2010年度 本学教員が推薦する図書・映画等を紹介します。(並びは推薦者名の五十音順)
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タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
深夜特急 1-6 沢木 耕太郎 新潮社 1994 奥田 援史
最新 日本経済入門 小峰 隆夫 日本評論社 2008 楠田 浩二
常用字解 白川 静 平凡社 2003 武永 淳
日本の優秀企業研究 新原 浩朗 日本経済新聞社 2006 陳 韻如
ストンプ アウト ラウド
STOMP OUT LOUD(DVD)
(監督・制作)
スティーブ・マクニコラス、
ルーク・クレスウェル
(発売)
ソネットエンタテインメント
林 睦
アルケミスト-夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ 地湧社 1994 坂野 鉄也
悪魔とプリン嬢 パウロ・コエーリョ 角川文庫 2004 坂野 鉄也
ザーヒル パウロ・コエーリョ 角川文庫 2009 坂野 鉄也
高校生からのゲーム理論 松井 彰彦 筑摩書房 2010 山田 康裕

『最新 日本経済入門』  小峰隆夫著

楠田 浩二(経済学部ファイナンス学科)

 ここ数年、少子高齢化、世界金融危機、経済政策の失敗(財政肥大化・成長戦略の不在)、そして今般の東北関東大震災と、日本経済に大きな負の衝撃を与える事象が相次いだ結果、日本経済が先行き財政破綻及び長期停滞に陥るのではないかとの危惧の念が高まっている。
 こうした状況下、日本経済の成長力を回復させ、財政収支を均衡化させるための経済戦略の策定が喫緊の課題となっているが、ここで参考となるのは、実際に長期停滞に陥り、成長力の回復が待望された「失われた十年」の際に行われた「リフレ派」と「構造改革派」の経済論争である。
 論争の的となったのは、銀行の不良債権問題以外の長期停滞の主因は何ぞや、という問題である。すなわち、同主因を「リフレ派」はデフレを放置している消極的な金融政策と診断したのに対し、構造改革派は構造変動に対する日本経済の適応の遅れと診断した。同論争については、日銀が踏み切った量的緩和政策がリフレ派の提案していたものほど積極的ではなく、デフレから脱却する相当以前に景気回復を実現したことから、リフレ派の診断が誤っていたことは明らかとなった。これに対し、構造改革派の診断も、小泉政権下の「構造改革」が「格差問題」を引き起こしたなどの批判が台頭する中、与党政権が構造改革路線から転換を図った結果、顧みられなくなった。
 経済企画庁で日本経済の分析に長年携わってきた著者は、穏健な構造改革派とみられる。本書は、日本経済の特徴と課題が学術的知見と実務家的叡智の均衡を巧みに取りながら数式を殆ど利用することなく、穏健な構造改革派の立場から平易に解説されており、未だに十分に理解されていない構造改革派の日本経済観を経済学の初学者が学ぶための打って付けの入門書となっている。
 本書における著者の構造改革派としての見解は概ね次のように要約される。第二次大戦後、日本経済は追随型、第二次産業中心、人口ボーナス型等の経済構造の下で、長期的取引を重視する雇用慣行・企業経営・金融システム、官民協調型の行財政システムに特徴付けられる「日本型資本主義」を確立し高度成長を実現した。然し、追随型から先進型、第二次産業中心から第三次産業中心、人口ボーナス型から人口オーナス型、グローバリゼーション等の経済構造の変動の中で、こうした長期的取引を重視する日本型資本主義はイノヴェーションを阻害する非効率な経済システムに変容し、構造改革が必要とされるようになった。然し、ある経済構造に適応するように形成された諸慣行・制度は相互補完的に機能するように形作られていること(慣行・制度の相互補完性)から、変動後の経済構造に速やかに適応することは困難であり、こうした慣行・制度の相互補完性が構造改革を遅らせ、「失われた十年」を生み出した。然し漸く、2000年代入り後から、雇用慣行、企業経営等の構造改革が進み始めており、こうした動きが先行き、金融システム、行財政システムに広がってゆくことが期待されている。
 小泉政権下、構造改革が漸く進み始めた時期に著された本書は、構造改革の先行きに楽観的であるが、その後、著者の予想に反して構造改革は頓挫した。然し、冒頭で述べたように成長戦略が喫緊の課題として再浮上しているにも拘わらず、代替的な成長戦略が打ち出されない中、こうした構造改革派の主張に改めて耳を傾けるべき時期が到来しているように思われる。

