2012年度 本学教職員が推薦する図書・映画等を紹介します。(並びは推薦者名の五十音順)
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タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
軍艦島 雜賀 雄二 淡交社 2003 内田 耕作
画文集 炭鉱に生きる〔新装版〕 山本 作兵衛 講談社 2011 内田 耕作
オチビサン 安野 モヨコ 朝日新聞出版 2008 内田 耕作
朝鮮通信使(岩波新書) 仲尾 宏 岩波書店 2007 中野 聰志
第2図書係補佐(幻冬舎よしもと文庫) 又吉 直樹 幻冬舎 2011 山田 康裕

『軍艦島』 雜賀 雄二著

内田 耕作(経済学部社会システム学科)

 軍艦島を知っていますか。長崎市の約20キロ沖合にある端島の別名で、軍艦に似ていることから名づけられた島です。良質の石炭が採れたことから発展し、1959(昭和34)年には周囲1キロ余りの小さな島に、高層アパート・病院・小中学校などが立ち並び、5200人余りの人が住むまでになりました。しかし、石炭産業の衰退により1974(昭和49)年1月に閉山され、4月に住民の離島が完了して無人島となりました。2009(平成21)年、35年ぶりに上陸が解禁され、軍艦島クルーズで多くの人が訪れ、有名になっています。
 推薦書は、1986(昭和61)年に刊行された『軍艦島-捨てられた島の風景』の絶版に伴い、収録作品を大幅に入れ替え、論文・資料等の内容を付け加えて、2003(平成元)年に「眠りの中の覚醒」という副題をつけて新たに出版されたものです(奥付ページの記述による)。
 推薦書は、写真と文からなっています。写真は、「無人島となって10年後、感傷とは無縁の新たな眼で撮り始めたもの」とされています(帯による)。文のうち、「追想・軍艦島」は、「閉山の前に一目その姿を見ておきたい」と思って、閉山の直前から住民の離島までの間、定期船で渡って見たことを日記風にまとめたものです。また、「眠りの中の覚醒」は、閉山10年後に軍艦島に渡った際、当初の感傷から島そのものを見ることへと、著者の眼が切り替わる様を記しています。巻末に掲載されている著者の文を読めば、写真が「よりよく」分かるという仕掛けです。しかし、それはおせっかいかもしれません。まず、読者がみな、自分の感性で写真そのものから直に感じ取ることが必要でしょう。著者が何を考えているかは、どうでもいいことかもしれません。
 江戸時代に石炭が発見されてからの端島の運命、そこでの生活のありさま、離島者のその後の生活に思いを馳せて下さい。私も軍艦島に行き、色々なことを考えてみたいと思っていますが、まだ実現していません。

軍艦島

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2003 教員推薦 748||Sa 17 012000625
教育開架 2009 748||Sa 17 112000555

『画文集 炭鉱に生きる〔新装版〕』 山本 作兵衛著

内田 耕作(経済学部社会システム学科)

 推薦書は、画文集であり、絵と文からなっています。新装版というのは、1967年に初版が発行され、その後2011年に書評・エッセーを追加して発行(復刻)されたことによります。四十数年も経て新装版が出されたのは、2011年に、著者が書いた「589点の絵画や108点の日記などがユネスコの認定する『世界記憶遺産』に日本国内から初めて登録された」(カバーによる)ことによります。
 著者は、1892(明治25)年生まれで、7歳のころから坑内で働き始め、以来五十数年、明治、大正、昭和と筑豊の炭鉱(ヤマ)を生き抜いてきました。60歳を過ぎた1958(昭和33)年ころから、「自分の子孫に描き残しておこうと思って」、絵を「脳裏に浮かぶまま、1枚また1枚と描き重ね」ていきました。日清・日露の戦争により筑豊の炭鉱が最も発展した明治末から大正初めまでを中心にしています。推薦書では、そういった絵が文とともに、「ヤマの生活」、「ヤマの米騒動」、「ヤマの労働」の3部構成で掲載されています。
 私は、学生の時に五木寛之『青春の門』を読んで以来、筑豊を一度訪ねてみたいと思っていました。念願が叶ったのは2011年春になってで、飯塚市にある旧芝居小屋「嘉穂劇場」で大衆演劇を見るためでした。その際、ボタ山を探しましたが、イメージするボタ山を見つけることはできませんでした。遺されたものは時の移ろいとともに変化・消失するということを実感しました。
 推薦書からは、「ピラミッド形をしたボタ山が炭鉱の象徴のようにいわれはじめたのは、昭和に入ってからのこと」であり、「赤煉瓦で巻いた煙突」が、「昔の大炭鉱の象徴」であることを知り、なるほどと思いました。理由は、推薦書を読んで、かつ自分で考えてみて下さい。
 推薦書には、失われたものが記録されています。著者の画文に直に接し、往時の炭鉱(ヤマ)の姿、著者の思いを皆さん自身で汲み取って下さい。

