はじめに

 滋賀大学は、第3期中期目標期間に入って日本初のデータサイエンス学部の創設を見、文理融合型大学に舵を切った。2017年には「滋賀大学イノベーション構想―きらきら輝く滋賀大学」を発表して、5つの柱、すなわち「文理融合」、「グローバル化」、「研究する大学」、「社会の中の大学」、「機動力・行動力のある大学」によって大学を運営してきた。この間に滋賀大学の発展と変貌は高い評価を受けるに至っている。いま第4期中期目標・計画の準備を始めるにあたって、このイノベーション構想を基盤としつつ、新たに滋賀大学の将来を展望し、「新・滋賀大学構想―未来創生大学『滋賀大学』へ」としてここに提示する。

I.未来創生大学「滋賀大学」―滋賀大学のビジョン

 滋賀大学は、明治新国家における国民への教育普及のために滋賀県が設けた小学校教員伝習所(後に滋賀県師範学校)と第1次大戦後の好景気の下で高等教育の振興が図られた結果、全国第9番目の官立高等商業学校として創設された彦根高等商業学校との2つの学校をルーツとする。いずれも、わが国の発展と豊かな生活のために有為の人材を育てるとの崇高な目的をもって創設されたものである。この創設以来の強い意志と希望は、第2次大戦後に、戦後の日本の復興と発展のために学校体系の民主化、一元化とともに、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的」として設置された新制国立大学「滋賀大学」に発展的に引き継がれ、現在にまで至っている。滋賀大学は常に、社会の発展を支え、時代を切り開く、質の高い教育・研究をその使命としてきた。

 平成12年には「知の21世紀をきり拓く-滋賀大学の理念-」が策定され、豊かな人間性とグローバルな視野を備えた専門性の高い職業人の養成と、創造的な学術研究を標榜して、3C(創造Creation、協同Cooperation、貢献Contribution)を合言葉に、滋賀大学は知の拠点として、発展を続けてきた。平成21年、創立60周年に当たっては、これをより具体化して「滋賀大学憲章」が定められ、知の継承としての教育、知の開拓としての研究、知の還元としての社会貢献を目標と設定し、人権、教育、研究、連携、環境、協働、公開、順守を教職員と学生の依るべき行動指針として、「湖国から世界へ」教育・研究に力を尽くし、高い能力ある人材を育成することに邁進してきた。滋賀・近江の地に全国から有能な若者が滋賀大学の名を頼って集まり、高度な能力を有する人材として世に出ていく核となってきた。まさに知の20世紀を切り開いてきたのである。この間に、国立大学が法人化して、大学が置かれた環境は大きく変わってきたが、このような大学の理念は常に滋賀大学の懐にある。それゆえ滋賀大学は、全学ディプロマポリシーにおいて、深い教養と高い倫理に支えられた人間性、豊かな創造力を備えた専門性、グローバルな視野と精神、地域社会の発展に貢献する意欲と能力、文系・理系双方の科学に通じた文理融合型知性という5つの資質を有した人材の養成を目指している。

 いま、滋賀大学は令和の新しい時代に、さらに未来を創生する大学として発展する。未来創生大学「滋賀大学」は、次に掲げる3つの縦軸と1つの横軸により築き上げるものである。

3つの縦軸

Society5.0を牽引するデータサイエンス

 我々が暮らす21世紀は、Society5.0、超スマート社会である。そこではビッグデータがあらゆる場面で生成、集積され、分析、活用され、新しい価値を発見・創造する。さらにデータを実装したAIが、人間に新しい可能性を開き、人々の暮らしをより豊かで充実したものに変えていく。滋賀大学が日本で初めて創設したデータサイエンス学部・研究科は、この新しい社会の中で中軸として活躍しSociety5.0を牽引する人材を、基礎的人材から業界のリーダー・トップデータサイエンティストまで、一貫した教育研究体制のもとで育成する。と同時に、データサイエンス学部・研究科は、データサイエンス教育研究センターとともに、社会のあらゆる分野と連携して、未来に向けての価値創造を進め、社会の発展に貢献する。

