平成26年5月21日(水)「甲南情報交流センター・忍の里プララ」で、第8回おうみ学術出版懇話会を開催しました。
 この会は、本学ならびに連携大学等による学術出版会の開設に向け、学術成果出版を念頭においた研究報告と意見交換のために開催しています。

 当日は、滋賀医科大学医学部精神科の今井眞氏から「わさびの香りを発する静かな報知器: イグノーベル賞受賞」と題して報告がありました。聴覚障害をもつ多くの方は、睡眠中火災等が発生した場合、警報音に気付かず逃げ遅れるのではないかという不安を抱いています。そこで開発されたのが、緊急時に香りを発して異変を伝える警報装置です。報告のなかでは、睡眠から目覚めるための香りとして、“腐った玉ねぎ”や“使用済みの靴下”など様々な香りが試された結果、最終的に“わさび”が選ばれた経緯や(わさび香は嗅覚よりも鼻腔の痛覚を刺激)、実際にわさびの香りスプレーを使って深夜に実証試験を繰り返したことなど、装置の完成に至る〝香り高い〟逸話を語っていただきました。

 わさびの香りが鼻に到達してから睡眠者が目覚めて次の行動を起こすまでの平均時間は、耳の聞こえない人で約20秒、聞こえる人で約45秒という試験結果をもとに、聾学校や公共宿泊施設でこの装置が実際に利用されるようになったとのこと。一方で難聴者の家庭への普及は、高価格のために進んでいないのが現状のようです。

傑作報知器を手に語る今井氏

“傑作報知器”を手に語る今井氏

 この「わさび報知器」の開発は、NHKや英国BBC等のメディアで報道され広く注目されるようになり、2011年9月には“人を笑わせ、そして考えさせた”ユニークな研究に対して贈られるイグノーベル賞が贈られました。懇話会では、報知器とわさびという意外な組み合わせの背景に、甲賀の忍者の創薬やおうみの障害福祉の歴史があることを語りあい、聴覚障害の方が安眠できる環境づくりという課題をあらためて考えました。

 懇話会には、本学出版懇話会企画運営作業部会のメンバーの他、滋賀県立大学より川口逸司副理事長、布野修司理事・副学長、県立大津高等学校より中山敬一氏も出席、参加者もわさびスプレーを実体験したり、報知器以外にも目覚まし時計や運転中・授業中の居眠り防止に活用するアイディアも飛び出したりと笑いの多い会となりました。また、終盤では、製品の販売促進のキャッチコピーが話題となり、科学的な知見や技術上の工夫が単なる〝ものづくり〟にとどまらず、これからの社会にどのような〝ことづくり〟をもたらすのかを考えることの大切さを確認。学術出版会設立に向け新たな深みを感じさせるひとときでした。

懇話会風景

懇話会風景

実証試験の動画に見入る

実証試験の動画に見入る