2014年度 本学教員が推薦する図書等を紹介します。(並びは推薦順)
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タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
露出せよ、と現代文明は言う : 「心の闇」の喪失と精神分析 立木 康介 河出書房新社 2013 藤岡 俊博
ジョルジュ・エナン : 追放者の取り分 中田 健太郎 水声社 2013 藤岡 俊博
魂のレイヤー : 社会システムから心身問題へ 西川 アサキ 青土社 2014 藤岡 俊博
あしたのための銀行学2 政治vs経済 大庫 直樹 ファーストプレス 2013 菊池 健太郎
孤独な日銀 白川 浩道 講談社 2014 得田 雅章
経済学で現代社会を読む ロジャー・レロイ・ミラー
ダニエル・K・ベンジャミン
ダグラス・C・ノース
日本経済新聞出版社 1995 大川 良文
磁力と重力の発見 1~3 山本 義隆 みすず書房 2003 高橋 幸平

①『露出せよ、と現代文明は言う : 「心の闇」の喪失と精神分析』 立木 康介 著

②『ジョルジュ・エナン : 追放者の取り分』 中田 健太郎 著

③『魂のレイヤー : 社会システムから心身問題へ』 西川 アサキ 著

藤岡 俊博(経済学部社会システム学科)

  私たちは「書きたい」という欲望に取り憑かれている、と言えば、日々レポートや卒論の執筆に悩んでいる皆さんには奇妙に思われるかもしれません。ですが、そんな皆さんのなかには、卒論なんて書きたくないという思いをまさにtwitterやfacebookに書いているひともいるのではないでしょうか。どうして私たちには書きたいことや書きたくないこと、書けることや書けないこと、そして書かずにはいられないこと、などがあるのでしょうか。結局私たちの存在は「書く」という行為に貫かれているからではないでしょうか。ここでは書くことにまつわる最近の批評を三冊紹介します。
 書くことの役割の一つが、ほかのひとになにかを伝えることにあるのは明らかでしょう。隠れた罪を聖職者に打ち明ける告解や、秘めた思いを相手に伝える告白という「制度」のように、かつては口頭による伝達に特権的な意味が与えられていましたが、近年のメディアの発達は、私たちがあたかも喋っているかのように書くことを可能にしています。それとともに、数人程度の内輪に向けて自慢したつもりの悪事が全世界に拡散されて大騒ぎになる、といった悲惨な事例もあとをたちません。悪事を問題視しているわけではありません。そうではなく、そもそもなぜ私たちはなにかを暴露したいという欲望に駆られているのか、なぜ私たちは自分のことを隠すことができないのか、という問いの方がここでは重要です。①は精神分析を専門とする著者が最近の実例を取り上げながらこの問題に取り組んだ優れた現代文明批判です。
 「呟き」が文字でなされ、「悪口」が文字で掲示されるこの時代に、書くことは話すことに取って代わったどころか、むしろ反対に話すことに生息地を奪われ、そこに暮らす「文学」はいまや絶滅危惧種に指定されているようです。そのなかで「文学」の今後は、書くことという住処の再開発と新規開拓の成功如何にかかっているのかもしれません。気鋭のフランス文学研究者がエジプトの詩人を論じた②では、書くことをめぐる文学者の「古典的」な懊悩が透明な誠実さとともに語られ、砂漠を沃土に変えるような瑞々しさのなかで詩が躍動するさまが描かれます。最後に③は、人工知能の進化によって書くことさえも人間を必要としなくなる遠くない未来をまえに、「人間が書く」ということの臨界が多層的に実践されている美しくも危険な本です。
 コンピューターがベストセラーを書くまでにはまだ余裕がありそうですが、本を読むスピードはすでにかないません。眼についた本のメッセージを一つ一つ「既読」にしていきながら、少しでも多くの「未読」のメッセージに出会っていきたいと私自身思っています。

露出せよ、と現代文明は言う : 「心の闇」の喪失と精神分析

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 146.1||Ts 39 014002291
教育教官推薦図書 146.1||Ts 39 114000949

ジョルジュ・エナン : 追放者の取り分

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 951.7||N 43 014002292
教育教官推薦図書 951.7||N 43 114000950

魂のレイヤー : 社会システムから心身問題へ

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 114.2||N 83 014002293
教育教官推薦図書 114.2||N 83 114000951

『あしたのための銀行学2 政治vs経済』 大庫 直樹 著

菊池 健太郎(経済学部ファイナンス学科)

