満開の桜が咲き誇る今日の良き日に、平成31年度滋賀大学入学式を挙行できますことは、滋賀大学にとって、大きな喜びであります。お忙しいところをご臨席賜っている来賓の方々、誠にありがとうございます。また、これまで新入生一人一人を育て、支えてこられた保護者やご家族、ご友人、関係の方々に深く敬意を表しますと共に、心よりお祝い申し上げます。

 教育学部241名、経済学部493名、データサイエンス学部105名の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 滋賀大学はあなた方を心から歓迎します。今日のあなた方のあるのは、ひとえにあなた方を支え続けてくれた保護者やご家族、友人たち、関係の方々のおかげです。厚い感謝の気持ちをもって、喜びを分かち合ってください。

 皆さんの入ってきたこの滋賀大学について、少し歴史を紐解いてみましょう。この大学は、二つの重要なルーツを持っています。一方は、明治維新直後の我が国において、滋賀県下の初等中等教育の要となる教員の養成を担うために明治8年(1875年)に大津に設置された小学校教員伝習所です。のちに滋賀師範学校に名を改めます。つまり滋賀の地に根差して、子どもたちの可能性を精一杯に伸ばすために、優秀な先生たちを育ててきたのです。この目標は今も変わりなく続いています。滋賀大学教育学部に入学された皆さんは、未来を担う子ども達を大きく広く育てていくために、子どもたちのあこがれるような、また子供たちに大きな夢を抱かせるような、そんな素晴らしい先生に育っていただきたいと願います。

 もう一つのルーツは、大正11年(1922年)彦根に設立された彦根高等商業学校、いわゆる彦根高商、です。わが国は、第一次大戦後のわが国の経済発展を進める有能な人材を育成するために、全国各地に高等商業学校を設置しました。その一つが彦根高商です。通常、国が大学や学校を開くときはまずは県庁所在地に開設しますが、彦根高商は大津ではなく彦根の地におかれました。これは、中世から近代にかけて近江地方出身の商人が全国に出かけて行って商売を行いました。いわゆる近江商人です。近江商人は、営利至上主義を排し、独特の商業道徳を持っており、これが「三方よし」、つまり、売り手よし、買い手よし、世間よし、の思想として知られています。現代の大企業にはこの近江商人を起源とするものが少なくありません。近江商人の活動範囲は、海外にも及んでいたこともあると言われます。近江商人たちは、当時ある種の流通革命を起こしたのです。滋賀大学経済学部にはこのレガシーを受け継いでいます。彦根高商時代から現在に至るまで、皆さん方の先輩卒業生たちは、社会のあらゆるところで活躍しています。

 滋賀大学は、1949年、戦後日本の復興と発展を導くために、全国に高等教育の網の目を張り巡らせて、「一県一国立大学」政策がとられた時、この二つが統合されて、新制大学として誕生しました。実は他府県にも同様の新制国立大学が設置されましたから、今年で滋賀大学を含め様々な大学が70週年を迎えます。わが滋賀大学も、6月1日には創立70周年記念式典を催します。

 この70年の間に、滋賀大学はその設立時の理念を保ちつつも、時代の流れの中で、大きく進化してきました。とりわけこの15年余りは、それまでの滋賀大学を大きく変容させています。まず2004年に国立大学が法人化され、滋賀大学も国立大学法人滋賀大学となりました。国立大学の法人化については、この15年間で様々な課題がありましたが、ここではそれは述べません。法人化後は、6年ごとの中期目標と計画を立てて、大学の発展が促されてきました。いまは第3中期の4年目に入ります。この15年は、滋賀大学にとってこれまでの伝統の中に新しい展開を模索して、死に物狂いで泳ぎ続けてきたということができます。滋賀大学2.0とでもいうべき時代です。

 その中に新しい光を見出したのが、我が国初めてのデータサイエンス学部の設置です。現代は第四次産業革命とか、Society5.0「超スマート社会」と呼ばれ、ビッグデータ、AI、ロボット、IoTが社会の中核となるといわれています。しかし、わが国では、欧米等と比較し、データ分析のスキルを有する人材や統計科学を専攻する人材が極めて少なく、危機的な状況にあると指摘されてきました。こうした状況に鑑み、滋賀大学では、わが国の今後の発展に極めて重要な「価値創造のための新たな科学」である「データサイエンス」の教育研究を推進することを決意し、2016年にはデータサイエンス教育研究センターを、そして2017年からはデータサイエンス学部を設置し、さらにこの4月から大学院データサイエンス研究科修士課程を設置し、先程入学式を行ったところです。これは、伝統の中に、最先端の科学の拠点が作られたことを意味します。、滋賀大学は新しいステージに入った、つまり滋賀大学3.0が始まったのです。

 時を同じくして2016年に学長に就任した私は、翌2017年に滋賀大学イノベーション構想「きらきら輝く滋賀大学」を発表しました。滋賀大学3.0即ちきらきら輝く滋賀大学の時代が始まっているのです。

 さて歴史を少し長く述べてきましたが、皆さんは、このように滋賀大学が荒波を乗り越えて発展しつつある今、入学してきたのです。滋賀大学3.0「きらきら輝く滋賀大学」は、皆さんこそが主役なのです。

