本館所蔵の「コンドルセ夫人訳 仏語版スミス『道徳感情論』初版(1798)」に関する貴重書を展示していますので、ぜひご覧下さい。
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展示コーナー

コンドルセ夫人訳仏語版スミス『道徳感情論』初版(1798)

本図書館所蔵の経済学の古典(13)

コンドルセ夫人訳 仏語版スミス『道徳感情論』初版(1798)

 経済学の父アダム・スミス(Adam Smith, 1723⁻1790)の最初の著作は、『道徳感情論』(初版1759年)である。この本でスミスが取り組んだテーマは、利己的な

個人が、自由な社会の中で、いかに平和的に共存可能かということであった。「共感」と「公平な観察者」の概念を用いて、人々の自己規制による社会秩序の成立を論

じた本書は、国際的な評価を得て、多くの思想家たちに影響を与えた。
 1764年から貴族の家庭教師として大陸を旅行したスミスは、フランスの哲学者や経済学者たちと交流したが、コンドルセ(Marie Jean Antoine Nicolas de Caritat,

marquis de Condorcet, 1743-1794)は、このときスミスに注目し、後に夫人に、本書を翻訳するように勧めたといわれる。
 知識人として知られたコンドルセ夫人(Sophie de Grouchy, Marquise de Condorcet) は、当時のフランスには珍しく、英語に堪能であった。彼女は『道徳感情論』

の翻訳に、スミスの「共感」概念を批判する「書簡」を付して出版した。フランス革命による社会の大変動を経て、スミスを評価しつつもその理論をそのまま受け入れ

るわけにはいかなかった当時のフランスの思想的状況が、垣間見られて興味深い。

 今回は、スミスの主著『国富論』の詩人ルシェ(Jean-Antoine Roucher, 1745⁻94)による仏語訳初版(1790)も同時に展示する。詩人ルシェは、本翻訳を刊行後、ロ

ベスピエールにより投獄され、獄中で10ヶ月間、改訳にとりくみ、1794年7月にギロチンにかけられる直前、索引をともなった改訳第2版を完成させたといわれている。

(1)Théorie des sentimens moraux, ou, Essai analytique sur les principes des jugemens que portent naturellement les hommes, d’abord

sur les actions des autres, et ensuite sur leurs propres actions : suivi d’une dissertation sur l’origine des langues par Adam Smith ; traduit de

l’anglais sur la septième et dernière édition, par S. Grouchy Ve Condorcet. Elle y a joint huit lettres sur la sympathie . Paris : Chez F. Buisson,

1798

(2)Recherches sur la Nature et les Causes de la Richesse des Nations. Traduites de l’Anglois de M.Smith, sur la quatrième, par M.Roucher.

Paris : chez Buisson, 1790.

(解説:経済学部教授 御崎加代子)