2007年度に本学教員が推薦した図書・映画等を紹介します。(並びは推薦者名の五十音順)
タイトルをクリックすると、推薦文へジャンプします。

タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
ハーバードからの贈り物 デイジー・ウェイドマン ランダムハウス講談社 2004 赤塚尚之
おとなの叱り方 和田アキ子 PHP研究所 2008 赤塚尚之
新訂 福翁自伝 福沢諭吉
(校訂)富田正文
岩波書店 1978 内田耕作
骨董裏おもて 広田不孤斎 国書刊行会 2007 内田耕作
代表的日本人 内村鑑三 岩波書店 1995 小野善生
努力論 幸田露伴 岩波書店 2001 小野善生
ピーク・オイル・パニック ジェレミー・レゲット 作品社 2006 河相俊之
虫を愛し、虫に愛された人 長谷川眞理子 文一総合出版 2000 河相俊之
火の鳥(1-12巻) 手塚治虫 岩波書店 1986-1990 清宮政宏
にんげんだもの 相田みつを 文化出版局 1984 清宮政宏
街道をゆく 1-43 司馬遼太郎 朝日新聞社 1971-1996 清宮政宏
深夜特急 1-6 沢木耕太郎 新潮社 1994 清宮政宏
日本の経済システム 寺西重郎 岩波書店 2003 二上季代司
歴史人口学の世界 速水融 岩波書店 1997 藤栄剛
グレースと公爵
L’Anglaise et le Duc(DVD)
(監督)エリック・ロメール (発売)紀伊國屋書店 2001 御崎加代子
はじめてのC 椋田實 技術評論社 2001,1993,1985 渡辺凡夫

『ハーバードからの贈り物』  デイジー・ウェイドマン著 幾島幸子訳

赤塚 尚之(会計情報学科)

 思い返せば、ある有名人が入学したことにより一年をつうじてお祭り騒ぎだったキャンパスがさらに大騒ぎになった大学3年生の頃、ハーバードビジネススクール出身の先生(バランストスコアカードで知られるキャプランの弟子で、今はイリノイ大学の先生をしている)が担当する「専門英語購読」という授業を受講していた。ハーバード作成のホンダのアメリカ進出に関する2つのケースを読みディスカッションするという内容で、学生時代印象に残っている数少ない?授業のひとつである。この先生の言い方を借りれば、「授業の殿堂入り」とでも表現できるだろうか。当時遊びほうけていた自分であっても、なんかハーバードってすごそうだなあと思い、きちんと予習していったものである。
 そんなアメリカのハーバードビジネススクールには、ある伝統があるという。それは、学期の最後に普段の緊張感漂うディスカッション中心の授業をすることなく、教授自身が経験した試練や成功さらには失敗を交えて学生へのはなむけのエピソードを送るという伝統である。本書は、当時ハーバードビジネススクールのMBA課程に在籍していた著者が企画し、賛同を得られた教授たちのエピソードのなかから15篇を収録したものである。
 われわれ読者にとっては、本書に登場する教授たちとは実際に面と向かったことはない分、リアリティに欠ける部分もあるだろうが、それでもそれぞれのエピソードには心に響くことばが多く散りばめられている。日常生活で手に取ることはなかなかない本かもしれないから、卒業式の前後に学生時代の締めくくりに読んでみるといいかもしれない。また、本書の内容は巷にあふれる留学情報誌の類から窺い知ることのできないものばかりであり、掛け値なしでハーバードがどんな学校なのかを知るきっかけとなる一冊かもしれない(英語が得意な人は原著もおすすめ)。何か困ったことが起きたとき、解決の糸口が見つかるか見つからないにせよ、この本をひもとけば心が落ち着きを取り戻し、体の中からやる気が湧いてくるかもしれない。そんなことからも、一読をおすすめしたいと思う。
 あらかじめ編成されたカリキュラムをこなしていくことに追われがちであることと、エピソードを語るほど人生経験を積んでいない自分ではあるが、このような「授業」をいつかできるようになりたいと思っている。

ハーバードからの贈り物

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 159.4||W 12 004900861
本館開架 教員推薦 159.4||W 12 007001279

『おとなの叱り方』  和田 アキ子 著

赤塚 尚之(会計情報学科)