 では大学で皆さんは何をするのか。高校時代と違って、大学入試という目標はありません。大学では、問題を解いても、正解はないか、少なくともたった一つが正解でははありません。何よりも、何が問題なのかを自分が探し、発見し、又は設定しなければなりません。また皆さんが設定した問題が正しい問題とも限りません。問題を見過ごすこともあります。いくら考えても解答にたどり着けないこともあります。そもそも、解答のない問題を見つけてしまうかもしれません。では皆さんはどうすれば、いいのか。大学で勉強する、すなわち学問する、とはどうすればよいのでしょうか。

 誤解を恐れずに言えば、一般的に、自然科学系と人文社会系、いわゆる理科系と文科系では、学問の方法が異なります。理科系の人たちは、問題を設定する場合に、仮説を立てます。この問題の解はきっとこうだ、と仮想的な正解をまず設けておいて、それを証明しようとします。そこにたどり着くのにどのような実験をし、またはどのような論理を組み立てていけばよいか、を考えます。その仮説が証明できるまで、実験を繰り返します。証明する方法を考えます。しかし、仮説が10日や20日、ひと月やふた月、1年や2年で証明できないかもしれません。手を変え品を変え証明しようとします。ある日、それが成功します。仮説が証明されたのです。ノーベル賞を受けるような研究も、こうしたみちのりをたどっていきます。

 文科系では、少し違います。社会の中に問題を見つけることから始まります。ある社会の現象や制度、考え方が、妥当ではないのではないか、と気づくことから始まります。なぜそのような状況や制度、考え方が出てきたのか、を調べ、そこに問題の核を見出し、何が妥当ではないのか、なぜそうなのかを論理立てて解析していきます。そのうえで、それよりもベターな、できればベストな状況や考え方、制度を考えます。それをゴールにしますが、出発点からゴールにたどり着く道筋が自分の考えていることが最も適切だということを自分で論理を構成して証明していきます。言い換えれば、出発点からゴールまで、あらゆる観点から説明して論証していくプロセスが人文社会系の学問の中心です。しかし、自分で打ち立てた説明の道筋が、結果的にゴールにたどり着けないかもしれません。その場合であっても、その道は正しくなかった、ということが証明されますから、それ以後は自分も他の人もその道筋は取りません。だから、出発点からゴールまで、複数の道筋があって、どの道筋が最適かを考え説明していくのが人文社会系の学問なのです。ゴールは与えられていて、仮説ではありません。仮説という言葉を使うなら、その説明の道筋を設定するのが仮説ということになります。

 このようにいずれの分野であっても、考えて、結果に到達し、又は道筋を説明することが求められます。一生懸命に考えて、試行錯誤していくのです。では、そのために何が、必要か。私は、それは好奇心と柔軟性だと思います。好奇心はあらゆることに対して関心を抱き、新しいことをやってみることです。新しい考え方を吸収することです。柔軟性とは、自分の考えが、間違っているかもしれない、今の道筋よりももっと適切な道があるかもしれない、と常に自らに問い直すことです。

 滋賀大学は、これまでの大学になかった新しい可能性を広げて、皆さんを迎えます。それは、それまでの経済学部と教育学部という人文社会系と教育系の枠を超えて、理系の色彩の強い学部であるデータサイエンス学部という、三つの学部が鼎の三本足のように大学全体として「文理融合」という先端的教育研究の場を提供していることです。

 データサイエンスは、このビッグデータの時代に、データエンジニアリング、データアナリシス、そして、価値創造の三つの部分からなります。この最後の価値創造には、そのデータが用いられる社会のそれぞれの分野の知識と理解が必要です。これは人文社会系の果たす役割です。データサイエンスには、理系の技術と、データの由来する各分野の理解、つまり人文社会系の知識とが必要なのです。また、教育学部では、データを活用した教育を通じて、子どもたちにデータに基礎づけられた勉強の楽しさを伝えることができる未来教師を育成します。また、文系である経済学部では、データの解るエコノミスト、データに基づいて経済を語ることのできるエコノミストを育てていきます。このように滋賀大学は、文理融合型大学に舵を切ったのです。

 そして、その底流に、滋賀大学スピリットがあります。滋賀大学をアルファベットに直してみてください。SHIGA University. SはSincere、誠実さです。何事にも誠実に向き合い、判断し、行動してください。HはHumanistic、人間性です。この琵琶湖のほとりの自然豊かな環境の中で、それぞれの人を尊重し、互いに認め合ってください。IはIntelligent、叡智です。単に知識だけではない、自分の奥底からにじみ出る叡智を磨いてください。GはGenerous、寛容です。様々な場面で、独りよがりにならず、相手に寛容であること、それにより余裕も生まれてきます。AはActive、積極性です。何にでも好奇心を持ち、何でもやってみること、先例にとらわれてはいけません。自ら学んでください。自ら動いてください。そして、UniversityのUは、Union、団結と、Universe、世界を示します。みんなで団結して困難に立ち向かい、素晴らしい世界を作り上げることです。これが滋賀大学スピリットです。

 最後に、皆さんは平成最後の入学生であると同時に、すぐに始まる令和の時代の最初の滋賀大生です。この時代の変わる中で、十分に力を養い、蓄えて、近い将来にその実力を存分に発揮できるよう、学生生活を送ってください。

 皆さん、ご入学おめでとう。きらきら輝く滋賀大学へようこそ。皆さんが、4年間の学生生活を通じて、Shiga University Spiritを養い、琵琶湖に映える陽の光のように、きらきらと光り輝くことを期待しています。

 

平成31年4月4日

滋賀大学長 位田 隆一