平成26年7月18日(金)長浜市曳山博物館において、第9回おうみ学術出版懇話会を開催しました。

 この懇談会は、本学ならびに連携大学等による学術出版会の開設に向け、学術成果出版を念頭においた研究報告と意見交換の場として開催するものです。

 当日は、滋賀県立大学の市川秀之氏(人間文化学部教授)から「長浜曳山祭の戦後史」、武田俊輔氏(同学部講師)から「若衆組織による祭礼の継承とその現状 : 若衆としての参与観察調査に基づいて」と題して報告がありました。

 市川氏からは、長浜曳山祭の歴史や現在までの変化の様子が報告され、時代の変化によってどのような問題点が浮かび上がっているかについて語られました。戦後は、とくに資金・人的資源の不足が大きな課題となっていることが挙げられ、2012年には山曳きの人員不足については、滋賀県立大学学生を中心とした本格的なボランティア参加体制を導入したこと、少子高齢化に伴い困難となっている囃子(しゃぎり)の伝統を継承するための工夫等が報告されました。また女性は山車にさわれないというしきたりのため、祭りへの参加が難しいとされていますが、今後、旧来の枠で数えうる人的資源がさらに限られると予想される点や、現代世界のジェンダー観の変容も踏まえながら、女性が祭りに加わることの可能性について、話題が広がりました。さらに、長浜曳山祭について、京都の祇園祭を含む他31件の祭りと併せて、ユネスコ世界無形遺産への登録の動きが出てきているという最新情報も提供されました。

 武田氏からは、実際に「若衆」の一員として役者方を務められた体験をもとに、長浜曳山祭の内側からの具体的な報告がありました。役者方の役割は、稽古期間中から祭り当日に至るまで、子ども役者の世話を全面的に行うことだそうです。役者の成長を一番近くで見守れる一方で、役者同志の人間関係への配慮やストレスの軽減に努めるほか、自らの狂言の理解を深めることをはじめ、若衆としてのレベルアップが求められることも数多くあるとのこと。祭りを創り出す側の楽しさや大変さがじかに伝わってくるひとときとなりました。また、山組のある土地の人々やその縁者は祭りに参加できるものの、それ以外からの新規参入者には大変ハードルが高いとされるところへ、武田氏は新たに若衆に参加されたという点でもいろいろと困難があったそうです。ただ、本祭直前の裸参りの行事によって一体感が生まれ、強い仲間意識が芽生えたとのこと、裸参りが新規参入にはたす機能についての社会学者らしい考えを開陳されました。

 懇話会には、本学出版懇話会企画運営作業部会のメンバーも多く出席、当日は、米原の曳山祭が、主に参加者が楽しむことに重点をおいた伸び伸びとした祭りであるのに対し、長浜の曳山祭はより観客を意識した緊張感を持った祭りであるという、米原の曳山祭との相違点の指摘、また両氏は今後、竜王町苗村神社式年大祭を調査予定とのこと、滋賀のお祭りをシリーズとして出版してはどうかといった案も浮上しました。また、子どもに「良い」役が当たるかどうかでその後、役者の家同士に深い確執ができることもあるという興味深い話題も飛び出し、さらには、役者を経験した子どもが、その後の人生において、その経験がどのような意味を持ち続けるのか等、“役者のその後”を調査してみるのも興味深いのではないかという意見も出たりと、学術出版会の初期活動のありかたや将来展望について、熱い対話が広がることとなりました。

 

報告を行われる市川さん(左)と武田さん(右)

報告を行われる市川さん(左)と武田さん(右)

長浜市曳山博物館での懇話会の様子

長浜市曳山博物館での懇話会の様子