 本書は、そのタイトルが示すように、「叱る」をテーマに和田アキ子が徒然なるままに?筆を走らせたものである。タイトルにあるように叱り方も書いてあるものの、ある種の躾について書かれた本でもあるというのが、評者の読後感である。
 教員をしていれば気づくことであるが、学生を「叱る」、「怒る」、または「注意する」行為は、「ほめる」ことよりも数倍労力を要するものである。また、「ほめる」ことは、実のところとても簡単かつ差しさわりのない行為ではないかと考えている。なぜなら、ほめられて気分が悪くなる人はあまり多くないであろうし、ほめるときにはなぜほめるのかという核心について触れる必要性もあまりないだろうからである。一方、「叱る」、「怒る」、「注意する」場合には、頭ごなしにではなくなぜ相手方が「叱られる」、「怒られる」、「注意される」に至ったかを「叱る」、「怒る」、「注意する」側が筋道を立てて説明しなければならない。しかも、これからどうすればいいのかなど、一定の方向性を示して相手方を導く必要があり、相応の首尾一貫性が求められるわけである。そうしなければ、周りからみれば単に「キレている」としかみられないだろう。少々乱暴な言い方をすれば、めんどうであればほめておけばよい。そうすれば、とくに人間関係が希薄化して無関心が増大する大学では丸く収まるしくみになっている(授業やプレゼンではめったにほめないので、ほめられたら自信をもってください)。
 しかし、それでは著者の和田アキ子も言及しているように、割り切ったという感覚と同時に物寂しさが込みあげてくることもある。いくら人間関係が希薄化するといえども、大学では部活やサークル、ゼミなど、卒業後も継続していくような濃い人間関係を構築する機会は用意されている。とくに本学は学生数も少ないから、比較的その機会は多いと思う。これから始まる新歓期には新入生はちやほやされて、部活やサークルなどの練習に参加すると「初心者なのにうまいね!!」、「さすがは経験者。即レギュラー!!」ととりあえずほめちぎられてその気になってしまうのが常であろうが、1ヶ月もすると練習も本格化、玉拾いに明け暮れて先輩から時には厳しい言葉をかけられることになるということもあるだろう。もっとも、それは「理不尽」なのではなくて、4月の段階ではまだ人間関係(信頼関係)が構築されておらず、上級生もほめることしかできない手探りの状態なのであり、正式に組織の一員となればようやく後輩を「叱る」ことができるようになるのだと理解している。「叱る」という行為は、成熟した関係になければ成立しえない行為なのである。
 比較的短期間のあいだに「叱る」側と「叱られる」側のいずれの立場にもなりうる学生のみなさんに、一読をおすすめしたい一冊である。

おとなの叱り方

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 767.8||W 12 007002535

『新訂 福翁自伝』  福沢 諭吉 著/富田 正文 校訂

内田 耕作(社会システム学科)

 社会システム学科、「経済法」「消費者法」担当。能力の限界を痛感して以来、閑谷学校・足利学校などの旧藩校を訪ねています。あやかることができるでしょうか。
 みんなが知っている福沢諭吉。『福翁自伝』『学問のすゝめ』『文明論之概略』のどれかは学生時代に読んでほしいねというのが、他界された敬愛する先生の言葉。学業半ばで学徒出陣された先生の思いは計り知れません。時々思い出しています。
 遅ればせながら職を得てから私も挑戦。現代表記に改められているので読むことができるかと思いましたが、明治初年に著された『学問のすゝめ』『文明論之概略』は文体に難渋。明治30年、口述ののち全面加筆をほどこして書き上げられた自伝は、息遣いも伝わり一気に読むことができました。このたび再読しましたが、やはりおもしろかったです。
 「近代日本の激動期を背景に、常に野にあって独立不羈をつらぬいた精神の歩みが大らかに自在に語られている」という岩波文庫版のカバーの宣伝文句に偽りなし。海図なき変革の時代にあって、自らの人生、また社会を切り開いていかなければならない学生の皆さんにとって、大いに刺激となるでしょう。『福翁自伝』を薦めるゆえんです。
 以下は、余談。福沢の著作から誘発されたこと。一つは、中津藩の下級藩士であった福沢にとって、中津はどういった「ふるさと」であったのか、また中津の人は福沢をどう思っているのか、知りたいということ。中津を訪れ、確かめてみたいと思っています。
 もう一つは、文体の問題。明治初年にあって平易となるよう福沢が苦心した文体がいつまで通用するのか、気がかりなこと。みんなが知っているが誰も読んだことのない著名人に、福沢が仲間入りする日は近いのでしょうか。さびしい限りです。私としては、明治の文学、どこまでさかのぼって読むことができるか、確かめたいと思っています。また新たな文体の革新がなされれば、再びみんなが本を読むようになるのかも、大きな関心事。
 本の読み方は自由。さしあたり『福翁自伝』から始め、福沢に迫ってはどうでしょう。また派生して、色々なことに関心を持つのも楽しいですよ。本は宝の山。

新訂 福翁自伝

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 289.1||F 85 007001220
本館文庫新書 289.1||F 85 087046753
教育文庫新書 081||I 1||102-2 187004316
教育文庫新書 081||I 1||102-2 188001642

『骨董裏おもて』  広田 不孤斎 著

内田 耕作(社会システム学科)