未来を開く子どもたちを育てる未来教師

 その新しい社会の中で、創造と発展のカギになるのは「人」である。明治8年以来の小学校教員伝習所設置以来、連綿と教員を養成してきた教育学部は、琵琶湖という素晴らしい自然環境の中で、新しい時代を切り拓いていく未来の人材である子どもたちを導く「未来教師」を育成する。「未来教師」とは、社会構造が知識集約型に変容しつつある中で、本学の長い伝統に培われた教育の理念と方法に加えて、これまでの知識や技能だけでなく、人間観や生命観をも含む新しい価値観に基づいて未来の社会を築いていくことのできる世代を教育する教師である。それは、単に知識を伝えることではなく、知識を超えた深い考察力と鋭い感性を育むことのできる教師である。新しい教員養成とは、従来の基礎的な教科に加えて、データに基づいた、またデータを用いる楽しさを教える教師、多様性のある社会の中で、一人一人が持つさまざまな能力を開花させ、成長させることのできる教師、そして一人一人が夢を育て実現していくことを支える教師を育成することである。

新しい社会の展開を見通すビジネスサイエンス

 社会の発展は人々の経済活動により進む。第1次世界大戦後の日本の発展に寄与する商業人を生み出すために設置された彦根高等商業学校の伝統をひく滋賀大学経済学部は、これまでも滋賀県のみならず全国から有為の人材を集め、優秀なエコノミストを輩出してきた。狩猟、農耕、工業化社会から情報社会へ、そしていまビッグデータを活用する超スマート社会に進化しつつある現代においても、社会の活動の柱の一つである経済の重要性は言うまでもない。滋賀大学経済学部に期待される役割はいまやさらに大きくなっている。それは単に伝統的な経済学が重要であるという以上のものを意味する。すなわちこれまでの社会が質的にも異なる社会に変容した時、次に述べるような深みのあるリベラルアーツを習得したビジネスエコノミストが活躍する。従来の経済学や経営学を基盤としつつ、それらを超える広義のビジネスサイエンスを社会が求めているのである。

1つの横軸

能力を開花させるリベラルアーツ教育

 さらに、この新しい社会では、あらゆる分野を包摂してSTEAM教育を中軸としたリベラルアーツが必須の力となる。これが三つの分野の専門性に加えて、それらの専門性を様々な分野で十分に発揮するための包括力を育成するための横軸である。科学技術の基本的な理解なしには社会の価値を生み出し増大させることは不可能であり、またそうした理系分野の知識と同時に、人文学・社会科学・芸術が人の考察力、理解力、創造力を深める。つまり、文と理の融合の中で、人間のあらゆる知識と能力が統合されて、社会の新たな価値を発見し創造することになる。滋賀大学においては、教育、経済、データサイエンスのいずれの学部に関わらず、それぞれの専門分野の能力に加えて、論理的思考力と判断力、表現力を育てる。これが社会の中で人間の能力を開花させるリベラルアーツ教育である。これを「未来創生リベラルアーツ―滋賀大モデル」として構築する。

II.未来創生大学「滋賀大学」の理念

 滋賀大学を「未来創生大学『滋賀大学』」と称する。

 その理念を、「滋賀SHIGA」にちなんで、「Sustainability 持続可能性、Humanity人間らしさ、Inclusion インクルージョン(包摂性)、Globality普遍性、Activeness積極性」とする。これらは、滋賀大学の教育・研究及び職務並びに事業のすべてにおいて核心となる理念であり、また大学のあらゆる活動の基盤的価値ともいうべきものである。同時にこれらは、現代社会のあらゆる場面で必須の要素である。

(1) Sustainability 持続可能性 とは滋賀大学が2018年度から本格的に取り組み始めた SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な発展目標)に基礎を置いている。SDGsは、2015年に国際連合総会が定めた世界中の隅々にまで行きわたる、あらゆる分野、あらゆる場面で不可欠な目標である。滋賀大学もその学問、研究、教育のあらゆる部分においてSDGsの推進に尽力していく。

(2) Humanity 人間らしさ とは、滋賀大学におけるあらゆる教育・研究活動、さらに学生の課外活動において、「人間第一」を旨とすることである。いかなる学問研究や教育、活動も、人間の尊厳や人権の尊重の上に成り立つ。現代は科学技術が席卷している時代であるが、1999年世界科学会議は、その「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」(ブダペスト宣言)において「社会の中の科学、社会のための科学」を提唱した。科学が、人類の福祉を目的とし、人間の尊厳と権利、地球環境を尊重し、現在と将来の世代への責任を果たすものでなければならない、とした。

