2月8日、位田学長は、長崎大学熱帯医学研究所 (熱帯病・新興感染症制御グローバルリーダー育成プログラム主催)で、教員や大学院生を対象に「Contemporary Issues of Global Bioethics –Pandemic of Ebola and Genome Editing-」(グローバル生命倫理の現代的課題―エボラ・パンデミックとゲノム編集―)と題する英語での招待講演を行いました。アフリカやアジアなどの多くの留学生が出席しました。

 位田学長は、ユネスコ国際生命倫理委員会委員長を務めた経験もあり、生命倫理分野で世界的に著名で、エボラウイルス疾患の世界的流行に際してはWHO(世界保健機関)の倫理専門家として活躍しました。

 講演は、まず、なぜいま生命倫理が問題になるのか、を明らかにした後、生命倫理の基本概念を説明し、人間の尊厳と人権の尊重の上に医学研究とその応用があるべきことを述べました。そして、世界的な生命倫理規範の例として、2005年ユネスコ「生命倫理と人権に関する世界宣言」と世界医師会(WMA)「ヘルシンキ宣言(2013年フォルタ・レザ改正)」を取り上げ、生命倫理の基本原則を紹介しました。

 次いで、これらの生命倫理の基本原則が、世界的感染症や最先端科学技術でどのように適用されるか、エボラウイルス疾患(EVD)の世界的流行(パンデミック)とゲノム編集を例にとりあげました。まず、エボラのケースでは、インフォームド・コンセントやプライバシーなどの個人の自律権や利益はエボラ感染防止策による社会的正義と連携が優先されざるを得ないこと、感染症のアウトブレイクを防ぐために一連の考慮要素が必須であること、未承認の治療法の使用の許容性と条件、WHOによる新しい未承認治療の実験的使用(MEURI)の考え方など、エボラ対策に伴う倫理上のジレンマを解説。決定的な解決策はないが、緊急時には関連する倫理課題を考慮したうえで、結果が最も重要である、と論を展開しました。

 また、ゲノム編集については、その技術の内容とともに様々な利用可能性を説明した後、この技術が内包する、人間の欲望と自由に対する社会の倫理的制約、人間の尊厳や人とは何か、疾病の撲滅と種としてのヒトの将来、などの生命倫理上の困難な課題を明らかにしました。そして、「自然と人工の対比の中で、人間はどこまで進むのか」という基本命題を提示した上で、「生命倫理とは、人類発展のための科学と技術にとって基本となる社会規範」であるが、いったい「人類の発展とは何だろうか」と学生に問いかけ、特別講演を締めくくりました。

 その後の質疑応答では、「それぞれの国やコミュニティが独自の伝統や価値観を持っており、生命倫理では、その国やコミュニティの意思決定や価値判断が重要」との立場から、これまでのユネスコやWHOなどの国際機関での経験も踏まえて回答や議論が行われました。参加した教員や外国人が多数を占めた学生たちからは、生命倫理の現代的課題のみならず、その文脈における国際機関のあり方についても貴重な考え方に触れることができた、との声が聞かれました。

森田公一教授の紹介

講師紹介をされる
森田公一教授(長崎大学 熱帯医学研究所前所長)
と位田学長(右)

位田学長がスクリーンで講演している様子

位田学長講演

質疑応答の様子

質疑応答

∗江戸時代、海外と交易のあった長崎に医学伝習所が設置され、日本の死亡原因の多くを占めた感染症研究に日本で初めての取組が始まりました。この使命を受け継ぎ、長崎大学に「風土病研究所」が設置され、現在は「熱帯医学研究所」に改組され感染症研究の世界的拠点となっています。そこでは、新興再興感染症に関するCOEプログラム、リーディング大学院プログラムによりアフリカを中心に海外から多くの留学生を受け入れ、当該分野のグローバルリーダーを育成しています。ケニアの海外研究拠点は、国内大学ではアフリカ最大規模となっています。

 

◆長崎大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程教育リーディングプログラム
熱帯病・新興感染症制御グローバルリーダー育成プログラム