 テレビ番組「なんでも鑑定団」を見ている人は結構いるのではないでしょうか。「なんでも鑑定団」が長寿番組であり続けるのは、骨董の真贋を当て、また値踏みをして、「目利き」ぶりを発揮する楽しみがあるからだけではないでしょう。骨董をめぐるさまざまな人間関係をおもしろおかしく紹介し、誰もが持っている「覗き見趣味」をくすぐるところがあるからでしょう。「物を見る目」だけでなく、「人を見る目」も養えているでしょうか。
 『骨董裏おもて』(平成19年)は、「日本屈指の古美術店『壺中居』の創業者が骨董ひと筋に歩んだ六十有余年の歳月を綴る多彩なエッセイ一五〇篇を一挙収録」したもので(「帯」による)、『歩いた道』(昭和27年)と『骨董裏おもて』(昭和32年)を合本したものです。
 骨董話しは、骨董とそれを取り巻く人々に語らせなければなりません。著者が語れば、自慢話しに堕し、胡散臭うさんくさいものになってしまうおそれがあります。本書では、著者が歩いた道、骨董商、同業者・先輩、お客、思い出のある骨董、真贋・鑑定などが、著者のおごらない生き方を髣髴ほうふつとさせる語り口で書かれています。
 本の読み方は自由。本書からおびただしい教訓を引き出すことは簡単でしょう。小見出しだけでも、「商売は平静に」、「身のほどを知ること」、「客の注文は客の気持ちで」、「流行を追わぬこと」などが見受けられます。しかし、これらを単なる教訓として受け取るのではなく、著者の生き方から現出した生の言葉として受け取れば、より深い意味を持つでしょう。著者が歩んだ六十有余年の歳月を、著者の語りによって追体験し、いわば自分のものとすることです。やがて社会人として自らの人生を切り開いていかなければならない学生の皆さんにとって、本書から得るところは多大と確信しています。

骨董裏おもて

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 756.8||H 74 007901657

『代表的日本人』  内村 鑑三 著

小野 善生(情報管理学科)

 最近、「品格」という言葉をよく耳にする。発端となったのは、藤原正彦のベストセラー『国家の品格』によるものだろう。なぜ、「品格」が注目されるのかについては、いろいろな意見があるが、1つの考え方として、現在の日本人がアイデンティティ・クライシスに陥っていると言えるのではないだろうか。アイデンティティ・クライシスとは、異文化の影響によってこれまで抱いていた自らのあり方を見直さざるを得ない状況になり、心理的に不安定な状況に陥ってしまうことである。
 昨今の日本は、グローバル・スタンダードという名のもとによる構造改革で、これまで培ってきた文化や価値観の見直しが進んでいる。もちろん、改めなければならないところはあるだろうが、既存のものを守り抜かなければならないところもある。現在の日本人が直面しているアイデンティティ・クライシスとは、この線引きをどうすればいいのか分からないという状況に陥っていることだと言える。
 およそ国際人たるには、自国の文化や価値観の理解に努め、他国の文化や価値観も尊重できる人物でなければならない。「品格」が注目を浴びるのは、昨今の日本人が自国の文化や価値観を蔑ろにし、欧米のライフスタイルに一方的に適応している現状に違和感を抱いている人々が多いことを示しているのである。
 自国の文化や価値観に対して真摯に向き合う態度こそ、アイデンティティ・クライシスに陥っている日本人には必要かと思われる。ここで参考になるのが、日本が近代国家へと進みだした頃に国際社会に存在を示すべく日本の文化や価値観を諸外国に向けて情報発信した代表的な書物、新渡戸稲造の『武士道』、岡倉天心の『茶の本』、そして今回推薦する内村鑑三の『代表的日本人』なのである。いずれの本も読んでもらいたいのであるが、『代表的日本人』を推薦する理由は、その分かりやすさにある。『代表的日本人』では、日本の歴史上の人物(西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮)の生き様を通じて日本の文化や価値観を学ぶという視点で書かれており、読みやすく、最初から読まずとも興味のある人物から読み始めることができる。また、この本は日本人の学生だけでなく、日本についてもっと知りたいと思っている留学生の方々にも大いに役立つと思われる。まさに、日本の文化や価値観についてより深く考えてもらう格好の入門書なのである。

代表的日本人

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 281.04||U 19 007001224
本館文庫新書 281.04||U 19 095002256

『努力論』  幸田  露伴 著

小野 善生(情報管理学科)