画文集 炭鉱に生きる〔新装版〕

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2011 教員推薦 567.09||Y 31 012000624
教育開架 2011 597.096||Y 31 112000575

『オチビサン』 安野 モヨコ著

内田 耕作(経済学部社会システム学科)

 推薦書は、朝日新聞連載の漫画を単行本化した4巻のうちの第1巻です。今も月曜日の朝刊に連載されており(現在の作者名は安野百葉子)、愛読者も多いかと思います。
 大学の図書館で漫画本を薦めるとは見識に欠けるとのご意見もあるでしょう。しかし探してみれば、本学の図書館にも漫画本が所蔵されています。要は内容でしょう。
 推薦書(1巻だけでなく4巻まで)の登場人物(?)は、主人公であり毎日あそびに大忙しの「オチビサン」、本を読むのが大好きでオチビサンをいつも見守っている親友の「ナゼニ」、ナゼニの親友でくいしんぼうの「パンくい」、伝統を重んじる「おじい」、いたずらっこの「ジャック」、新しい友だちの「シロッポイ」です(性格づけは、「帯」による)。推薦書は、これら登場人物(?)が織りなす、伝統に倣い自然に即した日常をほのぼのと描いています。第1巻では、卯月から弥生までの1年間の模様が描かれています。
 ある程度の年齢に達した読者は、かつて送った生活を思い出すでしょう。若い読者にとっては、スローな社会を考える一助となるでしょう。還暦を過ぎてしまった私には、懐かしさが沸いてきます。また定年後の第二の人生はこういった生活でありたいとつくづく感じています。
 なお、推薦書は、新聞連載の漫画の単行本化にとどまりません。新たに見開きで英訳版が掲載されています。英訳を見れば、このような日本語はこのように表現するのだと、フムフムと英語表現の勉強をすることができます。英訳はとてもためになりますが、それがなくても、推薦書は大学の図書館に所蔵し、皆さんに薦めるに十分に足る漫画本です。
 とりあえず第1巻のみ推薦をします。本書に関心を持った皆さんは、それほど高い価格ではないので、自前で第2巻以降を買って読んでいただければと願っています。心和むことが多いと思います。また考えさせられることがあると思います。

オチビサン

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 1巻 教員推薦 726.1||A 49||1 087200831
本館開架 2巻 教員推薦 726.1||A 49||2 087200833
本館開架 3巻 教員推薦 726.1||A 49||3 087200834
本館開架 4巻 教員推薦 726.1||A 49||4 087200835

『朝鮮通信使』 仲尾 宏著

中野 聰志(教育学部理数教育コース)