最新 日本経済入門

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2008 332.107||Ko 64 008000517
本館開架 2008 教員推薦 332.107||Ko 64 0109015990

『アルケミスト-夢を旅した少年』『悪魔とプリン嬢』『ザーヒル』パウロ・コエーリョ著

坂野 鉄也(経済学部社会システム学科)

 三冊とも、ブラジルの人気作家パウロ・コエーリョの作品です。
『アルケミスト-夢を旅した少年』はいろいろな言語に翻訳され、全世界で売れた彼の出世作です。
 サンティアゴという名の、アンダルシアの羊飼いの少年が主人公の物語です。彼は二度、同じ夢を見る。いずれも、自分がエジプトのピラミッドの近くで財宝を見つけるという夢です。その夢をきっかけに少年はエジプトへの旅を始めることになる。ちなみに、タイトルの「アルケミスト」とは「錬金術師」のことです。
 『悪魔とプリン嬢』は、シャンタール・プリンという若い女性=「プリン嬢」を主人公とした物語です。
 ケルト文化の流れを汲む、田舎のある町に一人の男がやってきた。彼は、子供や若者がおらず早晩姿を消してしまうだろう田舎町ヴィスコスの消滅を早めようとしている悪魔の心をもつ異邦人でした。
そんな彼を、そして、町を救ったのが、貧しく、身寄りがないために、町を離れ都会へと出ることがかなわなかったプリン嬢です。
 『ザーヒル』は、コエーリョの半自伝的小説です。
主人公である作家のもとを妻が去った。妻が去った後もベストセラーを出し、新たな恋愛もするが、妻へのこだわりが消えない。彼女がいなくなった理由がわからない。その答えを求め、作家は旅をする。フランス、スペイン、クロアチア、そして、中央アジアへ。
 コエーリョの小説世界は哲学的です。『アルケミスト-夢を旅した少年』では、生きることとは、そして人間が持っている欲望とは、という問いを読者は少年と旅する中で探求します。『悪魔とプリン嬢』では、人間が持つ善と悪が語られます。『ザーヒル』では、愛の真実(「真実の愛」ではないです。)とは何なのかを執拗に追っています。いずれも難しいテーマですが、コエーリョの作品はきちんと最後まで読ませるような仕掛けがあります。ぜひ、彼の小説世界へと足を踏み入れてください。
 しかし残念ながら、同じ作家でも訳者が違うと読み味がかわります。それが外国小説の悲しいところです(もちろん、原語で読めればいいのですが…)。でも、訳者によっては原文を読む以上の世界が開けることもあります。旦敬介はそんな訳者の一人です。

アルケミスト-夢を旅した少年

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 1997 学生推薦 969.3||C 83 005003114
本館開架 1997 969.3||C 83 009000374
本館開架 1994 教員推薦 969.3||C 83 0109015944

悪魔とプリン嬢

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2004 969.3||C 83 009000257
本館開架 2004 教員推薦 969.3||C 83 0109015922

ザーヒル

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2009 教員推薦 969.3||C 83 0109015933

『常用字解』  白川静 著

武永 淳(経済学部社会システム学科)

