ持つことが、これからの未来を担うあなた方にとって、必須の要素です。

 そして最後にもう一つ付け加えたいことがあります。それはさまざまな出遭いと失敗を積み重ねてほしい、ということです。新しい時代を生きようとする皆さんは、まずこれまでになかったようないろいろな人との出遭いを経験してほしいのです。出遭いとは、自分とは異なる人やものとの遭遇であり、相手の理解であり、コミュニケーションです。出遭いによって、自分のそれまでの価値観や人生観、考え方などが変化し、成長します。コロナ禍の下では出遭いも容易ではありませんでしたが、それもオンラインによってリアルな対面での出遭いと異なる出遭いの仕方ができるようになりました。大いにいろいろな出遭いを経験してください。

 同時に、いろいろな失敗を重ねていってください。ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中伸弥教授は、「研究生活は一割バッターでも大成功。9回失敗しないと1回の成功はやってこない」「失敗すればするほど幸運は来る。若い間にいっぱい失敗して、挫折してください。」といわれています。コロナとの出遭いは、みなさんにとって、そして大学にとっても、挫折だったと思います。しかし今日このように、皆さんは挫折を乗り越えて、一段と成長しています。失敗と挫折を乗り越えることが、皆さん一人ひとりを強く大きくしていきます。その強さ、大きさこそがこれからの皆さんの最大の魅力になるのです。

 ここに、あらためて皆さんのご入学をお祝いし、また1年間の辛抱強い闘いをほめたたえるとともに、みなさんのさらなる成長に大いに期待しています。

 

2021年4月6日

滋賀大学長 位田隆一

メッセージ

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