(3) Inclusion インクルージョン(包摂) とは、社会が内包する様々な多様性を尊重し、その中で、多様な特性の一つ一つを伸長することである。これは同時にわれわれ人間が歩んできた歴史を顧み、現在を探究し、将来を見通す原動力である。SDGsはまさにこのインクルージョンの概念を基礎として、「誰一人とりのこさない」豊かで幸福な生活を目指している。滋賀大学におけるすべての教育・研究活動は、このインクルージョンの思想に裏打ちされたものでなければならない。滋賀大学の教育・研究もこの理念の下で行い、これによって、滋賀大学を巣立っていく一人一人の若者の将来の活躍と自己実現を後押しすることができる。

(4) Globality 普遍性 とは、われわれの生活のすべてが国境のない世界の中にあり、また世界中の一人一人の行動や活動が普遍的な意味を持ち、「ここ」が同時に「どこでも」、「いつ」が「いつでも」となる。皮相的な国際化ではなく、われわれの学び、思考、行いが普遍的であることを意味する。

(5) Activeness 積極性 とは、すべてにおいて積極的に判断し、行動・活動し、常に前進を求めるということである。しかしこれは古きを捨てるという意味ではない。古きものの現代的な意味を積極的にとらえつつ、その中から新しいものを創造するということである。伝統は新しいもの、積極的なものを取り入れてこそ生き延び、そこに新しい伝統が築き上げられる。

 以上の5つの理念に基づき、未来創生大学「滋賀大」を構築する。それは、令和元年度入学式式辞で提唱したごとく、滋賀大学スピリット(Sincere 誠実さ、Humanistic人間性、Intelligent叡智、Generous寛容、Active積極性、Union団結とUniverse世界)をもって、みんなで素晴らしい未来を創る大学「滋賀大学」を築き上げることである。

III.未来創生大学「滋賀大学」の構成

1.全体構造

 第3期中期期間において文理融合型大学に転換した滋賀大学は、さらに「未来創生」を目ざす大学として進化する。ここに掲げる新構想は全体として第4期中期期間前半に計画的に実現を進め、第4期中期期間の後半には新たな滋賀大学として、教育・研究・社会共生の核となる知の拠点となる。いうまでもなく、それは6年間の余裕があるという意味ではない、今年度から来年度にかけての2年弱は、いわば計画・助走期間であり、この間に体制の基礎を固めるものである。これまでの中期期間では前倒しで目標の達成が求められたのと同様、本構想も、次の中期期間では実質的に4年間で目標達成を目指すべきことを念頭において、つねに加速度的に実現していかなければならない。それにより滋賀大学は、将来においても、本構想を超えて、さらに前進し発展することができる。

 加えて、社会はウィズ&ポスト・コロナ時代に移る。これに伴って教育の形態もそれに対応したものとならなくてはならない。これまで、ICTは教育の補助ツールの位置づけであったが、新型コロナウイルス感染症禍のゆえに、様々な社会の行動形態がオンライン型に変わる兆候を見せている。しかも人々はそれを、禍を転じて福をなすがごとく、「新しい生活様式」として日常に組み込もうとしている。そこにおいては、もはや科学技術だけでは解決できないことは明らかであり、人文・社会・芸術知も含めた統合的な知の集積と応用が必要である。ここにこそ文理融合の真の価値が構築されるのであり、「未来創生」に向かう「滋賀大学」という由縁である。

 滋賀大学は設立以来、2キャンパス制という大きな負担を負ってきたが、このコロナ禍で、時代は人が移動することを必ずしも必要とせず、いやむしろ人と人の距離があっても、バーチャルには近接した場にいることを可能にした。オンライン型教育は、対面型教育が見逃してきた教育における教員と学生の緊張関係を、部分的にせよ確実に取り戻すことになった。「遠隔だからこそできる学び・対面より深い学び」を得ることができるのである。したがって、これからはキャンパスをまたぐ教育が、これまでの一方的なテレビ講義の形ではなく、双方向的オンライン授業方式により、対面授業と遜色のない、場合によってはそれに勝る、現実に可能な教育形態として登場する。もちろん、すべてをオンライン方式とするわけにはいかない。実技や実験、集団的討論などの形態の授業はオンラインでは限界がある。また学生同士の人間関係の形成にはオンラインのみでは難しい。そうした条件を前提とした上で、われわれは、Webという新しいツールを用いる新しい形の教育を進めていかなければならない。

