桜が満開に近づきつつある今日の良き日に、平成31年度滋賀大学大学院入学式を挙行できますことは、滋賀大学にとって、大きな喜びであります。お忙しいところをご臨席賜っているご来賓、関係者の方々、誠にありがとうございます。また、これまで大学卒業まで、また仕事の現場の中で今日の入学まで、これらの大学院新入生たちを支援してこられた保護者やご家族、ご友人、職場の皆様、関係の方々に深く敬意を表します。

 教育学研究科53名及び特別支援教育専攻科10名、経済学研究科19名、データサイエンス研究科23名の皆さん、ご入学、ご進学、おめでとうございます。

 滋賀大学はあなた方を心から歓迎します。今日のあなた方のあるのは、そしてこれから始まる修士、博士、専攻科のそれぞれの課程における研究が可能になったのは、ひとえにあなた方を支え続けてくれた保護者やご家族、友人たち、職場の皆さん、関係の方々のおかげです。厚い感謝の気持ちをもって、喜びを分かち合ってください。

 とりわけ、これまでからある教育学研究科、経済学研究科に加えて、データサイエンス研究科が、本年度から我が国初のデータサイエンス大学院の修士課程として、発足いたしました。これは、一昨年4月にこのビッグデータ時代に我が国の発展のために不可欠なデータサイエンティストの育成を目的に、我が国初のデータサイエンス学部を創設したことに続き、極めて例外的な措置によって2年前倒しで開設しました。データサイエンスの拠点滋賀大学の第二段階です。さらに来年には、博士後期課程を開設するべく文部科学省に申請をいたしています。その意味で、今年度のデータサイエンス研究科新入生は、全国の企業から派遣された社会人が19名に上り、滋賀大学がいかにデータサイエンスの聖地としての役割を果たそうとしているかがうかがえると思います。Society5.0「超スマート社会」における我が国の発展は、データサイエンス学部の新入生、そしてとりわけこの新しいデータサイエンス研究科一期生の双肩にかかっているといっても過言ではありません。

 また、教育学研究科には、一昨年度から高度教育実践専攻、いわゆる教職大学院が設けられ、こちらにも現役の教員が入学されています。今年度はその第三期の入学生になります。さらに、この入学式には含まれませんが、教育学研究科が兵庫教育大学連合大学院に加盟し、念願の博士後期課程が出来上がりました。入学式は兵庫教育大学で行いますが、すでに教育学研究科の教員の下に指導の問い合わせがあります。経済学研究科においても、デュアル・ディグリーや五・五年制などの展開があります。このように、3研究科とも、日々進歩を続けています。

 さて、皆さんは、研究科又は専攻科に進学されました。これからの2年間、又は3年間、場合によっては5年間をこの滋賀大学の大学院で研究とスキルアップに励まれることになります。博士号の取得を念頭に、研究職を目指す方もあれば、より高度な理論的技術的スキルを身に着けることによって一段高いプロフェッショナルとして、現場での課題解決を目指す方もあると思います。皆さん一人一人が、これからの大学院生活に対して意欲に満ちておられることでしょう。

 大学院生活を始めるにあたり、ここで、皆さんのこれまでの学部や現場での学習や経験を少し振り返ってみてください。研究職であれ、高度プロフェッショナルであれ、大学院で何をするのかをこの機会に思い返してください。皆さんが卒業された学部では、問題が与えられ、又は目の前にあり、そこにある物事を考える、証明することを勉強されてきたと思います。社会人で入学された方々は、現場で生じる様々な目の前の問題や課題を解決することを経験されてきたと思います。よく勉強と研究は違うといいます。学部レベルで取り組んだのは、知識の探究と手法の訓練だったはずです。また日々職場で取り組まれてきたのは、理論に基づいて、最適な解決であったかもしれません。もちろん、そうした中から新たな理論的発見や新しい適用があったことでしょう。