 憲法の講義の最初時間、「憲法」という言葉についての話をしている。
現在我々が使っている「憲法」という言葉は、constitutionの訳語なのであるが、聖徳太子の『一七条憲法』というように古くからあった言葉である。
 民法が市民の法civil law, Bürgerliches Recht、 刑法が刑罰の法 Strafrecht というように何の法であるのか推測できるのに対して「憲法」の意味は字面からはよくわからない。
 そこで漢和辞典の登場となり、「憲」の字、「法」の字を調べるのであるが、その漢字の成り立ちについての説明は辞典により結構異なっている。いくつかの辞典の中で、もっとも説得的な解説が付されているのが白川静先生の編纂されたものであった。先生は残念ながら2006年に亡くなられたが、私たちに気軽に漢字に親しめる書物を残していかれた。
 この本は通常の漢和辞典とは違い、常用漢字について50音順に配列された「解説書」である。人の名前とか気になる言葉について使われている漢字の意味と成り立ちを気軽に調べることができる「辞書」であり、また漢字についての知識を深める「読み物」としても楽しめる本である。
 まずは手にとって自分の名前について調べてみることをおすすめする。

常用字解

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館参考図書 2003 811.27||Sh 83 005000288
教育参考図書 2004 811.27||Sh 83 103002892
本館開架 2003 教員推薦 811.27||Sh 83 0109015955

『深夜特急』 1-6  沢木耕太郎 著

奥田 援史(教育学部幼児教育コース)

 1984年、大学生のとき、初めて海外へ行った。海外とは言ってもお隣の韓国である。事前の下調べもなく出かけ、10日間ほど滞在した。板門店やハングルについての知識は皆無に等しく、ホテルが見つからず苦労したことや水道水がわりにコーラばかりを飲んでいたこと、そして「NIPPON」「NIHON」のどちらが正しいのかと質問され戸惑ったことを思い出す。 当時は海外旅行のガイドブックというものを知らなかったが、すでに1979年には「地球の歩き方」のヨーロッパ編とアメリカ編とが出版されていたようだ。手元の「地球の歩き方 タイ」を見てみると、初版は1989年とある。
 件の旅の影響かどうかはわからないが、私は旅や異国の暮らしをテーマにしたものを好んで読む。アジア諸国への旅や生活を中心に執筆する開高健や下川裕二のものがお気に入りであるが、この路線では、沢木耕太郎に辿り着かないといけない。彼の著「深夜特急」には、香港からロンドンまでを乗合バスで旅した様子が書かれている。26歳の著者が香港のネイザンロードをさまよい、マレー半島の夕日に向かって走り、カルカッタの路上で物乞いの子どもと出会い、ガンジスで生と死を考え、埃まみれのシルクロードを揺られ、宝石のように輝くアドリア海を渡り、地の果てポルトガルへ、そしてロンドンへと旅した物語である。彼と共に旅する感覚に陥ることのできる本書は、バックパッカーのバイブルとなった。最近、「旅する力 深夜特急ノート」も出版されている。
 さて、時間に余裕のある大学生時代にこそ、旅と書をセットで楽しんでみることを勧めたい。国内でも海外でもいい、長くても短くてもいい、意味や意義など難しいことはとりあえずそのままにして、活字を追いながら名所旧跡を巡り、食を堪能してみるのはどうだろうか。ところで、私の研究室の机には、三島由紀夫の「豊饒の海」がある。今、これをバックパックに忍ばせることを秘かに計画中である。

深夜特急

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 1(香港・マカオ) 教員推薦 915.6||Sa 94||1 007900876
教育文庫新書 1(香港・マカオ)   081||Sh 61||5235 102003451
教育文庫新書 1(香港・マカオ)   081||Sh 61||5235 103003801
本館開架 2(マレー半島・シンガポール) 教員推薦 915.6||Sa 94||2 007900877
本館開架 3(インド・ネパール) 教員推薦 915.6||Sa 94||3 007900878
本館開架 4(シルクロード) 教員推薦 915.6||Sa 94||4 007900879
本館開架 5(トルコ・ギリシャ・地中海) 教員推薦 915.6||Sa 94||5 007900880
本館開架 6(南ヨーロッパ・ロンドン) 教員推薦 915.6||Sa 94||6 007900881