 1989年夏台風のなか済州島を訪れました。研究対象であるアルカリ岩長石を採集する目的でしたが、予期しないいくつかの異文化体験をしました。その後、「韓国済州島」(高野史男、中公新書)を読み済州島の意外な一面を知りました。今年2012年3月、韓国本土をはじめて旅行したおり(釜山~京城)、日本でも親しんでいる花崗岩地形に和みましたが、いくつかの都市や文化遺産に触れた結果多少の朝鮮文化の実像理解をする必要に迫られました。そこで、退職間近の身辺整理の合間、眠り薬として岩波新書を中心に読んでみました。「韓国併合」(海野福寿)、「創氏改名」(水野直樹)、「朝鮮人強制連行」(外村 大)、「韓国現代史」(文 京沫)などです。日本の現在の国際的立ち位置にも関係する、生々しい歴史をある程度詳しく確認することができ、いずれも私の視野を広げてくれたように思えます。山陰の田舎町でわずかながら体験した少年時代の「朝鮮」という言葉が生々しくよみがえってきもしました。
 一方、滋賀県に朝鮮人街道があるのは教育学部赴任時から知っていましたが、今回はじめてその歴史的意義を多少知ることができました。それが、岩波新書の「朝鮮通信使」(仲尾 宏)です。時々名前に出会っていた雨森芳州のことも出てきました。若い人たちにもここに書かれているような歴史の一面を知って欲しいと思い、「多文化共生をめざした国際交流」とうたわれている本書を今回紹介させていただきました。

朝鮮通信使

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
教育文庫新書 2007 081||I 1||1093 107000428
本館文庫新書 2007 081||I 95||1093 007001324

『第2図書係補佐』 又吉 直樹著

山田 康裕(会計情報学科)

 本書は、お笑い界きっての読書家として知られる著者による「大好きな本」にまつわるエッセイ集である。「僕の役割は本の解説や批評ではありません」(5頁)と著者はあくまでも控えめであり、それ故にタイトルも「『第2』で、しかも『補佐』」(5頁)がついているという。「僕は自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました」(5頁)と著者がいうとおり、取り上げられている本の内容自体は僅か数行しかふれられておらず、大半は本の内容なりテーマに関連する著者の体験談である。そのエピソードの魅力のせいか、取り上げられている本を思わず読みたくなってしまうから不思議である。
 著者はテレビでよく目にするお笑いタレントであり、紹介されているエピソードもどこかの番組で本人が語っていたものも含まれている(たとえば、『炎上する君』で書かれている姪が描いた髭のバケモノの話)。また、テーマも子供の頃の思い出、部活、恋愛、家族の話など、身近なものばかりである。その親しみ易さ故に、知らず知らずのうちに著者の独特な世界に引き込まれていく。ユーモアあふれるその筆致は絶品であり、読んでいて思わず吹き出してしまうこともあった(たとえば、江戸川乱歩の本名を知ったときにうけた衝撃を例えた「細身で中性的なカリスマ美容師の名前が…」といった件や、同期の平成ノブシコブシの吉村が最近会った際に放った一言に対する感想など)。
 本書は、もともとヨシモト∞ホールで配られていたフリーペーパーに連載されていたものをまとめたものであるという。それ故に、1話1話がとても短く簡単に読める。そして、その奥には深遠な又吉ワールドが広がっているのである。本書で取り上げられている本のレパートリーは幅広く、『山月記』など教科書で見かけたようなものや、『人間失格』などタイトルこそ知ってはいるもののちゃんと読んだことのないような硬派なものから、ミュージシャンの自伝的小説にまで及んでいる。
 巻末に収められている著者と著者がファンであるという作家の中村文則との対談のなかで中村は、「大量に本を読むと人間の中に何が起こるかと言うと、変な海みたいなものが出来あがる」(239頁)、「純文学っていうものをたくさん読んだ人っていうのは、自分の内面に自然と海みたいなものが出来あがるんです。で、それは作家になるとかお笑い芸人になるとか、もちろんそれ以外のいろんな職業の人たちにとっても、非常に素晴らしいものなんですよ。つまりいろんな角度から物事を考えられるようになる」(239頁)とのべている。「学生に読んでもらいたい本を中心に紹介した」(245頁)という本書自体が、この文章も含め教員の書いた高慢な「読書のすすめ」とは一味も二味も違った、海を作り出すための良質の読書案内なのである。

第2図書係補佐

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2011 教員推薦 019||Ma 71 012000626
教育開架 2011 019.9||Ma 71 112000574