 日本人なら誰もが知っている人気時代劇「水戸黄門」の主題歌「ああ人生に涙あり」の歌いだしに「人生、楽ありゃ、苦もあるさ、涙の後には虹も出る」という一節がある。シンプルで分かりやすい歌詞であるが、なかなか意義深いメッセージだ。
 私は今年で大学教員5年目であり、まだまだ駆け出しの研究者であるが、何事もうまくいく時もあれば、思いもよらぬ不運に苛まれる時もあり、人生のアップダウンを経験するようになってきた。ようやく「ああ人生に涙あり」のメッセージが分かってくるようになったというわけだが、とりわけ不運が続いて落ち込んでいる時には、気持ちを戻していくのに大変苦労する。
 落ち込んでいるときに心を慰めてくれる歌もあるが、本によっても救われることがある。これまでの経験で読書といえば、知識や情報を得ることばかりだと思っていた。そんなある時、なかなか思うように事が運ばなく、更には思いもよらない不運が度重なり、すっかり参っていた時期があり、そこからの救いを求めて読書に耽った。
 今回推薦する幸田露伴の『努力論』は、そんな時に出会った1冊である。タイトルからは「とにかく頑張れ」という印象があるのだが、内容は生きていく上での様々なアドバイスが満載されている。その中でも今回は、幸福三説の話を紹介する。
 露伴は、福には惜福、分福、植福という3つのタイプがある主張する。福というものは、誰しもに何らかの形であらわれるものだが、惜福というのは、福が来たからといって浮かれてはならず、足るを知る心を持つことを意味する。分福とは、福が来たら独り占めするのではなく、人と分かち合う心のことを指す。植福とは、露伴が最も価値を置くべき福であり、「我が力や情や智を以って、人世に吉慶幸福となるべき物質や情趣や智識を寄与すること」とされる。植福の精神を知った時、人生で目指すべきものを与えられ、前向きな気持ちになった。この経験を通じて、読書は知識や情報を得るばかりでなく、「生きる」ことをより深く見つめ直し、困難と向き合う力を与えてくれるものだと感じたのである。
 私がかつて経験したような自分自身をより深く見つめ直したい人には、是非とも読んでもらいたい1冊である。

努力論(改版)

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 914.6||Ko 16 007901432
教育文庫新書 081||I 1||12-3 101000430

努力論(1940年)

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
教育文庫新書 081||I-1||12-3 187003263

『ピーク・オイル・パニック』  ジェレミー・レゲット 著

河相 俊之(経済学科)

 地球温暖化の問題はいたるところで大きく取り上げられているのに対し、同様に大きな問題かもしれない「最後の石油危機」については、日本では話題にもなっていないのが不思議で、ここではそれに関連した本を少し取り上げてみました。
 「最後の石油危機」とは、ここ10年のうちに石油が足らなくなることを指摘するものです。足らなくなるというのは、直ちに枯渇するということではなく(現在の使用量で考えて、残り40年の量が採取可能なものとしては存在するとされています)、生産が需要を満たせない時が来ることを指しています。石油の採掘は、当たり前ですが採取すればするほどより深くから採取しなければならないなど、次第に困難になってくるのであって、最初は生産量をどんどん増やせていけるわけですが、石油を取り続けていくと採取の困難さが極めて大きくなり、ある時点より生産量が減っていくことになるようです。すなわち油田の生産量にはピークがあることになるのです(実際にアメリカの石油産出量のピークは1970年です)。そして全世界の石油の生産量のピークは近い、ということが言われてきています。そして生産量が需要を満たせず、価格が高騰し、安い石油の時代は終わりを告げると予測されています。
 現在の石油価格高騰はこの前触れであり、石油業界が否定し続けるピーク・オイルの真実と、パニックを避け、ソフト・ランディングのための代替エネルギーの可能性を探っているのが本書です。少し、ジャーナリスティックなところもあり、注が段落最後に度々挿入されているなど読みにくいところもありますが、このような問題が差し迫っている(2050年、2100年の予測をする地球温暖化より明らかに早く来る話です)ことを認識するのには、良い本だと思います。

ピーク・オイル・パニック

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 568.09||L 52 007001225

『虫を愛し、虫に愛された人:理論生物学者 W.ハミルトン 人と思索』長谷川 眞理子 編

河相 俊之(経済学科)

 2000年に亡くなられた理論生物学者のハミルトン博士を追悼する書物です(2000年9月の出版)。20世紀後半に最も生物学(生態学)を発展させた人物がどのような考えを持ち、どのような人柄だったのかを知ることが出来るでしょう。学問に興味を持つ際には、ある分野である議論を始めた人が魅力的な人物であることを知ったことがきっかけ、ということはよくあることで、そのような書物たり得るだろうと取り上げました。
 ただ私自身は、20年以上も前、動物番組(その頃は「野生の王国」等)を見ていて、生物学には当時、新しい考え方による転換があったこと、そしてその考え方によって生物学が数理化していったこと等に興味を持った中で、それを始めた人物として、ハミルトン博士を知りました。世間的には、その後のドーキンスやグールド(+E.O.ウィルソン?)の方が有名でしょうが、私にとってはハミルトン博士が生物学の中心人物であり続けました(なお当然ながら、京都賞他多数の受賞歴があるので、本当に生物学の中心人物です)。しかし、その人物像はほとんど知らず、2000年に博士が亡くなり、この書物によってその人柄を知ることになりました。昆虫少年でもある、魅力的な科学者でした。
 この本では、博士がマラリアで亡くなる原因ともなった「エイズウィルスのポリオワクチン起源説」の調査についても多くが書かれています。世界的な学者であるハミルトン博士が、自身の研究には直接関係のないことに個人的な意思で大きく関わりを持っていたことは私にとっては驚きで、またそのことで命を落としたのですから、本当に衝撃的でした。現在では、上記の起源説は否定的なものとなっているようです。調査がもっと早くに専門家によって綿密に行われていたらと思うのは、私だけでしょうか。