『日本の優秀企業研究』  新原浩朗 著

陳 韻如(経済学部企業経営学科)

 ここ数年企業再生の研究をしていますと、日本企業が不況に陥る期間は他国より長いことに気づきます。日本企業はさまざまな構造改革を行っているにもかかわらず、なぜ不況から抜け出せないのかを考えるときに、この本が大いに参考になりました。
 本書は日本企業の行方について提言するものではありませんが、日本の優秀企業の研究を通じて日本企業の競争力の原点を示唆しています。著者の新原浩朗氏は経済産業省在職中に、日本企業にアメリカ式経営の「形」を導入することに違和感を持ち、競争力の源泉を日本企業の経営の「本質」まで立ち戻って考え直す必要があるのではないかという問題意識から調査に取り組みました。著者の研究方法は不況下でも優良な成果を挙げている企業の特質調査で、それによって日本企業の本質を見出せると考えたわけです。
 本書において15年間にわたる収益性や安全性、成長性の3つの財務データで洗い出された優秀企業は、意外にも一般の経済雑誌で報道されるパターンから外れることが多いようです。また、調査の結果から、優秀企業に対する「通念」が必ずしも正しくないということもわかりました。この本は、報道でなかなか明らかにされていなかった日本企業の本質的な部分を明らかにしてくれています。
 本題の経営の本質について、著者はリストアップした優秀企業から共通の条件を6つ抽出しました。それらの多くは経営者や企業の仕組みに関するものです。結論として、身の丈にあった経営、つまり所有資源(制約)に応じた独自の強みの構築とその維持が、企業が良い成果をあげ続ける主な条件であることが強調されています。これは、ある時点の話ではなく、時間環境が変わっても常に身の丈に合うように経営を修正することの大切さを示唆しています。本書は『エクセレント・カンパニー』の日本版だとよく評されていますが、個人的には企業全体の仕組みを捉え、時間に伴う変化能力の必要性を指摘しているといった点で、日本企業の再生のための示唆がそれ以上に大きいと考えます。
 この本のもう一つの特徴は、企業実務の観点に立脚していて、実務者の実感に即していることです。経済学部だけでなく他学部の学生にとっても読みやすい一冊です。既存の経済学や経営学の理論との整合性も図られて、重要な論点にも補論で触れることができます。これからの日本企業の行方や企業研究に関心を持つ人にはぜひ読んでいただきたいです。

日本の優秀企業研究

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2003   335.21/N 72 003003098
本館開架 2006 教員推薦 335.21/N 72 011000097
教育開架 2006   335.21/N 72 110001049

『STOMP OUT LOUD』(DVD)
 スティーブ・マクニコラス、ルーク・クレスウェル(監督・制作)

林 睦(教育学部芸術表現教育コース)

 「ストンプ」はデッキブラシ、ごみバケツの蓋、バスケットボール、キッチン用品など、あらゆる身の回りの生活用品やがらくたを楽器として織り成すリズムパフォーマンスです。もともとはイギリスのストリートから生まれたシンプルなパフォーマンスでしたが、ニューヨークのオフ・ブロードウェイで1994年から現在まで異例のロングランとなっています。私が初めてストンプに出会ったのは、ニューヨークに留学していた1997年のことでした。ダウンタウンの350席余りの小さな劇場(というよりは芝居小屋)で、がらくたが所狭しと飾られたステージでデッキブラシを床に擦り付けて音を出したりするので非常に埃っぽかったのですが、パワフルで息の合ったパフォーマンスに圧倒されたのを覚えています。帰国する時、私は『STOMP OUT LOUD』というビデオを購入してきて、授業でさまざまな学生たちと鑑賞してきました。多くの学生たちが熱心に見入り、「こんな音楽もあるのか」と発想の転換を体験するようです。
 この『STOMP OUT LOUD』の本編は1時間程度ですが、非常にうまく構成されています。ストリートでバスケットボールだけを使ってリズムを作り出す場面、キッチンで働く人たちがキッチン用品でパフォーマンスする場面、キッチンから下水に流れたレタスを追っていくと、下水管を叩く場面が繰り広げられていたりと、場の転換と展開がうまく、飽きずに見入ってしまいます。本編を通して観ても面白いし、好きな場面だけを観ることも可能です。また、ストンプを参考にしたリズムパフォーマンスは教育現場で授業や行事にも取り入れやすく、実践例も紹介されています。昨年、附属小学校の6年生が音楽の時間にバスケットボールをついたり、叩いたりする音で音楽をつくったのですが、どのグループもなかなか面白い音楽ができ、子どもたちも楽しそうでした。このようにストンプは鑑賞して楽しむことができるだけでなく、教育現場でも生かせる発想や要素が含まれている点で教育学部の皆さんにもお勧めです。なお、『STOMP OUT LOUD』は、現在インターネットで簡単にDVDを購入することができるので、興味を持たれた方は是非観て頂けたらと思います。

