滋賀大学長 佐和隆光

 皆さま、明けましておめでとうございます。昨年に相変わりませず、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。今年、2014年は、1914年に第一次世界大戦が開戦して以来、ちょうど100年目、1964年に東京オリンピックが開催されて以来、ちょうど50年目、そして国立大学が法人化されて以来、ちょうど10年目に当たります。

 ことほど左様に、今年、2014年は、「変化」というより、「激変」の予兆される年であります。どんな変化が起きるのか、まったくもって「見通しの利かない」2014年だと言わざるを得ません。国際政治で注目すべきは、アメリカの圧倒的な優位が一段と低下するなか、アジアでは中国が勢力を一段と増すものと予想されます。欧州は債務危機からの立ち直りを目指し、中東やアフリカでは紛争が止まないまま年を越しました。

 安倍内閣が発足したのが一昨年の12月26日。その一年後の昨年12月26日、安倍首相は、ご本人にとっては念願の靖国神社参拝を成し遂げ、日中両国はもとより、アメリカ、ロシア、欧州連合、東南アジア諸国からも批判の渦が巻き起こり、あたかも日本包囲網が結成されたまま、年を越したかのようです。

 安倍首相は、12月25日に沖縄県の仲井真知事と面談し、沖縄県名護市の辺野古湾の埋め立てにつき仲井真知事の同意を取り付け、その翌日の靖国参拝がアメリカを「失望」させることはあるまいとの確信の下に、靖国参拝の好機到来と受け止め、参拝に踏み切ったのだ、と私は推察いたします。その思惑が外れたことは申すまでもありません。とはいえ、日中関係の緊迫化をさらに推し進めようとする、安倍首相の靖国参拝の狙いは、間違いなく達成されたと見て差し支えありません。

 まもなく始まる通常国会には、現行憲法の下での集団的自衛権の行使容認、武器輸出三原則の撤廃に始まり、憲法改正が断行されかねません。憲法改正を推し進めるに当たり、国民の賛同を得るための必要条件の一つが、仮想敵国である中国との関係の更なる緊迫化だったのです。

 天皇陛下は、80歳の誕生日を迎えられた昨年12月23日、「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています」とのお言葉を下さいました。高名な哲学者梅原猛さんは、1月5日の京都新聞に「いつか来た道」と題する論考を寄稿され、安倍内閣の戦前への復古を厳しく批判しておられます。かの中曽根康弘元首相までが「集団的自衛権の行使容認がいまなぜ必要なのか」と、安倍政権の右傾化路線に対し、警鐘を打ち鳴らしています。

 戦後69年目に当たる2014年が、わが国にとって、戦後最大と言っても差し支えない「分岐点」となることは、ほぼ確実と言っていいのではないでしょうか。皆さま方のそれぞれが、おのれの思想信条に照らして、2014年に予想される「激変」に対してどう立ち向かうのかを、ご判断されることを願って、私の新年のご挨拶とさせていただきます。

2014年1月6日
滋賀大学長
佐和隆光