虫を愛し、虫に愛された人

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 289.3||H 26 007901433

『火の鳥』        手塚 治虫 著

『にんげんだもの』    相田 みつを 著

清宮 政宏(企業経営学科)

 経済学部企業経営学科の清宮せいみやです。今年の2月から滋賀大学に参りました。経営学・マーケティング関連科目を担当致します。よろしくお願いします。
 私が「お薦めする一冊」として提示させていただいたのは、一見して性質のことなる2つの図書です。なお、お薦めする「一冊」となっていますが、手塚治虫の「火の鳥」は全10冊(初版時)にわたる漫画本で、「にんげんだもの」は相田みつをの代表的詩集ながらこれ以外にも「雨の日には…」「一生感動 一生青春」「しあわせはいつも」…などがあり、手にして読むのはこちらでも構わないと考えています。
 今回提示させていただいたこの2つは、お薦めなどといって、大学生にあえて提示すべきものではないのかもしれません。これらの書籍は、小・中学生でも読んでいる人はいるでしょうし、また皆さんの中でも、既に読んだ方もおられることでしょう。
 ご存知の方にはあえていうまでもありませんが、「火の鳥」は、手塚治虫のライフワークといえるもので、古代~未来を行き来しながら、地球や宇宙を舞台に、人間の愚行、愛、そして生命の尊さを、壮大なスケールで描いた大叙事詩であり、過去にはアニメ映画にもなった物語です。
 これに対して、相田みつをの「にんげんだもの」は、極めて素朴な視点、また日常的な視点から、我々が日々経験する生活を描きながら、人の心の中にある素直さや、やさしさ、そして命の大切さを、詩のかたちで静かに詠いあげたものとなっています。これらの詩の一部は、今では我々が目にするポスター広告に使われていますし、また小・中学校の教科書にも使われていると聞きます。
 一見して性質の違うこの2つの図書を提示したのは、双方とも、人間のやさしさや、愚かさ、そして生命の尊さを描いた傑作であり、いつ読んでも、どこを(部分的に)読んでも、また繰り返し読んでみても、その時々で新たな発見があって、自身の生活や、その時の気持ちに合わせて、考えさせられることや、元気付けられることが多いからであります。
 もし、読んだことがないならば、時間の余裕のある時に一度目を通してみるのも良いのではないでしょうか。また読んだことのある方は、悩んだ時や疲れた時に、ふと手にとって、どこかを読み返してみるのも良いのでないでしょうか。きっと何か、新たな発見や、気付きがあるのでないかと思われます。

*手塚治虫「火の鳥」、相田みつを「にんげんだもの」は、ともに現在は文庫版が出版されています。

火の鳥

所在 指定図書記号 巻号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 黎明編 726.1||Te 95||1 087166483
本館開架 教員推薦 未来編 726.1||Te 95||2 087166484
本館開架 教員推薦 ヤマト・異形編 726.1||Te 95||3 087166485
本館開架 教員推薦 鳳凰編 726.1||Te 95||4 087166486
本館開架 教員推薦 復活・羽衣編 726.1||Te 95||5 087166487
本館開架 教員推薦 望郷編 726.1||Te 95||6 087166488
本館開架 教員推薦 乱世編 上 726.1||Te 95||7 087166489
本館開架 教員推薦 乱世編 下 726.1||Te 95||8 087166490
本館開架 教員推薦 宇宙・生命編 726.1||Te 95||9 087166491
本館開架 教員推薦 太陽編 上 726.1||Te 95||10 087166492
本館開架 教員推薦 太陽編 下 726.1||Te 95||11 087166493
本館開架 教員推薦 ギリシャ・ローマ編 726.1||Te 95||12 087166494

にんげんだもの

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 728.21||A 24 007001219

『街道をゆく』  司馬 遼太郎 著

『深夜特急』   沢木 耕太郎 著

清宮 政宏(企業経営学科)

