2004年度に、すべての国立大学が国立大学法人に改組されました。以来10年を経た今、国立大学法人の在り方が問われています。現在、大学生・大学院生の80%が私立大学に在籍していますが、国の高等教育関連予算の80%が国公立大学に支給されています。こうした現状を見て私立大学側が「不公平」との印象を抱くのは、宜なるかなとうなずけます。

 実際、少子化のせいで、大手私大を別にすれば、多くの私立大学が経営難にあえいでいます。私立大学への志願者を増やし、私学経営を立ち直らせるために「国立大学の定員を減らし、国のお金をもっと私大に」というのが、私立大学の本音なのです。そこで文部科学省は、国立大学法人の各学部に対し「ミッションの再定義」、すなわち「強み」と「特色」を自己申告
することを求め、国立大学法人の「仕分け」を行おうとしています。

 滋賀大学教育学部は、滋賀県が近畿地方で唯一の人口増加県であるため、2012年度の教員採用率が全国で第3位だったことが幸いして、教員養成課程の定員の大幅削減の対象とはなりませんでしたが、教職大学院をできるだけ早く設置するようにとの勧告を受けました。文科省の真意は、次の通りだと私は推察いたします。

 教育学部の教員の多くは小中高校での教職経験を持っていないため、学生諸君は学校経営やイジメ対策などを弁えぬまま学校教諭となる。こうした現状は望ましくない。学校教諭になる前、または教諭になってから、将来のスクールリーダーになるべく、教職大学院で学校経営等の実践的技量を身に付けるべきである。教員養成に関する文科省の見解にも一理ありと受け止め、早速、教職大学院の創設と既存の教育学研究科再編へ向けての全学的取り組みを開始いたしました。

 経済学部は、カリキュラムの充実、就職率の高さなどを「強み」として挙げ、近江商人の研究、環境・リスクの研究を「特色」として挙げました。ほとんどの大手私大が大規模な経済学部と経営(商)学部を抱えています。また、西には京大、阪大、神戸大、東には名大といった研究者養成を「強み」とする国立大学法人経済学部があります。夜間主を含めて550名の大規模な学生定員を擁する滋賀大学経済学部を、周辺の大手国公私立大と差別化するに足るだけの「強み」と「特色」をあぶりだす営みは容易ではありません。

 両学部の学生諸君の一人ひとりが、授業料の過半を国の税金で賄われているという負い目を自覚し、それに報いるべく勉学にいそしみ、世のため人のために尽くせる人材として育っていただくことを、本学学長として願ってやみません。