2018年度 本学教員が推薦する図書等を紹介します。(並びは推薦順)
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タイトル 著者 出版社 出版年 推薦者
渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇 渡辺一夫著 大江健三郎・清水徹編 岩波書店 1993 田中 琢真

①『渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇』 渡辺一夫著・大江健三郎・清水徹編

田中 琢真(データサイエンス学部)

本書は、編者(ノーベル文学賞作家と仏文学者)を含む知識人を教えた東大仏文科教授の評論集だ。
まずは気軽な読み物を勧めたい。著者の訳した物語『ガルガンチュワとパンタグリュエル』に関する愉快な考察や、王侯の遺骨やミイラをめぐる考証は、文藝と歴史の世界へ導いてくれる。どれも短くすぐ読めて、暇つぶしにもよい。
表題作「狂気について」などの深刻な評論は、最初は読まなくてもよい。何年、何十年放置してもかまわない。いずれ、立ち戻って読むべき時が来る。
表題作と「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」は敗戦と東西陣営の対立という状況を受けて書かれた。しかし、具体的な状況への言及はほとんどない。古典と歴史に照らして「いかにあるべきか」が語られる。それゆえ(逆説的に)、著者の直面する問題は現代の私たちにも切実な問題としてよみがえる。
寛容な人々が寛容さゆえに不寛容な人々を迫害し、不寛容な人々をより不寛容に走らせる――著者の念頭にあったのとは全く違う状況で、著者の危惧はいま現実となっている。寛容は強制されるべきか、私たちは正気に飽きて狂気を求めてはいないか――著者は問いかける。
扱う問題は深刻だが、著者の語り口はあくまで優しい。具体的な状況から一歩引いて考えることは、若い皆さんにはまだ難しいかもしれない。しかし、良書は読者の成熟を待ってくれる。現代社会が著者が見たのとは違う状況の中で同じ問題に直面しているように、将来皆さんはまた違う状況の中で同じ問題に直面するだろう。人生の節目ごとに本書を繙いてもらいたい。

所在 巻号 指定図書記号 請求記号 資料ID
本館開架 教員推薦 081||I 95||B188-2 093004827
教育文庫新書 081||I 1||188-2 193003986