 経済学部企業経営学科の清宮せいみやです。
 私は、両親が旅好きなこともあって、幼い頃から同世代の人たちに比べ、旅行をする機会が多かったように思います。私にとって「旅」は、今でも普段の生活の疲れを癒し楽しむだけのものでなく、自分が普段の生活では知ることのできない、新しい世界や全く別の価値観に接することのできる、大切なものであります。今回は、その「旅」に関連する2つの図書を、「お薦めする一冊」として提示させていただきました。
 まず一冊は、司馬遼太郎のライフワークでもある「街道をゆく」です。
 「近江・・この国名を口ずさむだけで・・」という文章ではじまる「街道をゆく」は、司馬遼太郎が、国内はもちろん、アイルランド・オランダ・アメリカ・モンゴル・中国・韓国・台湾などの海外をも訪ね歩いた旅行記で、歴史・街道・人物に焦点をあてながら、それらについての彼の独自の視点を投げかけるものとなっています。なお司馬遼太郎は、よほど「近江」が好きだったようで、彼が没し筆が途中で絶える第43巻までの様々な所で、「近江」に関する記述が出てきます。
 もう一冊は、沢木耕太郎が、自身の若い時の旅体験をつづった「深夜特急」です。
 26歳の沢木耕太郎は、「人のためにもならず・・、記録を作るためのものでもなく・・、冒険をするわけでもなく・・、誰にでも可能で、およそ酔狂な奴以外にはしそうにないこと」をするために、「机の引き出しに転がっている一円硬貨迄かき集めて・・」1900ドルを作り、仕事をすることをやめて旅に出ます。「デリーからロンドンまで乗合バスで行くことができるか・・。」彼は、その旅の中で様々な場面に出会い、道草を食いながら、当初の予定のコースも大きくはずして、旅を続けていきます。(現在は一般旅行者の立ち入りが憚られるアフガニスタンも、当時は平穏で、旅の中に出てきます。)
 「深夜特急」は、若き日の私に旅に出ることを働きかけ、また「街道をゆく」は未読の巻もありながら、自分にとっては一生の付き合いになりそうな気配のする書物となっています。
 旅をしていると、自分の人生に大きな影響を与える人との出会いを経験することもあり、また、自分の存在がいかに小さいか、自分の見識や悩みが、いかに限られた世界の中のものでしかないか、という世界の壮大さを感じてしまうこともあります。
 旅を既に幾度も経験している人は、更にその見識を広げるために・・、また、経験してない人は、是非その良さを感じて頂くために・・、自身でできる「旅」を考えてみては如何でしょうか。今回ご紹介した二冊は、その先導役になってくれれば幸いです。
*「街道をゆく」は朝日新聞社から、また「深夜特急」は新潮社から、それぞれ文庫版が出版されています。

街道をゆく(計43巻)

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架  1~43 教員推薦 915.6||Sh 15||1~43 007900962 ~

※資料IDはOPACで検索して下さい。

深夜特急

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 1(香港・マカオ) 教員推薦 915.6||Sa 94||1 007900876
教育文庫新書 1(香港・マカオ) 081||Sh 61||5235 102003451
教育文庫新書 1(香港・マカオ) 081||Sh 61||5235 103003801
本館開架 2(マレー半島・シンガポール) 教員推薦 915.6||Sa 94||2 007900877
本館開架 3(インド・ネパール) 教員推薦 915.6||Sa 94||3 007900878
本館開架 4(シルクロード) 教員推薦 915.6||Sa 94||4 007900879
本館開架 5(トルコ・ギリシャ・地中海) 教員推薦 915.6||Sa 94||5 007900880
本館開架 6(南ヨーロッパ・ロンドン) 教員推薦 915.6||Sa 94||6 007900881

『日本の経済システム』  寺西 重郎 著

二上 季代司(ファイナンス学科)

 本書は小泉内閣(2001年発足)の行財政改革が本格化し始めた2003年に出版されている。当時、長期にわたる平成不況のなかで金融セクターの不良債権と巨額の財政赤字が大問題となっていた。小泉内閣は、政府の経済介入を否定、中央政府活動の肥大化を是正すべく、経済財政諮問会議を立ち上げて官僚主導から内閣主導の経済運営を目指し大きく舵を切ろうとしていた。そのような時代的な雰囲気の中で本書は出版されている。
 この書物は、戦後日本の経済システムを「高度成長期経済システム」と名づけ、これを3つの側面から切り分けて、(1)規制を中心とする政府介入、(2)日本型企業システムと銀行中心のシステム、(3)各業界団体とそれに対応した各省庁の原局からなる産業利害の調整システム、と特徴付ける。そして、戦後の経済システムは、90年代以降、外生的条件の変化に適応できず転換を余儀なくされており、それが現在の苦境(デフレ経済の長期化、銀行の不良債権と財政赤字の累積)として現れている、と主張する。
 著者は、新しい経済システムは、外生的条件の変化に対応できるシステムであること、すなわち、(1)新技術・新産業を自らの創意工夫で生み出せる態勢が整い、キャッチアップの終了に対応できること、(2)フルセット型生産構造を比較生産費構造に即した特化型に再編成しアジア諸国の成長に対応できること、(3)政府の介在・介入を否定しグローバル市場化と市場の進化を取り込めること、と述べて、その方向に沿った改革でなければならないと主張する。このように本書は、「時代の書」という色彩を帯びた書物である。
 本書のもうひとつの特徴は、外生的条件の変化に即応して経済システムが内生的に転換した事例が過去にもあった、と指摘し、歴史の再認識を試みていることである。1900~20年代までの経済システムを「明治大正経済システム」として類型的に把握し、これがやはり当時の外生的条件の変化によって20年代以降、転換を余儀なくされ、戦後の高度成長期経済システムに移行したと主張している。
 現在、銀行の不良債権問題は一応の解決を見たが、行財政改革は途上にある。小泉改革の継承者とされる安部内閣が崩壊、官僚機構による産業調整のメカニズムも温存されたままである。経済システムの転換期にあることは間違いないが、それが著者の主張するような方向性に沿ったものであるのかどうか、答えは未だ出ていない。
 ともあれ、広いパースペクティブで日本の経済システムを歴史的な知見を踏まえながら論じた本書は、一読の価値がある。ぜひ、学生諸君に勧めたい。

