挨拶をする位田学長

 新年おめでとうございます。

 2017年は滋賀大学にとって新しい飛躍の年です。日本初のデータサイエンス学部の発足は、68年の本学の歴史の中で初めての新学部です。また教職大学院(教育学研究科高度教職実践専攻)も開設されます。滋賀大学のこれまでの滋賀師範と彦根高商の長い歴史に基づく伝統の上に、これまでにない新しい一歩を踏み出します。

 2016年は、世界が、そして日本が、さまざまな大きな変動を来した年でした。世界を見ると、イスラム過激派ISISによる攻撃は従来の国家の枠を揺るがし、パリ、イスタンブール、ベルリンなど、世界の大都市を不安に陥れました。また、北朝鮮の水爆実験やミサイル発射実験、大量のシリア難民の発生、南シナ海をめぐる緊張、英国のEU離脱、トランプ候補の選出など枚挙にいとまがありません。我が国に目を向ければ、熊本地震、日銀マイナス金利、天皇退位問題などがあげられます。日本の安全保障問題もこれに入るでしょう。科学技術においても、例えばAIやロボットの発達による自動運転自動車やAI囲碁などのこれまでにない発展があります。私のかかわる生命倫理分野でも、ヒトiPS細胞から人を作る可能性の現実化、受精卵へのゲノム編集その他、様々な研究成果が現れました。これらは、我々がこれまで予想していなかったような要素を含んでいます。そして、我々の生活を根本的に変える可能性を持っています。

 このように我々を取り巻く世界のみでなく、大学も大きな変動の波の中にあります。足掛け13年前の法人化以降、国立大学は大きな波の中にたゆとう小舟のような状況にあります。この9か月、滋賀大学の財政状況の厳しさは年々増してきています。さらに、人文社会系の再編・廃止論議や教育系の縮小・専門化傾向など、滋賀大学自体の抱える状況も予断を許しません。

 はっきりしているのは、これまでの考え方や価値観、概念や方法では十分に対応できないということです。そこでは、発想の転換が必要であり、新しい姿勢や方法が不可欠です。World Economic Forumの報告でも、近い将来の2020年に求められるスキルは、複雑な問題の解決力、批判的思考、そして創造力があげられています。

 大学にも同じことが言えます。大学はこれまで社会とすこし距離を置いた存在でした。大学における研究・教育は、社会の中の知的活動であり、社会から隔絶した存在ではありえません。したがって、われわれは、これまでとは異なる新しい発想と姿勢をもって、大学と社会の密接な関係を念頭に研究教育を進めていくことが必要です。

 私は学長としてこの9か月の間に、滋賀大学に新しい発想と姿勢をもたらすべく、大学の環境や雰囲気を変える方向でさまざまに発言し、相談し、判断し、決定し、指示してきました。初めての新年を迎えるにあたって、あらためて滋賀大学の方向を述べておきたいと思います。

 学長就任にあたって、新しい滋賀大学の目標として、そこで勉強したい、そこで、研究教育したい、そこで働きたい「キラキラかがやく滋賀大学」への脱皮を提唱しました。そして、一人一人が、伝統を誇りにしつつ、強い意欲と気概をもつイノベーターとして、時代を先取りした教育研究を推し進めることを呼びかけました。

 先に述べたように、国立大学が大きな変動の中に置かれています。特に財政状況は厳しいままであり、その結果、例えば大型外部資金の獲得競争に見られるように、国立大学間や国立大学と私立大学の競争も強まっています。滋賀大学においても、厳しい財政状況に鑑みれば、人事計画の見直しや組織・制度の改編、経費配分の再検討や業務のスリム化・効率化など、抜本的改革が必要になります。

 他方で、第3中期の目標や計画は達成していかなければなりません。しかし、現下の財政状況やこれまでの滋賀大学の運営の中で、個々の項目についてその実現に大きな困難が考えられるため、以下の7点でさらに改良を重ねていきます。第1に、第3中期に想定される厳しい財政状況を反映し、データサイエンス学部のみならず滋賀大学全体を発展させるような対策を考えます。第2に、グローバル化の目標に対して効果的戦略を立てます。とくに教育環境の整備、英語による授業の充実、適切な人員配置等があります。第3に、研究推進機構の設置と相まって、斬新な共同研究体制の構築に向けた試みを始めます。これにより研究の分野や範囲が広がり、また海外も含む学外の研究者との連携を可能にして、研究環境を改善します。第4に、効果的かつ効率的な全学人事計画策定のため、外部資金の利活用等による対応を試みます。第5に、教員の負担増に対して、財政的裏打ちや教員評価の反映を取り入れることを検討します。第6に、教・教分離計画を基礎に、漸進的に制度・組織の改善・改良に努めます。第7に、職員組織についても、職員の負担増に対する対応策を検討します。

 以上のことを念頭において、以下の5点について、具体的な方向を述べておきます。

 まず、「社会の中の大学」として、現代社会に対応した新しい人材育成教育を進めます。そのためには、すでに述べたように、研究や教育の状況や成果を社会に対してアピールし、社会の理解と支援を得て、大学の発展を図ります。幸いデータサイエンス学部はまさに現代日本社会の必要とする分野であり、また社会もこれに期待しています。現在は学部発足の準備段階ですが、かなりの成功を収めているといえます。就中データサイエンス教育拠点に旧帝大群と並び滋賀大が選ばれたのは快挙です。4月から新入生も入学してきます。彼らは特に理系の思考能力の高い学生も多いと考えられ、新しい空気が入ってきます。それが大学全体に新しいエネルギーを与えてくれることを期待します。

 第2に、「知の拠点」としての滋賀大学は、研究する大学でなければなりません。質の高い教育のためにも研究は不可欠です。したがって、教育負担が過重になる場合には、カリキュラムの再編成など、それを減らす工夫が必要になります。様々な制限はありますが、教育、経済両学部にはこの点での進捗を期待します。また、「課題解決型・提言型研究」や「共同研究」も進展させていくべきところです。この点については、教員からの研究計画プロポーザルに基づきレビューしたうえでの支援重点化を検討し、実施する予定です。また科研費獲得拡大を目指して、応募数、応募額、種目のアップの方策を講じます。具体的には、科研費獲得者への研究費増額など、採択率アップへの方策を考えます。

 第3に、地域からグローバルに発展する大学に展開するために、グローバル化に学長裁量経費を重点配分します。教職員等の人員強化、留学生(インとアウト)の拡大、英語教育の充実を進めます。またそれらを通じて、海外大学との連携協定の拡大を図ります。

 第4に、事務組織の環境改善を進めます。そのために、事務手続きの簡素化や教員の組織も含む組織全体のスリム化を図り、事務作業量の2割程度削減の方向での検討を進めます。

 第5に、社会との連携を進めるために、広報戦略を策定し、広報の方法等も含めて新しい滋賀大学の広報体制を構築して、広報活動を強化します。それとともに、社会連携活動を全学の活動として強化し支援します。

 その他にも多くの行うべき改革や支援等がありますが、これまでの体制や方法、慣行にとどまることなく、臨機応変に対応して大学のイノベーションを進めていきます。

 「そこで学びたい、そこで研究したい、そこで働きたい大学」として、琵琶湖の水面に朝日がきらきら輝くように、滋賀大学をきらきら輝かせていくことを改めて決意します。

2017年1月5日
滋賀大学長
位田 隆一