 本書は、日本の銀行を取り巻く諸課題を紹介し、それらを克服する手立てを考察しております。
 冒頭から、多くの読者の直感に反するであろう事実を突きつけます。まず、90年代以降、企業の営業利益と銀行借入残高の関係が負の相関を示しているという事実です。これは、営業利益が不冴えの企業ほど銀行借入が多いことを意味しており、銀行や預金者にとって健全な状態ではないと指摘します。また、「中小企業への貸し渋り」について、世間で言われているほど深刻な貸し渋りの状況にはないと、データを基に主張します。冒頭から、銀行に抱くイメージが揺さぶられる読者も多いかと思います。
 著者の問題意識は、「政治が、銀行の本来の機能を殺いでいないか?社会的厚生を損なう政策となっていないか?」という点にあります。1例として、2009年12月から2013年3月まで時限的に導入された「金融円滑化法」を取り上げております。同法によって、銀行がリスク負担を高めていた可能性や、貸出金利の体系が歪められていた可能性を指摘しております。目先、企業を利する政策にみえても、銀行の機能を阻害すれば、長い目では企業を利することにならない、との主張です。
 本書では、豊富な図表や数字をもとに、論が展開されております。鉛筆片手にそれらの図表や数字をなぞって、その含意を考えてみる、という読み方がお奨めです。現状の銀行業を巡る問題が明瞭になるに違いありません。
 そして、1銀行経営者、1政策立案者の視点で読んでみると、面白みが増すと思われます。著者は、現状の政策や銀行経営に関して様々な提案を行っております。著者の提案に対して、銀行経営者、もしくは、政策立案者の立場から、それらが実現可能かどうか、思いを巡らしてみてはいかがでしょうか。銀行経営者の視点に立つと、組織や人をどのように動かしていくか、借入先の企業との交渉をどのように進めていくのか、という問題を避けて通ることができないことに気づくはずです。政策立案者の視点に立つと、銀行の機能発揮と企業の商業活動の円滑化のバランスを維持する難しさを実感することになるかもしれません。このように、提案の実現には容易ならざる問題を乗り越えなければなりませんが、思案を巡らすうちに、著者の提案を超える素晴らしい策が思いつくかもしれません。
 このように、本書は、「実践」の難しさやそれを打破する醍醐味を感じさせてくれます。読了後は、知識習得以上の満足感が得られることでしょう。

あしたのための銀行学2 政治vs経済

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 338.5||O 25 014001124
教育開架 338.5||O 25 114000512

『孤独な日銀』 白川 浩道 著

得田 雅章(経済学部経済学科)

 表紙を一瞥した際、前日銀総裁が愚痴めいたものをまとめたのかなと思ったが、違った。同じ日銀出身者ではあるが、別人だった。でも、せっかく手に取ったのだし、読んでみようと思った。存外に面白かった。
 本書は金融政策やマクロ経済との関連に主眼を置いているのではなく、日銀そのものの組織を論じている点が特徴だ。「日銀マン」に焦点を当てているといってもよいだろう。テクノクラートとして一般人からは遠い存在とされる彼らが、組織や世間とどう向き合っているのか、実体験を含めたわかりやすい描写がなされていた。
 章が進むと、総裁や審議委員といった「上」の方々の話になっていく。そこで展開される議論が、日銀は独立というより孤独なのだということだ。日銀を擁護してくれる学者や金融機関幹部といったサポータの不存在を嘆いている(若干女々しい感じがするが)。それゆえ、筆者は積極的に独立性を主張するのではなく、むしろ政府との協約(アコード)を高めることで、「程よい独立性」を志向しているようだ。
 組織論がメインの本書であるが、最も興味を引いたのは政策を論じた最終章だった。そこでは、財政再建について消費税増税とからめて考察しているが、筆者の明晰な分析によっても暗い見通ししか出せていない。つまり、「物価安定下での国債元本削減(デフォルト)」か「強烈なインフレによる国債元本価値の削減」の2つの政策オプションだ。いずれにしても国民にとっては茨の道であり、ショック緩和のためにはどんな施策があり得るか、深く考えさせられた。

孤独な日銀

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館文庫新書 081||Ko 19||2242 013900581
教育文庫新書 081||Ko 19||2242 113001856

『経済学で現代社会を読む』 ロジャー・レロイ・ミラー、ダニエル・K・ベンジャミン、ダグラス・C・ノース著

大川 良文(経済学部経済学科)