日本の経済システム

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本館開架 332.106||Te 56 003001153
本館開架 教員推薦 332.106||Te 56 007001255

『歴史人口学の世界』  速水 融 著

藤栄 剛(環境総合研究センター)

 はじめまして。環境総合研究センターの藤栄剛と申します。研究分野は、農業・環境問題の経済分析です。自分の専門に関する図書を紹介するのが通常であると思いますが、専門分野に関する図書紹介は、農業経済論や農業政策論等の講義で行うことにして、ここでは自分の専門外ではありますが、皆さんと同じ大学生の頃に読んだ図書の中で、記憶に残っているものの一つを紹介しておこうと思います。
 さて、経済学を学んでおられる皆さんの中には、「歴史や文化に関心があるのに、なぜ統計学やミクロ経済学を勉強しなければいけないのかよくわからない」と感じている方もいらっしゃると思います。この本を読むと、歴史と統計学や経済学の意外な結びつきやデータ分析の面白さを感じ取ることができるでしょう。とはいえ、そんな小難しいことなど考えずに、「江戸時代の人はどんな暮らしを送っていたのだろう?」という素朴な疑問を持っている方には一読をお薦めします。
 本書は、「歴史人口学」という物珍しい分析アプローチをわかりやすく紹介するとともに、諏訪地方や濃尾地方に残されている宗門改帳と呼ばれる歴史資料を用いて、江戸時代の人々の暮らしや経済の様子、たとえば身売り、出稼ぎ、農村から都市への移住、嫁入り、離婚、飢饉などの様々なイベントが歴史人口学の視点から生き生きと描かれます。
 私が本書を読んで意外に感じたのは、江戸時代の男性の平均結婚年齢が意外に高かったこと(28歳程度)、農民が近隣農村と親戚関係を作るだけではなく、都市に次男や三男を出稼ぎとして送り出すことで都市にまで社会的ネットワークを広げ、凶作などの経済ショックに備えようとしていたことです(地域的な干魃などがあると、近隣農村の親戚どうしで助け合うことが困難になる)。こうした農民の行動は、現在でも南アジアやアフリカの農村で頻繁に観察される現象です。どの時代に生きる人々も、自分に与えられた条件の下で、できる限り満足のゆく行動を取ろうと努力している、ということが歴史資料からも示されているように思えました。
 皆さんの多くは、昔の人がどんな暮らしや農耕生活を送っていたのか、と過去に思いをめぐらせた経験があるでしょう。しかし、統計学やコンピューターを用いた計算によって、昔の人々の暮らしが明らかにされているとは想像がつかないのではないでしょうか。本書の一番の魅力はそうした少し突飛なアプローチ、これまで誰も思いつかなかった意外な方法から、歴史を明らかにしている点にあるのかもしれません。
 なお、本書を読むにあたって、高校で日本史を履修していなくとも全く問題ありません。関心さえあれば、多くの興味深い知見とマニアックな知識に遭遇し、楽しく読み通すことができるでしょう。

歴史人口学の世界

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本館開架 教員推薦 334.1||H 47 007001222

『グレースと公爵 L’Anglaise et le Duc』  エリック・ロメール監督

御崎 加代子(経済学科)

 原題は、『英国女性と公爵』です。先日NHKの衛星放送で放映されたので、見た人もいるかもしれません。グレース・エリオットという実在の女性の目を通して見た激動のフランス革命がテーマで、名匠エリック・ロメール監督の作品です。
 フランス革命をテーマにした映画は何本もありますが、民衆や革命家の立場から、この革命の歴史的意義を評価するものが多かったと思います。この映画の特色は、まず主人公が王党派であるという点です。(しかも彼女は英国人ですので、当事者であるフランス人とは、かなり違った革命観をもっています。)しかしこの映画は、決して王党派を賛美するものでもありません。政治的なイデオロギーを超えて、革命に直面した人間というものをリアルに描きだそうとしています。
 タイトルの「公爵」とは、ルイ16世の従兄弟でありながら、結局は革命側についたオルレアン公のことです。グレースという女性は、そのオルレアン公とかつて恋人関係にあり、それがきっかけでフランスに移住したのです。二人の恋愛関係は終わりを迎えますが、その後も強い友情の絆に結ばれています。この二人の関係を軸に、物語は展開していきます。王族に生まれながら革命に理想を託して、国王処刑にも賛成票を投じたオルレアン公と、外国人でありながら王家の人々をかばいつづけるグレース。政治的には対立関係にありながら、深い信頼で結ばれる二人の関係が物語の中心になっています。
 映画は、この女性の日常生活が淡々と語られてゆくという形式をとっています。彼女の周りの人々の態度、生活環境の変化などから、フランス革命の進行を、リアルに感じ取ることができるようになっています。自由と平等を信じた人々と革命の理想が、時間の経過とともに変質し、血と暴力、粛清に終始した恐怖政治の時代に突入してゆくプロセスを、まるで自分がその場にタイムスリップしたように、生々しく感じ取ることが出来る映画です。もともとロメール監督は、人々の何気ない日常生活に物語をみいだす手法で有名な人です。この映画も、議会の様子やバスチーユ陥落など、フランス革命で有名な場面はほとんど出てきません。しかし人々、とくに貴族階級の恐怖心、革命の理想が変質してゆく絶望感や空虚さを、痛々しいほど感じ取ることができます。また同じ階級、同じ政治理念を持った人々が、人間としては実に多様な顔をのぞかせ、多様な関係を結んでゆくところも印象的でした。
 またこの映画で話されている言葉は、歴史劇としてはめずらしく、非常にシンプルで美しいフランス語です。フランス語を勉強している人は、ぜひ聞き取りに挑戦してみてください。

