年頭のご挨拶

 平成23(2011)年は21世紀の二つ目の10年decadeの始まりの年です。今からちょうど20年前の1991年3月に、バブル崩壊不況が始まり、不況自体は93年10月に「底入れ」したのですが、その後も、際立った回復感を味わうことのないまま、20世紀は幕を閉じました。1990年代は20世紀「最後の10年」、すなわちthe last decadeだったのですが、lastをlostで置き換えますと、the lost decadeすなわち「失われた10年」となります。

 さて、その後、21世紀を迎え、あっという間に10年もの歳月を経ました。この10年間、2001年3月24日のブッシュ米大統領による京都議定書離脱宣言に象徴される、米国のユニラテラリズム(単独行動主義)の顕在化、01年9月11日の9.11同時多発テロ、テロの犯罪組織タリバーンへの報復措置として、米英両軍を中心とする有志連合軍によるアフガニスタン侵攻、03年3月には、大量破壊兵器の保有の疑いを根拠とするイラク戦争開戦、2008年に勃発した国際金融危機と世界同時不況の襲来といった、数々の「危機」に見舞われました。
 とりわけ日本にとって、21世紀最初の10年は、下降の一途を辿った10年でした。この間、日本経済はデフレ基調で推移し、名目国内総生産(GDP)はまったく成長しないまま、また国際政治の場面でも、日本の存在感がはなはだしく希薄化いたしました。
 実際、一人当たりGDP競争でも、93年には世界第3位だったわが国は、08年には19位にまで転落し、アジア・ナンバーワンの地位をシンガポールに奪われました。かくして、マスコミは「失われた20年」と喧伝するようになったのです。

 学術・科学研究の場面でも、中国と韓国の目覚ましい躍進ぶりを傍目に見やりながら、日本の存在感は希薄化する一方でありました。バブル経済期に、汗水垂らして働くことが蔑まれ、努力、勤勉、真面目などといった日本古来の徳目を失ってしまったことが、学術・科学研究の分野での日本の地位低下の最大の理由なのです。
 何とか「失われた30年」になることを避けるべく、政府は「新成長戦略」という金看板を掲げて、来年度予算編成に取り組んだのですが、何といっても法人・個人の所得税の減収ぶりは目を覆うばかりの有り様であり、税収を越える国債発行を余儀なくされました。
 過去7年間、毎年1%の割で減額されてきた国立大学法人の運営費交付金が、来年度分は0.5%減に踏みとどまったのは、新成長戦略の柱の一つに学術・科学研究の振興が据えられたお陰だったといえましょう。国立大学協会が運営費交付金の減額に対し大いなる懸念を表明していた折、私自身は「良くて0%、悪くて1%減」と根拠なき楽観論をとなえて参ったのですが、結果としての0.5%減は、私の予測幅のど真ん中に落ちたということになります。

 昨年4月に本学学長を拝命いたしました私こと、「滋賀大学を魅力と活力に満ち溢れた大学」にするべく、新執行部の皆さま方と力を合わせて、昨年中に改革の道筋を付けるべく努めて参りました。改革の要点としては、次の二つが挙げられます。
 一つは、本学の意思決定機構を「透明化」することであります。来年度からは、役員懇談会と経営戦略会議を廃止し、代わって企画調整会議を設けることを教育研究評議会に提案し了承を得ました。さらに、理事でない副学長を両学部から一名ずつ指名し、教育研究評議会の承認を得ました。
 もう一つは、教職員の人事スキームの刷新であります。これに関しましては、目下、将来構想検討委員会の緊急課題ワーキング・グループにおいて、鋭意、検討中であります。大学の使命である教育・研究の質を向上させることを狙いに、所与の予算制約のもとでの最適な人事スキームの在り方を見定め、来年度から、それを実施に移す所存でございます。

 滋賀大学を魅力と活力に満ち溢れた大学に作り替え、学生諸君には滋賀大学に入学して良かったと、そして教職員諸氏には滋賀大学に勤務して良かったと思ってもらえる大学にするには、教職員の皆様方の御尽力と御協力が、そして同窓会の皆様方の御支援が欠かせません。
 この場を借りまして、皆さま方に、旧年中に賜りました御尽力と御協力に心よりの感謝を申し上げるとともに、年明けに当たりまして、本年は、旧年に倍加する御尽力と御協力を、心よりお願い申し上げる次第であります。

平成23年1月4日
滋賀大学学長
佐和 隆光