2016年度 本学教員が推薦する図書等を紹介します。(並びは推薦順)
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タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
東京消滅 : 介護破綻と地方移住 増田 寛也 中央公論新社 2015 得田 雅章
現代の学校を読み解く : 学校の現在地と教育の未来 末松 裕基 春風社 2016 藤村 祐子
戻り川心中 : 傑作推理小説 連城 三紀彦 講談社 2006 穂積 俊輔
東京湾諸島 加藤 庸二 駒草出版 2016 得田 雅章

①『東京消滅 : 介護破綻と地方移住』 増田 寛也 編著

得田 雅章(経済学部経済学科)

 前著『地方消滅』では日本全体の人口減少・少子化問題を提起したのに対し、本書では東京圏を主、地方を従としてフィーチャーする。執筆は、首都圏問題検討分科会(日本創成会議)のメンバーが執筆した論文を、編者がわかりやすくまとめるという論文集スタイルである。終盤にはそうしたメンバーとの対談集も掲載されている。

 地方の少子高齢化問題がクローズアップされる中、本書冒頭(第1・2章)では、東京圏の実態がさらに酷い状況であり、対応する介護保険制度が危機的状況に陥ると警鐘を鳴らす。ただし、実態としての統計データの羅列が目立ち、研究ではない教養書(新書)としては、いささか読み進めるのに我慢するところだ。

 最も印象に残ったのは、高齢者地方移住策の基礎資料となる「地方の医療・介護余力評価」(第4章)だ。この非観測変数を定量化し、試算といえど全国41の高齢者受入余力地域を提示した貢献は、本書の意義として小さくない。これら地域の多くは衰退に苛まれているが、移住を起爆剤として明るい未来像が記されていたことには安心感を覚えた。

 折しも総人口が初のマイナスとなったことが発表されたばかりだ(10/26発表の国勢調査)。人口動態がダイナミックに変わる中、昨日のような明日は来ない。同様に、大学教育やアカデミックな現場では、今後ますます「人口分析」の重要性が増すものと考えられる。学生諸君には本書に触れて、ぜひそうした意識を有してほしい。

 編者は自ずと知れた都知事選立候補者であった増田氏である。日本創成会議を座長として取り仕切ってこられた実績・見識が、都知事として活かされたらどうなっていたか。豊洲市場移転やオリンピック等、せいぜい数年先のイベントに注力されている現都知事とはまた異なった、「2040年」の超高齢化時代を見据えた都政を夢想してしまう。

東京消滅 : 介護破綻と地方移住

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 081||C 64||2355 015003212
教育文庫新書 081||C 64||2355 115001411

②『現代の学校を読み解く : 学校の現在地と教育の未来』 末松 裕基 編著

藤村 祐子(教育学部 学校教育)

 この本は、「今学校で何が起きているのか、教育は社会を照らす希望となるのか・・・」というラディカルな問いをもとに、執筆者10人らが、現代の学校の実態や抱える問題点を描き、考える視点を提示した上で、教育の未来について描いたものである。また、本書は、「学校の無い世界」と「学校まみれの社会」の現状から学校を望ましい社会を作る道具として生かすためにどのような可能性があるのか述べられていたり、熱意や志がないなら教員になるなと述べる多彩な経歴をもつ執筆者が、自身の理念のもとゼロから「学校づくり」を行った自身の実践から学校のあり方について提示するなど、多彩な章で構成されている。
 読み終わった後、これまでの教育観や学校観を強く揺さぶられる一冊であろう。ぜひ、読んでいただきたい。

 

現代の学校を読み解く : 学校の現在地と教育の未来

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 370.4||Su 17 016002067
教育教官推薦図書 推薦図書 370.4||Su 17 116000714

③『戻り川心中 : 傑作推理小説』 連城 三紀彦 著

穂積 俊輔(教育学部 情報教育)

 私たちは常に「すれ違い」を経験しています。そのすれ違いが人との物理的なすれ違いならば何事もなく時は過ぎ去るでしょう。しかし、考えのすれ違いならば、それはお互いが破滅へと突き進む一歩を踏み出しているのかもしれません。なぜすれ違うのか、それは、人は知らず知らずのうちに何かに思い込みをもってしまうからでしょう。そのために、あなたの考えたようには相手は考えてくれないということになります。連城三紀彦のミステリー作品はすべてそのような読者の「思い込み」を見透かして、私たちにひとつひとつの出来事には別の意味があったことを教えてくれます。事実はだれにとってもただひとつなのに、その意味は見方によって違う色を帯びてくる。これはまさしく科学をする者にとっての警告そのものです。同じ事実でも違う角度から見たらどんな景色が見えるのか、いや、もっと違う見方はできないものか。視点を変えてこそ真実は現れるでしょう。これこそ科学の基本であり、そのことで科学を志した学生時代の私は連城三紀彦の作品に惹(ひ)かれたのです。そもそも「反対の理屈のない理屈はない」ことはギリシャの昔からピュロンが言っているではありませんか。まあ、この警句の「理屈」は「見方」に変えないといけませんが。

 「戻り川心中」には表題を含む5編の珠玉のミステリーが収められています。ひとつひとつの出来事がのちに別の色を纏(まと)って再びあなたの目の前に現れてくるでしょう。作者はミステリーに恋愛という味付けをして「恋愛ミステリー」というジャンルを切り拓(ひら)きました。どの作品も雨降り映画のような古色蒼然(こしょくそうぜん)とした雰囲気の中で話は淡々と進んでいきます。昭和生まれの私でもなぜか大正ロマンなるものに触れた気にさせる作者の筆致に感嘆せずにはいられません。「すれ違い」が脳裏をかすめたら、それはあなたのミステリー物語がいままさに始まろうとしているのかもしれません。

 

戻り川心中 : 傑作推理小説

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 913.6||R 27 016002068
教育教官推薦図書 推薦図書 913.6||R 27 116000715

④『東京湾諸島 』 加藤 庸二 著

得田 雅章(経済学部経済学科)

 東京湾には70もの島がある。

 少し考えてみれば、それらは太古の昔からある自然島ではなく、人々の営みによって作られた人工島であることに気づくだろう。実用としての人工島は用途こそ大事であり、完成し供与される段になると、島名の由来や築島の時代背景なんてものに関心が向くことはあまりない。公害やゴミ処理が絡んでいればなおさらである。しかし、筆者の名も無き島々(厳密には名はあるのだが)への取材力や時代背景分析には、単なる趣味や仕事を超えた“愛”を感じ、圧倒される。

 家康公の江戸入府以降、東京湾沿岸は日本の政治・経済の中心として常に注目を受けてきた。その時代毎に生じる様々な課題は、湾を埋め立て、人工島を整備することでクリアされてきた。特に、戦後の整備ラッシュは、高度経済成長と切っても切れない関係と言える。本書は単なるノンフィクションや紀行文の枠にとどまらず、地域経済の研究書として高い価値を有するといえる。

 筆者の45年におよぶ島研究から紡ぎ出される一文は、もはや物語となって心に沁みる。 卸売市場移転で何かと話題になっている築地・豊洲や、観光スポットであるお台場・TDR(東京ディズニーリゾート)敷地等も、これからは違った視点からみることができるだろう。読後の清々しさと、名も無き島々達への愛おしさが増し、かの地を訪れた際は蘊蓄を傾けたくなった。

 

東京湾諸島

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 558.5||Ka 86 016002270
教育教官推薦図書 推薦図書 558||Ka 86 116000769