 そこで、滋賀大学は第3期中期期間にスタートした文理融合をさらに「未来創生」型に進化させる。文理融合は、文・理各分野の知識を併せ持つことを意味していたが、未来創生はさらに文・理の交錯的構築を意味する。もとより滋賀大学においては、教育、経済、データサイエンスの3学部は、それぞれの特性に応じた専門課程教育を伸張させ、それぞれの分野で質の高い人材を育成してきた。その流れの上で、「未来創生」は、従来の各専門分野の基盤の上に、滋賀大学のデータサイエンス分野での全国的優位性を活用して、2重の意味をもつ融合を構築する。すなわち、一方で、理系に位置するDSを軸として、データを読み解き活用できるデータエコノミスト、経済・経営・社会システムを理解したデータサイエンティスト、データを活用した教育、生データの重要さと楽しさを伝える未来教師を育てること、そして他方で、その基盤として、後に述べる未来創生リベラルアーツ・滋賀大モデルとして、確固としたDSリテラシーを全学生に、科学技術の基礎知識(STEM)と人文・社会の多様性(これをArtsと捉える)を組み合わせたSTEAM教育を全学に提供する。これにより、教育、経済、DSのそれぞれの専門分野の学識に加えて、科学技術の理解と広範で多様な科目の習得に基づく思考力、判断力、行動力を培う。この知的体系教育が未来創生を実現するのである。

2.未来創生連携教育講座制

 このような未来大学に進化させるため、教育及び経済両学部・研究科は、それぞれの所属学生について、DSの習得をこれまで以上に深め、又は広げる体制をとる。まず、令和元年度の大学設置基準改正により認められた「連携教育課程」を、DS学部と教育学部、経済学部にまたがり、教育DSコースとビジネスDSコースを擁する分野横断の新課程「未来創生連携教育課程」として開設する。これら連携教育課程の修了者には、連携教育課程修了証を発行し、学位記に未来創生連携教育課程修了を付記する。これにより、教育におけるデータの取扱いに習熟し、学校における生徒へのデータやAIを活用した未来型のプロフェッショナル教員像の実現に向けた展開が可能となり、また、ビッグデータの活用が今や必須となったビジネス・産業界で縦横に活躍できるデータエコノミストの育成を図る。DS学部では、統計学と情報学のバランスの取れた体制の下、AI分野にも習熟したデータサイエンティストを輩出することとなる。

 これら二つの連携教育課程を開設するのは、教育又はビジネスを中心的な専門分野としつつ、それぞれDSの高い知識と能力をもつガンマ(Γ)型の人材の育成を目指すことにより、滋賀大学の文理融合の形をより明確に出すことができるからであり、また現在の社会のニーズに的確に応えられると考えるからである。現在教育学部では教育DSプログラムが、また経済学部では政策-ビジネス革新創出人材プログラムが行われているが、これを連携教育課程に取り込む。これに伴い、夜間主コースを廃止して、その一部を連携課程に移し、その余については、これまでの昼間コースに統合してビジネスサイエンスに合流する。夜間主コースは、現代の社会状況や彦根の地での開講を前衛とするその役割はすでに終えたと考えられること、加えて、ウィズ&ポスト・コロナ時代においては、オンライン授業等の採用により受講時間の柔軟性が格段に上がっていることが主たる理由である。

 また、DS学部については、上記の教育DS及びビジネスDSを担当する教員を確保しつつ、特に機械学習・AI及び教育DS分野をさらに強化して、企業や官公庁、自治体等との連携の一層の充実を図り、Society5.0の牽引車としての機能をより効果的に果たすことができるよう、次世代型の研究と実務を交差させる教育研究体制に展開していく。

 なお、連携教育課程を開設しても、後に述べるように、この課程に所属する以外の教育・経済両学部の学生についてもDSリテラシー教育は強化し、全学生がDS基礎を習得することとする。加えて、DS、教育、経済3学部間の垣根のない相互受講体制は従来以上に便宜を図るものとする。

 これらにより文理融合型大学が確立した暁には、さらに第4学部の構想を考える余地が生まれる。それは、既存の様々な学部形態を超えた新しい超分野的な学部となることが予想される。さらに言えば、学部構成ではなく、大学全体が一つの大きな学部・研究科として総合型の未来大学として飛躍することも可能になろう。

3.未来創生リベラルアーツ・滋賀大モデル―DSリテラシーとSTEAM教育

 大学における教育カリキュラムは、大学設置基準の大綱化に伴い、教養課程が廃止され、一般教育科目と専門科目で構成されることとなった。戦後の大学では、学生は教養課程で幅広い素養や能力を醸成したうえで、専門課程に進むことが目論まれていた。つまり教養が基礎であり、その上に専門性が築かれる構造となった。しかし、教養課程廃止により、全国の大学で、教養科目を担当していた教員全員が既存学部への配属や新学部・研究科の開設等を経て、専門課程の教員となる再編成が行われた。その結果教養科目の位置づけを基本的に再検討しなければならなかったはずにもかかわらず、教養と専門の2層構造は、科目の数や種類、必修性、履修年度等の修正はあったが、本質的にはほとんど変化がなかった。そのため、教養は専門とレベルを異にする意識がぬぐえていない。

