滋賀には「海」はないが、日本最大の「琵琶湖」がある。都から近い淡水の海という意味で「ちかつあふみ」(近淡海)、万葉集では「あふみのみ」(淡海の海)と呼ぶ。琵琶湖は大きいだけではない。古代湖で、50種類以上の固有生物が生息する。湿地の生態系保存のための「ラムサール条約」※に登録された、生物圏としても世界的に著名な湖である。滋賀県では琵琶湖を「Mother Lake 母なる湖」と呼んでいる。滋賀大学は、この豊かな自然「琵琶湖」を背景に、湖東彦根に経済学部を、大津石山に教育学部を擁して、3年後には大学設立70周年を迎えることになる。

 この100年近くの間に、日本は、そして世界は大きく変容を遂げた。18世紀が産業革命の世紀と呼ばれたのに対して、20世紀は科学技術革命の世紀と称された。私たちはそれぞれの革命の恩恵を受け、今に至っている。そうした変容の中で、大学は何を目指すのか。大学を取り巻く社会が変容する中で、大学はどうあるべきなのかが、いま問われている。長い伝統と優秀な教職員・学生を擁する滋賀大学も例外ではない。これまでの伝統を誇りにし、礎としつつも、いま私たちの置かれた社会の中で大学の新しい役割と責務を考えなければならない。学問には日々新しい展開がなければ進歩はない。大学もまた毎年新しい学生諸君が入学し、新しく卒業生が社会に出ていく。そこに前進がなければ、大学の価値はない。大学とは、単に深い知識を得るところではないことは入学式で述べた。「考える場」である。今までにない新しい考えを模索し、新しい解決を見出し、新しいものを発見・発明するところである。

 では、滋賀大学はどこに向かおうとしているのか。私たちはその答えを世に問おうとしている。その一端が、データサイエンス学部であり、教職大学院(高度教職実践専攻)である。それらは、社会の動きや変化を、学問研究として、また教育として、大学が主体的に取り入れた構想である。今年度中にこれらの二つは文部科学省による審査が行われ、来年4月にはそれぞれ彦根と石山にその姿を見せ、活躍が始まる。それは、既存の2学部にとっても、新しい可能性を開くことである。教育学部と経済学部を縦軸に、データサイエンス学部を横軸にした逆Π(パイ)型の教育研究体制により、これまでになかった主たる専門と副たる能力を兼ね備えたΓ(ガンマ)型人材の育成が、また学校教育の高度なプロフェッショナルの養成によりわが国の「人づくり」の根幹の強化が、目指される。

 その主役は在学生と新入生、そして将来滋賀大学に入学する学生たちである。学生諸君が、こうした構想を基盤に、自分たちの滋賀大学をどんな大学にしたいか、どんな大学であって欲しいか、を考えながら、「滋賀大学の未来」という壮大なドラマを創るのだ。

※「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(1971年2月2日制定)

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