STOMP OUT LOUD(DVD)

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館視聴覚   教員推薦   087200542

『高校生からのゲーム理論』  松井彰彦 著

山田 康裕(経済学部会計情報学科)

 ゲーム理論といえば、一昔前であれば「任天堂?PSP?」などと、テレビゲームに関する理論と誤解されることもしばしばであった。しかし今日では、ゲーム理論も世間での市民権を得、経済学の分野では重要な分析ツールとしてみなされており、テキストでも多くの紙幅が割かれている。そもそもゲーム理論とは、「経済社会におけるさまざまな意思決定の相互依存関係を数理的な厳密な方法論を用いて分析する理論」(岡田章『ゲーム理論』有斐閣、1996年、2頁)である。ゲーム理論では、本来は「数理的な厳密な方法論」が用いられるものの、わかりやすさを重視した入門書も最近では数多く出版されるようになってきた。本書は、そのようななかでも、わかりやすさとレベルの高さという一見両立しがたい両者をうまく兼ね備えた、第一級の入門書である。
 本書では、ナッシュ均衡(本書、22頁)、囚人のジレンマ(本書、23頁)、協調ゲーム(本書、26頁)、共有地の悲劇(本書、39頁)、仁(本書、42頁)、フォーカル・ポイント(本書、66頁)、しっぺ返し(本書、103頁)などといったゲーム理論でおなじみの概念が説明されている。しかも、これらの概念がさまざまな親しみやすいストーリーのなかで説明されている点が、本書の真骨頂である。我々にとって身近なサッカーやデートの例で、また、ヒツジさんやキツネさんが登場する空想的な例で、一気にゲーム理論の世界へと引き込まれていく。しかも、「吉本の芸人さんのようなノリ」(本書、170頁)で描かれた数々のイラストは、親しみやすさもさることながら、内容の理解に大きく貢献している。
 ゲーム理論をしっかりと勉強した人からみれば、本書は「数理的な厳密な方法論」を用いた記述にはなっていない(ただし、本書の内容自体は「数理的な厳密な方法論」による研究から得られた知見に基づくものであることはいうまでもない)分、物足りなさを感じるかもしれない。しかしながら、その点を補って余りあるほど、「意思決定の相互依存関係」を分析する面白さが、すなわち著者のいう「わくわく感」(本書、169-171頁)が、至る所から感じられる。と同時に、本書を読むと、取り上げられるストーリーやイラストも手伝ってか、なぜか、ほのぼのとした気分になれる。「意思決定の相互依存関係」を分析するというといかめしいが、「ゲーム理論を活かすうえでの第一原理は、相手のことを思うことである」(本書、172頁)と筆者はいう。本書は、「熱き心と冷静な頭脳」(本書、15頁)を兼ね備えた筆者ならではの一冊である。

高校生からのゲーム理論

所在 刊年 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 2010 教員推薦 331.19/Ma 77 087167922
本館開架 2010   331.19/Ma 77 010000731