 ミクロ経済学やマクロ経済学の講義と言えば、数式やグラフをごちゃごちゃ使ったやたら難しいものと思っている人は多いだろう。単位を取るために演習問題を解き、用語を暗記して、その結果一体何がわかるというのだろうか。今後何の役に立つというのだろうか。
 経済学とは、本来我々の住んでいる社会の仕組みに対する理解を深め、よりよい社会を作るための方策のあり方について考えるための道具だ。しかし、最近の経済学(特に近代経済学の)教育といえば、理論的手法やデータを扱った分析手法といったスキル教育に熱心であり、社会を理解する道具としての経済学を身につけさせることをおろそかにしているような気がする。
 そのような昨今読んでほしいのがこの本だ。この本はノーベル経済学賞受賞者であるダグラス・ノースを含む3人の経済学者によって書かれたテキストであり、実際の社会問題を経済学の視点でどのように読み解くことができるのかを示したものである。本書では、新薬認可、航空機の安全問題、経済発展、貧困問題、環境問題、農業保護、グローバリゼーションや犯罪、売春、麻薬、臓器売買の問題まで、32章に渡って実に多様な社会問題についての考察がなされている。数式やグラフは全く出てこないが、トレードオフ・インフレーション・限界コスト・機会費用・外部性・差別独占・寡占・価格弾力性・独占的競争・比較優位など、経済学を勉強していれば聞いたことがある用語が、この本ではちりばめられており、経済学を通じて自分が勉強したことが社会問題にどのように関連し、そしてどのような答えを提示してくれるのかを教えてくれる。すでにミクロ経済学やマクロ経済学の勉強を終えた人、現在学んでいる途中でその理解に四苦八苦している人、勉強しようかどうしようか悩んでいる人、すべての人にお薦めできる本です。

経済学で現代社会を読む

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 331.04||Ke 29 095001587
本館開架 331.04||Ke 29 002005790
教育開架 331.04||Ke 29 103002424

『磁力と重力の発見』 山本 義隆 著

高橋 幸平(教育学部)

 二歳の子どもと一緒に遊んでいると、磁石の振る舞いを彼女がじっと見つめていることに気がつく。幼い子どもには不思議なのだろう。いや大人だって、学校で物理を学んでいなければ磁石の「遠隔作用」をきっと不思議に思うはずだ。実際、近代にいたるまで、磁力や重力は、人知を超えた神秘的なものとして理解されていた。この本は、近代科学の成立という謎を解き明かす鍵として磁力と重力に注目し、古来、それらがいかに理解されて来たかを歴史的に追跡するものである。
 私がこの書を推薦する理由は二つある。
 第一にこの書は、近代科学による現象の脱神秘化という私たちのステレオタイプを覆してくれる。著者によると、悪魔や異端といったイメージのつきまとう中世の魔術思想は、16Cに入ると次第にその姿を変えていくという。たとえば、宗教改革を警戒するカトリック教会が異端に対する態度を硬化すると、魔術はその宗教的色彩を薄め、天上世界からの「隠れた力」を理解した上で自然を操作し、望むべき結果を得るための技法として民衆に受け入れられるようになった。磁力はその「隠れた力」の代表的なものとされていたわけだが、この「隠れた力」が数学的関数として表現されれば、これこそが近代科学の幕開けとなる。すなわち、近代科学の源流は脱宗教化した魔術にあったというのである。
 第二にこの本は、学術論文、特に人文科学系の論文では、何を書くかと同じくらい、いかに書くかが重要であることを思い出させてくれる。もちろん卒業論文では、事実とそれに基づく主張を淡々と記さなくてはならないというルールを意識するべきだが、実はそれは学術論文が感想文ではないことを自覚するための仮のルールに過ぎない。これは極端なルールであって、実際にはどんなに偉い研究者であっても「事実」をそのまま提示することなど原理的にできない。つまり、「事実」は表象されなければ共有されないが、表象とは少なからず解釈を伴うものなのである。本書は、客観的な文体でありながらノンフィクション小説のように構成が練られており、人文科学の研究の本質が、有限のデータをいかにも正しいと思わせるやり方で、しかも面白く語ることにあるということを再確認させてくれるのである。

古代・中世(磁力と重力の発見1)

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 423.02||Y 31||1 003004655
教育教官推薦図書 推薦図書 423||Y 31||1 114000436

ルネサンス(磁力と重力の発見2)

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 423.02||Y 31||2 003004656
教育教官推薦図書 推薦図書 423||Y 31||2 114000437

近代の始まり(磁力と重力の発見3)

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 423.02||Y 31||3 003004385
教育教官推薦図書 推薦図書 423||Y 31||3 114000438