グレースと公爵 L’Anglaise et le Duc

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本館視聴覚 教員推薦 087166607

『はじめてのC』  椋田 實 著

渡辺 凡夫(社会システム学科)

 今を遡ること約20年前、当時全国で10大学にしか設置されていなかった情報工学科に憧れ、合格したまではよかったが、入学後は苦労の連続であった。
 マシンにてパンチカードに穴を開けプログラムを作成する工程は環境として劣悪であった。
 実験・演習は解説書を読んで取組むのだが、教官陣は「さあ、やって」と言うだけでプログラミングのど素人である我々学生に文法の「いろは」を何一つ教えてくれなかった。いや、多分それが以前から続いていた「自分で調べて実践する」という大学教育スタイルだったのであろう。演習書は文法が掲載されていた訳ではなく、企業人が現場で用いるマニュアルそのものであり、高度な専門用語で埋め尽くされた内容を読解できずに脱落する(共通一次世代の)同輩が続出した。
 高校時代にマイコン部や電算クラブ所属だった連中は難なく設計していたが、教官陣は既存知識を有する彼らのみ対象としているかの様な講義形態をとり、希望が小さくなる印象を感じたものだ。
 今はよい時代になったものだ。その様な指導法はFD活動のアンケートで批判の対象となるし、多彩となった計算機言語の文法書は初級から上級編まで懇切丁寧にケアされている。今や文字通りパーソナルなコンピュータとしての「パソコン」は低価格になり、初期設定や簡易ソフトのインストール本まで販売され、有名女優やアイドルが個人ブログを簡単に掲載できる状況にある。
 運が良いのか悪いのか、我々学生達は旧型言語からUNIX上開発言語のC言語の移行期にいた。教官陣もCを知らないため独学でCを習得する必要があった。解説書は高価なUNIXマシンがあって意義のある「プログラミング言語C:カーニハン&リッチー(K&R)」ぐらいであった。そこには文字列処理中心の解説はあったが、Aho,Ullman &Hopcroftら著書のPascal記述した学術アルゴリズムではなかった。
 そこへ初級者にもわかる(今で言うなら猿にもと言うところか)衝撃的な書籍が発刊された。技術評論社の「はじめてのC」。カラー2色刷り、各文法構造毎に章立てされ、サンプルプログラムと図解が豊富な内容。少々高額であったがパソコンを購入し、ライン・エディタでこの書籍を頼りにプログラムをコーディング。コンパイルとリンク後、”Hello World!”と画面表示された時は感動であった。
 その書名のため少なからぬ誤解を招いたものの当該書籍はヒット商品となり、その後各出版社からの多くの計算機言語解説本は類似した構成を取る様になった(なお中にはナツメ社なる粗悪書籍もあった)。この本を元にいくつもプログラム設計をし、計算機自体の内部構造も理解するレベルまで達した。作成プログラムをデバッガにて逆アセンブルし、どの様なコードを吐出しているか調べたり、ダンプしたデータをトレースしたり。この過程で市販Cコンパイラの欠陥も発見することもあった。
 当時アナーキーな出版社であったが、この書籍には感謝をしている。その後「はじめてシリーズ」は多種言語を扱い、LispやPrologまで触手を伸ばした私は知識科学というイカガワシイ世界に迷い込んでしまった。今はJAVAが主流だが、学生時代の思い出が印象深くC言語には愛着を感じている。

はじめてのC(改訂第4版 ANSI C対応)

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 007.64||Mu 28 007001293

はじめてのC(改訂第3版 ANSI C対応)

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
教育研究用図書 007.64||MU 28 195003299

はじめての”C”(1985年)

所在 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館書庫 549.92||Mu 28 087035413
教育授業用参考図書 認知情報 007.64||MU 28 195004749