本館所蔵の貴重書J.B.セー『経済学概論』と、F.A.ウォーカー『経済学』を展示していますので、ぜひご覧下さい。
貴重書展示コーナーは図書館1Fカウンター前に設けています。

展示コーナー

御崎先生による解説

J.B.セー『経済学概論』

F.A.ウォーカー『経済学』第2版、第3版

本図書館所蔵の経済学の古典(8)

19世紀アメリカにおける経済学の普及―J.B.セー『経済学概論』とF.A.ウォーカー『経済学』

 18世紀にアダム・スミスの『国富論』の登場によって誕生したとされる経済学が、各国で本格的に教えられ、研究されるようになるのは19世紀になってからである。
 19世紀初めのアメリカでは、神学中心の大学のカリキュラムの中で、道徳哲学の一分野として経済学が教えられた。その際に好まれた著書は、アダム・スミスではなく、フランスの経済学者J.B.セーの『経済学概論』(初版1803年)であった。セーの著作は、スミスの『国富論』をよりわかりやすく説明した教科書として、広く受け入れられた。セーがアメリカで人気を博したのは、スミスよりも企業者の役割を重視していた点がアメリカの現状に合致し、サービス労働を不生産的労働としたスミスの主張を批判していた点が、大学の教壇にたつ牧師たちに受け入れられやすかったためと考えられている。
 一方、ウォーカー(F.A.Walker)は、1885年に創設されたアメリカ経済学会(The American Economic Association:AEA)の初代会長として活躍した経済学者である。
 経済学の教育者としても、イエール大学やジョン・ホプキンズ大学などで講義し、1881年から97年までマサチューセッツ工科大学(MIT)の学長をつとめ、カリキュラム改革などに取り組んだ。ちなみにウォーカーの父(Amasa Walker)は、日本の明治時代の経済学に影響を与えた人物として知られる。
 本図書館は、セーの『経済学概論』のアメリカ版英訳第5版(1832年)とウォーカー『経済学』第2版(1887年)および第3版(1888年)を所蔵している。

Say, Jean-Baptiste, A Treatise on Political Economy, or the Production, Distribution and Consumption of Wealth, translated from the 4th ed. of the French, by C.R. Prinsep; with notes by the translator, 5th American Edition, containing a translation of the introduction, and additional note, by Clement C. Biddle, Grigg & Elliot : Philadelfia, 1832.
Walker, Francis. A., Political Economy, 2nd ed., rev. and enlarged, Henry Holt: New York, 1887.
Walker, Francis. A., Political Economy, 3rd ed., rev. and enlarged, Henry Holt: New York, 1888.

(解説:経済学部教授 御崎加代子)