桜吹雪の舞う今日の良き日に、このように2年ぶりに厳かに令和3年度滋賀大学入学式を挙行できますことは、滋賀大学にとって、大きな喜びであります。このコロナ禍の中で、変則的ではありますが、入学式を行うまでに至ったことは、Covid-19に対するわれわれ人間の英知と努力による勝利が近いことを表しています。残念ながら本日はご列席頂けていませんが、これまでそれぞれの学生を支えてこられた保護者やご家族、ご友人、関係の方々に対しまして、その力強いご支援とご助力に敬意を表しますと共に、厚く御礼申し上げ、また心よりお祝い申し上げます。

 教育学部243名、経済学部484名、データサイエンス学部100名、大学院教育学研究科専門職学位課程20名、経済学研究科博士前期課程22名、博士後期課程3名、データサイエンス研究科博士前期課程43名、博士後期課程3名、特別支援教育専攻科9名の皆さん、本日はご入学、ご進学、誠におめでとうございます。

 滋賀大学はあなた方を心から歓迎します。今日まで皆さんを全力で支え続けてくださった保護者やご家族、友人たち、関係の方々に、厚い感謝を示していただくと共に、大いに喜びを分かち合ってください。

 皆さんの入学・進学されたこの滋賀大学は、二つの重要なルーツを持っています。まず明治8年(1876年)創立の小学校教員伝習所です。翌年には滋賀師範学校に名を改めますが、これは、明治維新後の我が国の近代化の中で、滋賀の子どもたちに基礎教育を施すための優秀な先生たちを育てることを目指したものです。教育学部に入学された皆さんには、未来を担う子ども達を広く大きく育てていくために、子どもたちのあこがれるような、また子どもたちに大きな夢を抱かせるような、そんな素晴らしい先生に育っていただきたいと願います。私は皆さんを「未来教師」と呼びましょう。

 もう一つのルーツは、大正11年(1922年)の彦根高等商業学校、いわゆる彦根高商です。第一次大戦後のわが国の発展を進めるために各県に一つ置かれた商業学校の一つが彦根高商です。中世から近代にかけて活躍した近江商人は、「三方よし」といわれる独特の商業道徳観を持ち、当時の流通革命を起こしたのです。滋賀大学経済学部はこのレガシーを受け継いでいます。

 そして、5年前の4月に我が国にとってエポックメーキングな出来事が滋賀大学によりなされました。日本初のデータサイエンス学部の開設です。現代はSociety5.0と呼ばれ、ビッグデータ、ロボット、AI、IoTが社会の柱となっています。その中心は、社会のあらゆるところから生まれ、蓄積されるあらゆる種類のデータです。データサイエンス学部は、そのビッグデータを収集、加工、管理し、分析し、その中から新しい価値を創造する学問です。データサイエンス学部の皆さんにはこれからの日本を牽引して行っていただかなくてはなりません。大いに期待しています。

 このような長い歴史と伝統と最先端科学とが、また文系と理系が共存している大学が滋賀大学なのです。私は4年前に「イノベーション構想―きらきら輝く滋賀大学」を発表し、その中で、文理融合、グローバル化、研究する大学、社会の中の大学、そして行動力・機動力のある大学の5つの柱により、滋賀大学を発展させていくことを目指しました。詳しくはホームページの学長室のバナーを開いてくだされば、出てきます。そこで私が意図したことの一つは、将来大きくはばたく能力を秘めた学生の皆さんに、できるだけ多様な可能性を提供することでした。昨年度のコロナ禍の下では、これまでのような教育や研究はかないませんでしたが、いち早くオンライン授業を導入し、新しいニューノーマルな大学教育体制の構築に踏み込みました。そこで、私は、滋賀大学のニューノーマルとは何かを突き詰めて考えた結果、さらに滋賀大学を前進させるための方向を示す「未来創生『滋賀大学』構想」を発表しました。これもホームページに掲載されています。そこではデータサイエンスとリベラルアーツの二つの教育の強化を核に据えています。来年4月からは新しい第4期の中期目標・計画期間に入り、滋賀大学はさらに展開を遂げて行きます。その主役は学生の皆さんです。そのことをまずは、心にとめておいてください。

 さて、皆さんは、これからそれぞれ教育学、経済学、データサイエンスを中心に学んでいきます。しかし、滋賀大学のどの学部に居ても、学部間の垣根は低く、相互に関心のある科目を受講することができます。経済学部の学生であっても、データサイエンス学部の科目を履修でき、またデータサイエンス学部の学生でも経済や教育学部の授業を受けることができます。教育学部でも彦根にある学部の科目を受講することもできます。また全学でデータサイエンスの基礎科目を習得します。このように、滋賀大学は、文も理も一つのメニューに入っている文理融合の大学です。ではなぜ文理融合なのか。

 皆さんは、高校の時は文科系と理科系ではっきり分けられ、それに伴って進路が決められていたかもしれません。しかし、社会のあらゆる事象は、最初から文系の事象だ、理系の事象だと分けられているのではありません。様々な事象が、文系の面を持つと同時に理系の側面を持っているのです。その最も典型的な分野が「環境」でしょう。例えば気候変動を考えようとすれば、単に炭酸ガスなどの温室効果ガスの量や地球全体に対する温度上昇を研究すれば解決するわけではありません。確かに化石燃料を燃やして出る炭酸ガスを減らすために、工場のエネルギー利用を電気に変えたり、自然エネルギーの利用に変えることは考えられます。しかし、そうしたエネルギーの変更は、石油や石炭、天然ガスなどの生産国の産業に大きな打撃を与え、また様々な製品の製造過程を根本的に変更しなければならず、時に生産者や一般住民の生活に壊滅的な打撃を与えることがありえます。それゆえ、環境問題を考える時は、理系の要素とともに、その環境の中で生活する人間のことなどの文系の要素も考えなければならないのです。

