2020年度新入生の皆さん、ご入学おめでとう。

 教育学部233名、経済学部489名、データサイエンス学部の学部105名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。あなた方を滋賀大学は心から歓迎します。ここまでセンター試験及び滋賀大学の入学試験を戦い抜かれた皆さんの入学は、あなた方を支え続けてくれたご両親やご家族、先生、友人たちのおかげです。心からの感謝をもって、その方々と喜びを分かち合ってください。

 また、大学院修士課程87名、博士課程4名及び専攻科10名の進学された方々にとっては、それぞれが研究者、高度職業人、業界をリードする専門家を目指して、その思いを新たにしておられることと思います。皆さんのその極みを目指す努力を支えてくれた方々に感謝するとともに、改めてこれからのさらなる精進を誓ってください。

 本来なら、今日4月6日にびわ湖ホールで入学式を行う予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、式は中止せざるを得ませんでした。皆さんの人生の一つの重要な出発をみんなで祝うことができないのは、大変残念であり、皆さんやご家族、関係の方々の心中を想うと、慙愧に堪えません。

 しかし大学はこの新型コロナウイルス感染症に対して、全力を挙げて立ち向かっています。皆さんがそこに新しい力として加わってくれたことにより、地域社会、国全体、そして国際社会と連帯して、この危機の克服に向かいたいと願っています。

 

 皆さんの入学・進学にあたって、伝えたいことが三つあります。

 まず第一に、皆さんは今日から滋賀大学といういま急速に発展を遂げつつある場に入ってきたということです。

 滋賀大学はいま、マザーレイク琵琶湖のほとりで、きらきら輝いています。

 それは、大学が新しい社会を牽引しようとする意気込みに満ちているからです。その意気込みは、3年前に発表した滋賀大学イノベーション構想「きらきら輝く滋賀大学」に基づいて、文理融合型大学、グローバル化する大学、研究する大学、社会の中の大学、機動力・行動力のある大学という五つの基本方針に基づいて、発展の真っただ中を進んでいるからです。皆さんは、未来志向の大学という大きな船の一員となったのです。

 現代はSociety5.0という新しい社会に入っています。Society1.0は狩猟社会、2.0は農耕社会、3.0は産業革命を経た工業社会、4.0は情報革命を経て展開した情報社会でした。そして5.0はビッグデータ、AI、ロボット、IoTが軸となる超スマート社会です。そこでは、日々の生活の中で生成されるさまざまなデータを活用して社会が発展していきます。したがって、そのデータを解析すれば、新しい価値を発見し又想像することができます。このための科学がデータサイエンスです。

 滋賀大学は3年前に日本で初めてのデータサイエンス学部を創設し、昨年は修士課程をそして今また博士課程を設置して、このSociety5.0という新しい社会を牽引する人材を育成しようとしています。

 幸い滋賀大学には教育学部と経済学部があり、また教育学や経済学に限らず様々な分野の教員がそろっているため、社会の様々な分野で生活のあらゆる部分から生じるデータを解析し、その意味を理解し、新しい価値を探ることができます。また滋賀大学は、今や65件を超す企業や政府・自治体等との連携協定や120件を超す共同研究などの取り組みにより、現実社会のデータに触れ、学習することができます。数学、情報学、統計学の基礎を会得したうえで、こうした社会の実データに触れることによる文理融合が成立しています。

 しかし、データサイエンス学部だけが滋賀大学ではありません。

 教育学部においては、その前身である滋賀県小学校教員伝習所が明治8年に創設されて以来、これまで一貫して小学校、中学校、幼稚園、保育園、特別支援学校の優秀な教員を養成してきました。教育は、社会の基礎を作ります。2015年に国連総会が採択した持続可能な開発アジェンダ、いわゆるSDGsにも、すべての人に質の高い教育を提供することが目標の一つとして挙げられています。教育は、それぞれの社会の礎だからです。

 子どもたちを教育することは、社会の未来を築くことです。滋賀大学ではこれまで約140年以上に及ぶ教員養成の伝統があり、滋賀県のみならず近隣の府県・市町の、ひいては日本全国にわたって、優秀な教員を養成してきました。そしていま、新しい社会の軸であるデータサイエンスも取り入れて、未来を創る子供たちに対して、データに基づく教育、子供たちにデータや人工知能などを扱う楽しさを伝える教育のできる未来教師が生まれ始めています。

 教育学部に入学した皆さんは、そうした素晴らしい未来教師になるべく、これからの4年間を幅広い基礎と奥深い専門科目を習得していきます。今年度からは教育データサイエンティストプログラムも始まります。

 また経済は社会の基本です。経済学部も伝統は長く、大正11年、1922年に彦根高等商業学校として産声を上げて以来、100年近くにわたってわが国の経済・産業の発展を担う多くの有能な人材を輩出してきました。データサイエンスが情報学と統計学の統合されたものであり、経済学にはもともとが統計を扱っていたことから、経済学部においても、データは重要な役割を果たします。経済学部でも、経済学、経営学を中心に、さらに幅広く、人文社会科学、自然科学、体育等の科目も習得できる幅広い知識と能力を持つ人材を育成してきました。その基礎の上に、データサイエンス学部・研究科と連携して、学部では政策-ビジネス革新創出人材プログラム、博士前期課程ではデータサイエンス副専攻を設置し、文理融合型の人材養成を行います。

 このように、滋賀大学では、文系と理系や学部の垣根を超えた文理融合型教育を進めています。

 