 滋賀大学は、2キャンパス間の物理的距離のゆえに、それぞれのキャンパスで教員が一般教育科目を担当することが必要であった。開学以来続いてきたこの2キャンパス制とそれに基づく教育体制は、先述の通り、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、従来の対面授業ではなく、令和2年度前期は全面的にオンライン授業に移行せざるを得なくなった。然るに、これは、一方で感染防止のための緊急的な措置であったが、結果的には新しい教育形態として認識することができ、事実上2キャンパス制の負の側面(授業のための移動の困難さ)が克服できる方途が構築されたことになる。今後は、一般教育科目はもちろん、専門科目においても、必要に応じてオンラインでの授業でこれまで通りの、また工夫次第でそれ以上の教育効果が得られる可能性がわかってきた。「遠隔だからこそできる学び・対面より深い学び」の所以である。

 こうした状況を踏まえて、従来の一般教育科目(全学共通科目)に二つの要素を組み込んで未来創生リベラルアーツ―滋賀大モデルと名付ける。一つは、DSリテラシー教育の強化である。全学生に2科目4単位のDS基礎科目を必須で習得させる。これからの社会では、Society5.0の基軸であるビッグデータ、AI、ロボット、IoTを支える知的基盤としてのDSが社会で活躍する大きな柱となる。滋賀大学は、一方で、専門家としての汎用能力を持つデータサイエンティスト、また教育DSを身に着けた未来教師やデータに基づく経済分析のできるデータエコノミストとして、DS専門知を活かす人材を育成するとともに、他方で、教育、経済のそれぞれの分野で、DSリテラシーを身に着け社会に出て新しい可能性を創造することのできる人材を輩出する。

 第2に、これまでの一般教育科目をSTEAM教育にシフトする。現代社会は、科学技術を基盤とする社会である。社会のあらゆる物事が科学技術とつながっており、科学技術の基本的理解なくしては、社会での活躍が成り立たないほどである。そこで、STEAM(Science, technology, engineering, arts, mathematics)の概念を取り入れる。STEM(科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学)の科学技術系基礎知識に加えて、Arts(人文・社会・芸術)を組み込んで、新しい高等教育基礎科目を設定する。これは、全学生に科学技術の基本的理解と人文社会・芸術に基づく多様性と批判的精神を養う教育プログラムである。ここでいうArtsは、旧来の教養科目のような専門課程に入る前の一般常識的な位置づけではなく、専門科目の十分な習得を前提に、専門知に対する批判的視点を醸成する科目群である。

 以上をもって、従来の一般教育科目に比べてより層の厚い、専門科目との並行的教育科目としてのリベラルアーツと位置づける。Society5.0時代の滋賀大学におけるリベラルアーツは、従来のいわゆる「教養」ではなく、専門科目を十分に学ぶことを基本としつつ、並行して専門以外の分野も学ぶことにより、広範で偏りのない視野と洞察力を身に着け、論理的思考力と判断力を磨き、社会における課題発見・解決と社会システムの改革・構築に資する基礎的能力を習得することを指す。
このようにして、滋賀大学では、Society5.0の基盤であるDSリテラシーと、現代社会の展開の源となってきた科学技術の基礎知識を位置づけつつ、これに人文学、社会科学、芸術を配することで、「未来創生リベラルアーツ―滋賀大学モデル」を構築する。

 この構想を実施していくために、全学組織としてSTEAM教育研究センターを設置し、教育・学生支援機構の下におく。

 さらに、こうしたリベラルアーツ-滋賀大モデルに裏打ちされた専門の学びの集大成を社会に還元する場として、ソーシャル・アントレプレナーシップ・センターを構想する。これはイノベーション構想でも示した「社会の中の大学」の組織的実現でもある。

むすびに

 未来創生大学「滋賀大学」構想は、ここに述べた全学体制の構築とともに、各学部・研究科においてもイノベーションの遂行が前提となる。今後、各学部・研究科の新展開に向けて、一定の方向を示すこととする。

 

2020年9月15日

滋賀大学学長 位田 隆一

未来創生大学「滋賀大学」構想
未来創生大学「滋賀大学」の理念

メッセージ

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