 それに対して、大学院では、勉強ではなく、研究です。研究においては、課題は与えられるものではなく、又はすぐ目の前にあるもののみではなく、そのさらに奥にある理論的な課題を見つけるところから始まります。目の前の問題を解いていくことのみでは研究ではありません。研究はそれを超えて、理論的な深みを目指して課題を設定し、その解決や証明に取り組みます。つまり、大学院における研究は、現実の問題のその先にある、より一般的、理論的な礎を探究し、その先に現実での応用を見通します。研究者志望の方々は、その理論的問題を追及し、また高度なプロフェッショナルを目指す方々は、深めた理論的研究を現場で応用するスキルを磨きます。こうして、大学院での理論的探究が基礎になって、今後の研究で又は今後の現場での対応のうえで、ある具体的な一つの問題の解決にとどまることなく、さらに新たな問題や研究課題に挑戦した時に、または新しい課題が目の前に生起した時に、より幅広い、より深みのある応用が可能になります。

 他方で、大学院での研究は外の社会や現場と隔絶した状況で行うものではありません。教育学研究科や専攻科にせよ、経済学研究科にせよ、また今年度から新たに開設されたデータサイエンス研究科にせよ、それぞれの分野での研究は、現実社会の状況を見据えつつ研究を行うことが求められます。最近我が国のノーベル賞受賞者の先生方が異口同音に述べられることは、基礎研究の重要性です。注意しないといけないのは、ここでいう「基礎研究」は現実の問題と隔絶して行われてきたものではなくて、例えば本庶先生にしろ大隅先生にしろ、また山中先生にしろ、それぞれの基礎研究が、長い目で見て、人の病気を治す、人の生活を豊かで幸福なものにすることにつながることを思い浮かべて、そのためには基礎がきちんと構築されていなければ、砂上の楼閣にすぎない、ということを喝破されているのです。

 翻って、現代社会は、第四次産業革命やSociety5.0といわれます。そこではビッグデータ、AI、ロボット、IoTが社会の中核的要素となります。これはとりわけデータサイエンス研究科に直接かかわることですが、同時に教育学研究科でも、初等教育におけるプログラミングやデータに基づく教育、子どもたちにとってのデータの持つ知的魅力へのイニシエーションに直接かかわりますし、経済学研究科においても言わずもがなで、現実の経済発展の基盤にビッグデータがあることから、経済学や経営学のいかなる研究も現代社会の特徴と直接に繋がっています。

 この第四次産業革命は、蒸気機関の発明により機械による生産をもたらした第一次産業革命、電気エネルギーの利用とオートメーションによる大量生産の第二次産業革命、コンピューターとインターネットの開発による第三次産業革命の、過去の三つの革命と大きく異なります。第四次産業革命は、第三次産業革命で登場したデジタル・テクノロジーが、これまでと比較にならないほどの高度化、高速化、統合化を推進しています。それによってこれまでになかった物や技術が可能になってきました。単にモノだけではなく、生産・流通・消費のシステムも変容して来ました。立体プリンティングやVirtual Realityは、以前はSFの世界でした。医学・生命科学の分野でもゲノム編集やiPS細胞を導き出し、また超微細なナノテクノロジ―や新・再生エネルギーなどの分野でも新たな変容が起こっています。しかもそれらは、個別に動くのではなく、統合的・融合的に作用しあい、その上、その相互作用と統合が驚異的な速度で行われつつあります。こうして、第四次産業革命により、新しい社会のシステムが出来上がりつつあるのです。

 ちょうどその時に、滋賀大学大学院に入学・進学される皆さんがこれから行われる研究は、教育学、経済学、そしてとりわけデータサイエンスの分野であるがゆえに、皆さんが想像している以上に重要であり、科学的、社会的、経済的に極めて大きく高い価値を持つものです。皆さん一人一人の研究が、そして一つ一つの研究要素が、すぐにも、または必ずや近い将来に、社会の、そしてその中の一人一人の人間の豊かな生活につながることは間違いありません。皆さんには、それぞれの研究がそうして人々の幸福につながることを常に意識しておいていただきたいのです。

 時代は平成から令和に移ります。「内平らかにして、外成る」時代から「初春の令月にして、気淑く和らぐ」時代へ。この新しい展開の時代に、皆さんの研究が春の桜の花のように、大きく開き、春の日の光にきらきら輝くことを期待して、式辞といたします。

 

平成31年4月4日

滋賀大学長 位田 隆一