 現在のCovid-19、新型コロナウイルス感染症についても同じことが言えます。医学の立場から言えば、感染症を防ぐには、人の動きを止めればいい。簡単です。しかし、それは経済の観点からすれば、大きなマイナスです。こうして、医学的条件と経済的条件が真っ向から衝突します。文・理どちらかの要素だけで判断し決定することはできないのです。このような例はいくらでも思い当たるでしょう。

 皆さんが大学で学ぶ内容には、何一つ正解が約束されているものはありません。また、問題が何かも明らかではないかもしれません。解が見つかっても一つではないかもしれません。もしかすると、解があることが分かっていても、今までだれもそれを見つけていないかもしれません。例えばポアンカレ予想という数学の難問は、証明するのに100年かかりました。皆さんがこれからこの大学で学ぼうとするのは、答えがないかもしれない問題を考えることであり、答えがないということを悟ることであり、さらには、一体、問題は何なのか、です。一言でいえば、「考える」ということを学ぶのです。相対性理論を編み出したアインシュタインが述べたように「大学教育の価値は、たくさんの知識を学ぶことではなく、考える心を養うこと」なのです。

 それでは、考えることを学ぶのに何が必要でしょうか。それは強い好奇心と飽くなき探究心です。社会で生じる問題には、どこに正解があるかわかりません。それゆえ、様々なことに目を向け、耳をそばだて、いろいろなことにチャレンジすることです。その中から、仮に正解がないとしても、最も適切な解が見つかる可能性があります。だから、何でも見てください、聴いてください、やってみてください。失敗もしてください。挫折も味わってください。大学とは、それが許される若さの4年間です。また、問題を考え始めたら、表から裏から、右から左から、上から下から、解が見つかるまで、あきらめずに考えてください。正解がない場合であっても、これ以上の適切な解がないというところまで、迫ってください。考えるということは、長いトンネルをくぐっているようなものです。その先には、明るい素晴らしい世界があります。出口にたどり着くまでの暗闇の中の手探りを、感覚を、苦労を、悩みを、どうか楽しんでください。そのための十分な時間がある4年間なのです。

 考えることを学ぶことと同時に、皆さんには、滋賀大学の理念である「地域に根差し、グローバルな視野を持つ」ことを心がけてほしいと思います。地域に根差す、とは、地域のことをよく知り、理解し、地域の人々と語り合い、地域のために学んだことを活かして行動し、地域の発展になにがしかの貢献をするということです。滋賀に限らず、皆さんがこれから生活する場すべてが地域です。社会に出て働き、有意義な仕事をし、家庭を持ち、子どもを育て、周りの人たちと協力する、これらは地域に根差すことです。

 さらに強調したいのは、皆さんにはグローバルな視野とグローバルな活動力を持っていただきたいということです。現代は多様性Diversityの世界です。Diversityには、性別、人種、宗教、国籍、職業、出身その他、まさに多様な意味がありますが、とりわけ多様性を肌で感じ、その意味を理解するのは、外国に行き、そこで暮らして、そこの人々と触れ合い、語り合い、一緒に 何かをすることによってです。普段の自分にとって普通のことが、外国に行くと普通ではなくなり、すべて説明しなくはなりません。そのためには少しはその国の言葉もできないといけないでしょうし、感覚も鋭敏にする必要もあります。時には嫌なこともあるかもしれません。

 しかし、一度、違いを見、感じ、わかると、その違いが楽しくなります。今まで遭遇したことのない人や物、ことに出会い、経験します。それは自分の中に価値観という財産が増えることです。それは皆さんの可能性を広げることに繋がります。皆さんは、大きな可能性を秘めていますが、自分にとって違いのある人や物、こととの出会いがその可能性を開花させてくれます。自分が気づかなかった能力を教えてくれるのです。他の人が自分と違うことを行っているのを見て、自分も経験しやってみることで、自分の潜在的な能力が開きます。そして、自分が予想もしていなかった新しい道に進むことができるのです。

 滋賀大学では、グローバル環境の構築も着々と進めています。スマホでもできる英語の自習アプリの無償提供や経済学部での英語による専門科目の授業がその例です。海外の協定校もアジア、欧米、ラテンアメリカ、またチュニジアやエジプトなどのアラブ諸国も含め35大学を数えます。加えて短期や長期の留学のための奨学金、留学相談、留学生との交流スペース”Global Plaza”、米国の留学生派遣機関CIEEとの連携など、全学でグローバル化への体制が整いつつあります。近いうちに、留学Weekの開催も予定されています。

 最後に滋賀大学スピリットをご紹介しておきます。滋賀大学のアルファベット表記SHIGA Universityの頭文字をとって、SはSincere、誠実さです。何事にも誠実に向き合い、判断し、行動してください。HはHumanistic、人間性です。それぞれの人を尊重し、互いに認め合ってください。IはIntelligent、叡智です。知識だけではない、自分の奥底からにじみ出る叡智を磨いてください。GはGenerous、寛容です。独りよがりにならず、相手に寛容であること。AはActive、積極性です。何でも興味を持ってやってみること、先例にとらわれてはいけません。自ら学び、動いてください。そして、UniversityのUは、Union、団結と、Universe、世界を示します。みんなで団結して困難に立ち向かい、素晴らしい世界を作り上げることです。これが滋賀大学スピリットです。

 皆さん、ご入学おめでとう。皆さんが、学生生活を通じて、Shiga University Spiritを養い、琵琶湖に映える陽の光のように、きらきらと光り輝くことを期待しています。

 

2021年4月5日

滋賀大学長 位田隆一

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