 そして二つ目に伝えたいことは、滋賀大学のグローバル化です。

 データには国境がないのと同じで、皆さんのこれからの行動にもボーダーがありません。滋賀大学は、先に述べたように、グローバル化を基本方針の一つとしています。

 滋賀大学に学ぶ皆さんは、あらゆる可能性を持っています。自分たちがどこで、どのように、活躍するか、これからの大学生活で将来の夢をはぐくみ、実現に向けて、準備をしていきます。

 高村光太郎に「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」という詩があります。まさに皆さん一人一人がこれから歩んでいく道を作ります。滋賀大学の基本理念は「地域に根差しグローバルな視野をもつ人材の育成」であり、皆さんがこれから築いて行く道は、滋賀の地や故郷の地に限りません。皆さんは、いつでも国境を越えて、世界に飛躍することができます。皆さんにはその知力と能力が備わっています。滋賀大学は、皆さんのそうした海外への飛躍の夢の実現を支援します。

 まずグローバル環境の醸成を進めています。世界共通語としての英語の習得のためにスマホでいつでもどこでも学習できる英語学習アプリの無償提供や経済学部では英語による専門科目の授業を提供しています。また海外の協定校も35大学を数えます。欧米、ラ米、またチュニジアやエジプトなどのアラブ諸国も含まれます。これらによって留学の障壁を低くし、また日本語のできない留学生の滋賀大学への留学を誘引しています。加えて短期や長期の留学のための奨学金、留学相談、留学生との交流スペース”Global Plaza”、米国の留学生派遣機関CIEEとの連携など、国際交流機構を中心に全学でグローバル化の指導や支援の体制が整っており、一年次から段階を追って海外への夢の実現に導きます。

 グローバル化は学生のためだけではありません。先生方に対しても大学は、国際共同研究や海外研究滞在、外国人研究者の招聘、国際ジャーナルへの論文投稿などへの助成を行って、大学全体のグローバル化を進め、世界に名だたる滋賀大学を目指しています。

 

 最後の三つ目は、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンライン授業の展開から開かれる新しい地平が皆さんの前にあるということです。

 コロナ戦争とでもいうべき新型コロナウイルス感染症との長期的な闘いの中で、感染拡大を防止するための方策として、これまでのいわゆる面接授業、つまり教室の中で先生が学生に講義をする授業形態から、インターネットを活用したオンライン授業に切り替えざるを得ませんでした。皆さんが直接に教員の謦咳に接することを避けざるを得なくなったのです。

 しかし、われわれは、コロナ戦争という非常事態の中で、ただ苦悩して教育するわけではありません。これにより新しい教育の可能性が開かれました。それは、次の2点にあります。

 

 第1は、この新しい学習形態がもたらす創造性です。

 これまでの面接授業では、教室という一つの閉じられた空間の中で講義が行われるため、教室という空間の広さによって講義が制限される側面がありました。教員もそれに甘んじてきたきらいがあります。しかし、インターネットでの教育は、ある定まった広さの空間という制限を超えて、ネットに載せることができる限り、あらゆる大きさ、形状、性質のものでも、用い、提示し、表現することができます。

 つまり、どのような講義も、また学習も可能になったということです。つまりオンライン講義は無限大の教育の可能性を開いたことになります。

 言い換えれば、オンライン講義は、予め定まった学習方法はなく、教員と学生のそれぞれの利用の仕方で成果が何倍にも向上する可能性をはらんでいます。これまでの書物を中心とした学習形態から、ダイナミックな学習が可能となるのです。

 このことは、教員側に授業に関するあらゆる創造性の追求が求められると同時に、学生の側にも授業へのより一層積極的な関与が求められます。これまでのように教室でただ聴いているだけではなく、細部に至るまで理解し、考え、反応し、時には批判することまでも必要になってきます。しかし、これこそが大学です。数年前にハーバード大学の哲学者マイケル・サンデル教授が行っていた白熱教室が日本でも話題になりました。いわばあれに匹敵するようなことが、教室を出てインターネットで可能になるといっても過言ではありません。

 もちろん、今はまだ教員もこうした新しい方法に慣れようとしている段階なので、一足飛びに新しい創造的な講義ができるものではありません。しかし、この方法は、教室での一方通行の講義を超えて、受講する学生との間での双方向での講義の組み立てが可能になり、一日一日教育の内容や方法が改善・進歩していくということです。

 第2に、このオンライン講義は、同時に大学のグローバル化にも寄与します。

 ICTはボーダーレスであり、新型コロナ感染症のために物理的な国際モビリティは激減していますが、超スマート社会Society5.0では、かえって情報の国際モビリティは急上昇しており、国境を越えた情報学習と連携が可能になっています。実際の留学がなくても、世界とつながることもできるのです。そのため、大学における教育そのものが国際化する重要なきっかけになります。滋賀大学にとっても、海外大学との連携強化の機会でもあり、教育コンテンツの発信につなげるべく検討を進めます。皆さんも自由に海外とつながってください。大学から世界に飛び出そう!

 

 大学は、夢を育むところです。皆さんは、この新しい教育環境の中で、思う存分自分の知的好奇心と思考能力をはぐくみ、新しい道を切り開きつつ、自分の夢を築き上げてください。

 あらためて、皆さん、ご入学おめでとう。皆さんを大いに歓迎し、また大いに期待しています。

 

2020年4月6日

国立大学法人滋賀大学長

位 田 隆 一

メッセージ

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