2020年度滋賀大学教育学部新入生の皆さん、改めて、滋賀大学へのご入学おめでとう。そして、この新型コロナウイルス感染症との闘いの下での1年間、よく頑張って来られました。今日この1年後の入学式を開くことができ、皆さんのみならず、皆さんをこれまで支えてきてくださった保護者や関係者の方々も、喜びひとしおのことと思います。滋賀大学に入学したにもかかわらず、特に前半は大学に足を踏み入れることすらできず、新しい友だちを作ることさえ難しい状況で、みなさんが入学前に思い描いていた滋賀大キャンパスでの自由な学生生活を謳歌することは叶わなかったと思います。皆さんが、苦しく悩み多い中で、しかしそれぞれが知恵と勇気をもってこの1年間を過ごしてこられたことに、学長として深い敬意を表します。いろいろな意味で、この一年間の最後の日を迎えられたこと、本当におめでとうございます。

 さて、この1年で、皆さんはまず、高校までの勉強と大学での勉強の違いをよく理解されたことでしょう。高校までの学習の中心は、正解を見つけることだったと思います。しかし、大学に入ってから皆さんが出遭ったのは、正解のある問題を解くことではなく、正解のない問題を考えること、いくつも解がある問題の中で自分で最も合理的と考える解にたどり着くこと、さらには問題そのものを自分で見つけなければならないことだったでしょう。そうした新しい知的環境の中で、みなさんは自分の成長をかみしめていることと思います。明日から皆さんは2回生となります。この1年後の入学式で私が改めてあなた方に問いたいことは、みなさんの夢は何なのか、これからの3年間でその夢を実現していくためにどのようなことをしていくのか、です。自分の未来を、いま一度考えてほしいということです。

 この教育学部は、小学校・中学校、そして高等学校や特別支援学校、幼稚園、保育園などの教員を育成するところです。皆さんはこの滋賀大学教育学部に入ってくるときに素晴らしい教員になろうと考えて、入学試験を乗り切ってこられたことと思います。少し気が早いかもしれませんが、皆さんはどのような先生になろうと考えているでしょうか。私は、教師というのは、子どもたちに希望を抱かせ、夢を育ませる職業だと思います。子どもたちに素晴らしい未来を描かせる仕事です。その意味で、私は皆さんを「未来教師」と呼びます。

 ではその未来はどのようなものなのか。1年前、私から皆さんに送ったメッセージを覚えておられるでしょうか。私は3つのことを伝えました。滋賀大学が発展の真っ最中であること、滋賀大学がグローバル化を進めていっていること、そして、新型コロナが新しい大学、新しい教育を考える機会を与えてくれていることの3つでした。そのうえで、私は、大学が夢を育むところであって、皆さんが新型コロナという新しい教育環境の中で、思う存分自分の知的好奇心と思考能力を磨き、新しい道を切り開きつつ、自分の夢を築き上げてほしいと申しました。改めて、みなさんにこの発展しつつある滋賀大学で学び成長することの意義を考え、これからの3年間につなげてほしいと思っています。

 現在の社会は、Scoiety5.0超スマート社会とか、知識集約型社会といわれます。それはこれまでの社会と在り様が異なっているということです。狩猟社会、農耕社会そして工業社会へと、20世紀までは物の生産が最大のテーマでした。しかし20世紀後半に入って、情報が社会の重要な要素となり、GAFAに象徴されるように、情報を制する者は世界を制するとまで言われるようになりました。Society4.0情報社会です。日本が誇るスーパーコンピューター富岳はその典型的な例でもあるでしょう。しかし、その情報自体が様々な形で展開し、今や日常生活のあらゆるところであらゆる種類の情報が大量に生まれ蓄積されるようになると、つまりビッグ・データが生成・蓄積されるようになると、そのデータの解析と意味づけが飛躍的に重要な価値を持ち、さらにそのデータ相互のやり取りによる新しいデータの生成とそこからさらに新しい価値の創造が展開してきています。情報を駆使した「物」や「システム」が生まれ、AIやロボットが人間の仕事をとって代わるような時代になっているのです。

 皆さんはこのSociety5.0時代の新しい教師となる、開拓者であり、冒険者でもあります。教育分野においてもデータの重要性が言われています。滋賀大学は4年前に日本で初めてデータサイエンス学部を作り、教育学部でも教育データサイエンティスト養成プログラムが始まりました。データを活用した新しい教育とはどのようなものなのか、みなさんがこれから考える課題ができました。

 私は、昨年、コロナ戦争が始まって以来、ウイズ・コロナ、アフター・コロナ時代の新しい滋賀大学を思い描き、9月に滋賀大学の未来を描く「未来創生滋賀大学構想」を発表し、その中でリベラルアーツ教育、STEAM人材育成を一つの軸に据えました。これはホームページの学長メッセージにも掲載しています。

 なぜ今、リベラルアーツ、STEAMなのか。それは、いわゆる専門知のみでは、激動の現代社会を乗り切れないからです。自分の力が十分に発揮できず、自分の道を切り開くことが難しいからです。そこでは、リベラルアーツとは、もはや高校教育と大学の専門教育の橋渡し的な知識力や理解力としての一般教養ではありません。現代社会の中軸となる科学・技術の基本的理解の上に、人文・社会科学や芸術などを幅広く会得し、時にはその一つの分野を副専門的に深めることにより得られる、社会の規範的判断力や未来社会の構想力なのです。専門知で培った論理力や問題発見・解決能力に加えて、そうした規範的判断力と未来社会構想力を併せ持つことが、これからの未来を担うあなた方にとって、そしてとくにさらに未来を創る子どもたちを教える皆さんにとって、必須の要素です。

 そして最後にもう一つ付け加えたいことがあります。それはさまざまな出遭いと失敗を積み重ねてほしい、ということです。新しい時代を生きようとする皆さんは、まずこれまでになかったようないろいろな人との出遭いを経験してほしいのです。出遭いとは、自分とは異なる人やものとの遭遇であり、相手の理解であり、コミュニケーションです。出遭いによって、自分のそれまでの価値観や人生観、考え方などが変化し、成長します。コロナ禍の下では出遭いも容易ではありませんでしたが、それもオンラインによってリアルな対面での出遭いと異なる出遭いの仕方ができるようになりました。大いにいろいろな出遭いを経験してください。

 同時に、いろいろな失敗を重ねていってください。ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中伸弥教授は、「研究生活は一割バッターでも大成功。9回失敗しないと1回の成功はやってこない」「失敗すればするほど幸運は来る。若い間にいっぱい失敗して、挫折してください。」といわれています。コロナとの出遭いは、みなさんにとって、そして大学にとっても、挫折だったと思います。しかし今日このように、皆さんは挫折を乗り越えて、一段と成長しています。大学も然りです。失敗と挫折を乗り越えることが、皆さん一人ひとりを強く大きくしていきます。その強さ、大きさこそが未来教師の最大の魅力です。

 ここに、あらためて、皆さんのご入学をお祝いし、また1年間の辛抱強い闘いをほめたたえるとともに、みなさんのさらなる成長に大いに期待しています。

 

2021年3月31日

滋賀大学長 位田隆一

メッセージ

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