新入生の皆さん、新型コロナウイルスに負けずに元気に過ごしているものと思います。5月の連休後の早期収束の期待は外れ、一度も大学に来ることのないままで、自宅の机の前でonline授業を受けていることと思います。

 せっかく滋賀大学に入学したのに、大学のキャンパスや教室を見ることなく、また生身の先生と接したり、友人を作り、クラスで語り合い、課外活動に力を入れることもかなわない状況です。こんな状況はこれまで一度もないことでした。

しかし、皆さんは、既存の大学を体験できない代わりに、新しい、これまでにない大学の在り方を一緒に考えるスタート地点に立っているのです。いま重要なのは、コロナ戦争終結の日が来るのをただ受動的に待つのではなく、この新しい状況を逆手にとって、新しい大学での学びを皆さん自身が考えることです。

 これまでの大教室での授業は、みなさんが高校までに受けてきた多くても50名以下の授業とは異なって、数百名が一度に出席する大教室や100~200名前後の中教室での講義があり、入学直後の勉学意欲が減退する可能性が指摘されていました。もちろん、ゼミなどでは10名前後の少人数の場合もありますが、普通の講義は大きな教室です。

高校での勉強との違いは、大学では「個」の確立を前提とし、自分と向き合う勉学態度が必要になるということです。皆さんにとって大学とは、高校時代に得たよりももっと奥深い知識を教えてくれるところだと考えているかもしれません。しかし、大学とはそういう知識の切り売り場ではありません。大学は、知識を学ぶところではなく、考える心を養うところです。確かに、大学では高校より深い知識を必要とするところがないわけではありません。しかし、重要なのは、基礎的な知識を基にして、一つの問題や課題を深く考えて、自分なりの解答を出していくプロセスを学ぶところです。大学では、正解のない世界に踏み込みます。大教室で講義を受けるのみでなく、授業以外でも本や論文を読み、自分の中で問題を見出し又は設定して、それに対する解答や解決策を自分で考えるのが大学における勉強なのです。

 そうであるとすれば、今回のonline授業は、自分一人で先生と向き合うことができることになります。大教室では一人一人が先生に対して質問をしたり議論を吹っ掛けたりすることは難しいのですが、onlineであれば、いわば先生が皆さん一人一人の目の前にいて、対話や議論が可能になります。つまりこれまでの授業形態では考えられない状況が生じているのです。これを利用しない手はありません。先生が皆さんそれぞれの個人教授のようなものです。

 同時に授業の内容も、これまでの板書形式のものから、パワーポイントやレジュメを使ったり、動画や画像を使ってよりヴィヴィッドに教材が提供され、また皆さんがそれを自宅で反復利用することもできます。先生になるのは滋賀大の先生に限りません。滋賀大の先生から外国の先生にお願いしてonlineでお話を聞くことも考えられるでしょう。大学に来ていただくことは難しくても、onlineなら可能になる。これがヴァーチャルな世界のはずです。今までは教室でなければできなかった、したがって滋賀大学の中の教室という物理的条件に制約されていたものがすべて取り払われるのです。

 また、受講する側のみなさんも、単に受動的に講義をonlineで聴くということだけではなく、授業に積極的に参加することによって、先生に授業内容や方法の希望を直接伝えることもできるはずです。これまでは直接に先生と会って希望を伝えることはなかなか難しかったものが、すぐ目の前の画面に先生の顔があり、そうでなくても直接に自分の耳に先生の声が入ってくるのですから、皆さんも直接に先生に話しかけ、議論を挑み(勝つのは難しいでしょうが)、自分で考えを深めることが今まで以上にできるのです。またそうでなければ、せっかくのonline授業という新しい方法を取り入れている意味がありません。大学からは皆さんにさまざまなオファーをするものではありません。皆さんがまず自分でいろいろチャレンジして、そのうえで解決できないこと、助力が必要なことについて、大学に求め、それを受けて大学が皆さんを支援するのです。あくまで主体は皆さんなのです。「叩けよさらば開かれん。」

 加えて、先生との関係だけではなく、同じ新入生同士で、場合によっては先輩たちとも、ネットでつながることも可能でしょう。onlineは、先生と学生の間だけではなく、学生同士の横のつながりも作り出すことのできるツールです。しかも皆さんはおそらくスマホやiPhoneでこれまでいろいろな友人と関係を作ってきたはずです。その皆さんの「ノウハウ」を駆使して、新しい友人関係の構築に取り組んでください。そうすれば、コロナ戦争が収まった時に大学に来ても、初めての人たちではなくて、互いに旧知の仲になっているはずです。

 残念ながら身体を動かす系や実験や行動の必要な系の授業や課外活動は、onlineでは限界があるのですが、ネット上でつながることにより、練習や代替する行動が可能になるはずです。現場に出ることができない場合でも、ヴァーチャルな空間を作り出すことによって、実際よりは効果的な方法も見つかるかもしれません。皆さんの中にはゲームなどで培った「スキル」を駆使できる人もあるはずです。

 また、滋賀大学に限定されずに、他大学の学生たちともつながることができます。大学という枠組みは所属を示すものではあっても、その枠組みの中に閉じ込めたり「隔離」しているものではありません。他大学でもonline授業が普通になっていますから、条件は同じです。その中で滋賀大学に入学したメリットを見つけ出して、他大学生との交流の中でさらに一段階上に登っていくことは、楽しいことではありませんか。

 これまでになかった環境の中に飛び込まざるを得なかった皆さんは、その中で自分をどうやって伸ばして行くのか、目の前にある新しい可能性を含む世界のなかで思う存分想像力と独創性、個性を発揮してください。

 滋賀大学はいま、データサイエンスを横軸とし、教育、経済・経営、社会システムといった縦軸をつなぐ未来志向の文理融合型大学として、Society5.0と呼ばれる新世代の大学に進化して、日々きらきら輝いています。滋賀大学は皆さん方新入生の期待と意欲を裏切りません。滋賀大学新入生の皆さん、大いに活躍されることを期待しています。

 

2020年5月11日

滋賀大学長 位田隆一

P.S.:学長室で学長と学生が直接に語り合う「学長サロン」の制度が従来からありますが、これもonlineで行います。学長である私と直接に話したいと思われる新入生諸君、応募を歓迎します。

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